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2015-03-04(Wed)

「エリジウム」

エリジウム

なぜかマット・デイモンだと思わなかったマット様主演作。
マッチョの若者感がありすぎたからかな。40過ぎにはあんまり見えなかった。ご立派。
ジョディ・フォスターも出演しているよ!


取り残された汚れた地球と、その上にぽっかりと浮かぶ理想郷「エリジウム」。
宇宙にぽっかりと浮かんだそこは、緑が豊かにあふれ、あらゆる病とは無縁の場所。
一方、荒れ果ててしまった地球では、貧しい暮らしを強いられた人々が
エリジウムに憧れながら生きていた……みたいなSF。

ものすごくスタンダードなSFアクション映画だなあって感心してしまった。
物語は王道中の王道。
選ばれた人々しか行けない素敵な場所があって、
取り残された人々はなんとかしてそこへ潜り込みたいと願っていて
主人公の幼馴染の女性は、子供の病気を治したい(白血病)
主人公は上司の横暴にくるしみ、挙句の果てに「あと5日の命」になり、
エリジウムへ行く技術を持ったアンダーグラウンドなヤツらがいて、
エリジウムのお偉いさんはクーデターを考えていて、
宇宙へ行くためにちょっと無茶をして、
そしたらものすごい強敵が出てきて、
戦いながらなんとか目的地へ辿り着き、
そんで最後、これで「全員が救えるよ!」ってところで
それやったら主人公死んでしまいますよ!って事情がわかって……と。

こうして並べてみると、王道てんこ盛りだなあ。
でも、アクションはなかなか良い感じ。
SFの表現もいい感じで、警備用のロボットなんかもかなり好感触。
主人公が半サイボーグ化して強くなる展開も良かったね。
あの世紀末的なサイボーグ手術も良かったね。
幼馴染とのすれちがい、愛情を寄せ合って互いを思い合うラストも良い。
それで、最後は大団円。スッキリ。素晴らしい。
わかりやすくて、見本のようなSFアクション大作。

肩も凝らずにすいすいーっと見られました。
ただちょっぴりグロ表現あるので注意。
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2015-03-01(Sun)

「それでも夜は明ける」

「それでも夜は明ける」

みておかなければならないようなが気がしたので。

実話がもとになっているという
とある黒人(自由が保障されている)が拉致され、奴隷として売られた12年間の話。

非常に恐ろしい話でした。

こんなにも露骨な差別があったのを映像にして見せつけられたっていうのと、
これ、現代にもあるんだなっていうのと、
ホント簡単に奴隷なんて言葉を使ったらいけないな……っていう。

主人公のソロモンは、妻と二人の子供と一緒に幸せに暮らしていたのに、
いい仕事があるよ(バイオリンが弾けるので、演奏の仕事)と言われて
行って、飲んで、酔って、目が覚めたらほぼ牢獄に入れられていた。

自分の名を名乗る事を許されず、主張も蜂起もできないまま、
白人の「御主人様」に買われて暮らす日々。
ただ、ソロモンは賢く、プライドのある男だったので、
横柄な態度の白人と幾度となく衝突する。

ソロモンの悲しい十二年間を追っている間に、
理不尽な暴力を見なければならない。

胸にずーんとくる映画は結構みているけれど、
こんなに悲しくなるのは珍しいと思った。

最終的にはブラッド・ピットに救ってもらうんだけど
(なんか彼だけは普通にブラッド・ピット過ぎて戸惑った)
でも「本当に良かったなー!」とはならない。
一緒に虐げられていた「仲間」を、置いて、振り切っていかなければならなかったのでね。


奴隷としてこき使われている間で一番恐ろしかった描写は、
ソロモンが首をくくられたシーン。
本当にギリギリのところで命が繋がるんだけれども、
つま先立ちで必死になって耐えていなければ死んでしまうような状況で放置される。
「御主人様」の判断がなければ余計な真似はしてはいけない、
という決まりがあるんだろうけれども
それに加えて「処刑が当たり前」なんだろうと思わせる
あの周囲のうららかな描写が本当に病的。
こどもたちが遊び、何人も行き過ぎる「仲間」がいて、
遠巻きに見る人間がいくらでもいるのに、
ソロモンに救いの手は伸びて来ない。
昼から、夕方まで。
ご主人様が間に合わなければ、ソロモンの気力が尽きれば命はそこまで。

あとね、女性の受ける理不尽が本当に辛かった。
本当に、こんなに悲しい気分になる映画、なかった。ビックリしちゃう。

創作物で簡単に「性奴隷」とか出されると気分が悪かったけれど
これからは多分もっと気分が悪いと思うw

創作物に怒るのはすごくしょうもないんだけれど、見せつけられてしまったのだから仕方ない。

2015-02-26(Thu)

「アメリカン・ビューティー」

昔映画を毎月二本ずつ観てた時期があって、
映画の日は1000円だーって、新宿の映画館に通っていた。
半年くらいでやめてしまったんだけれども、その頃公開されて
ちゃんと映画館で観た作品の一つが「アメリカン・ビューティー」でした。

「わけがわからん」「なんでアカデミー賞をとれたのか」みたいな感想が多くて
私もまだあの時はよくわからなかったというか。
幸せだと信じていたものが壊れて、諦めの先に幸せがあったのだ、
みたいな感想は持ったと思うんだけど、
確かに主人公のレスターはちょっとキモイんだよね。
娘の同級生に一目ぼれして、そこをきっかけにブチ切れていく。

あれからもう15年ほど経ったので、きっと印象が違うだろうと信じて見てみると
先日みたばかりの「ノー・カントリー」と通じるものがあるな、と思いました。
自分達の信じていた幸せ、理想の形、追い続けていれば必ず勝者になれる、
みたいな幻想が破れて、その先にかつて自分が愛していたものを見つける。
一体なにが本当の幸せなのか、レスターは見つけて、なんというか
超越した人になったんだろうな。あのモノローグの感じからすると。
物質やステータスに縛られるなんてくだらないよ、
「こうあらねばならない」なんてただの思い込みだよ、と語りかけてくる感じ。

息苦しい職場、夫婦関係の破たん、反抗期の娘、幸せな家庭の過剰演出で
追い詰められたレスターは、ある日娘の同級生であるアンジェラに一目ぼれしてしまう。

あらすじは割愛するとして、

短期間で「隣人がやってきて」「父が恋に落ちて」「妻は不倫」「娘も恋をする」と
ものすごく色んなことが起きる。

妻のキャロリンが庭でせっせと育てている赤い薔薇。
あの真っ赤なバラが「アメリカン・ビューティ」。
幸せで優雅な暮らしをしていると周囲にアピールするための薔薇は、
妄想の世界でアンジェラを美しく彩る。

対して、レスター一家を隣から観察し続ける隣家のリッキー。
彼の世界は白い。純粋で、世界の向こう側をみているかのような達観した青年。

アンジェラへの一目ぼれと、パーティで出会ったリッキーの軽快さに
レスターの中でなにかが壊れてしまう。
それまでしていた我慢をやめて、思うままに生きようと決める。

少し筋肉をつけたら素敵だと思うというアンジェラの言葉を信じて鍛え始め
会社は辞める。しかも脅して退職金を巻きあげる。
欲しかった真っ赤な車を買って、妻には見切りをつける。

そして運命の日。

妻のキャロリンは不倫がバレて、相手と別れる羽目になる。
レスターからの冷静な言葉から少しおかしくなって、銃をバッグに潜ませて家へと向かう。
彼女は情けなく自分のいうことを聞かない夫を疎んでいたけれど、
不利な条件で離婚をしたくなかった。
自分を蔑んだような目でみるようになり、それまで築いてきたあらゆる彼女の美学を打ち砕いたから。
決意を固めるために、自己啓発系のスローガンを延々聞きながら家へと向かう。

お隣の大佐宅でも、事件が起きる。
自分の大切なコレクションに触れたと激怒し、息子を殴る。
ついでにリッキーの撮っていたビデオを見て、レスターに買われていると勘違いしてしまう。
彼は最初から「ゲイは憎い」とずっと公言していて、でもそれは実は
彼こそがゲイだったから……なんだよなあ。と思います。
それまでは、「最終的に従順」だった息子はキレて、しかも「男に買われてる」と言い(嘘だけど)
それで多分、プチっと切れちゃったんだろう。

息子に出て行かれただけではなく、「息子までゲイだった」、
しかも目の前でカミングアウトされた……というトリプルショックから、
それで多分、レスターのもとへ向かってしまったのだと思う。
レスターのビデオを見て、ときめいたんじゃないかなあ。
優しく迎え入れてくれた彼に、ついついキッス。
その後の対応がまた優しい。突き放すのではなく、そういうのダメよ俺違うしって、諭す。

リッキーは家出を決意し、ジェーンと共に出て行こうとする。
リッキーが好きじゃないアンジェラは止めるけれど、
ジェーンは「アンジェラよりもリッキーを取る」と宣言。
自分よりも見劣りする誰かを横に置いておきたいだけだろう、なんて言われて
アンジェラはすっかりハートブレイクしちゃうのです。

誰も彼も「こうありたい」「自分像」を追いかけすぎていて、ヘトヘトだったのだなあと
今回は観て思いました。

レスターは「妻の期待に応えて」「嫌な職場でもちゃんと働いて」
キャロリンは「出来る女」「素敵な家庭」「親としてもちゃんとしている」
大佐は「男らしくて」「軍人らしくて」「強い」
アンジェラは「男にモテモテ」「経験豊富」「ワンランク上のオンナ」

まずはレスターが虚像を追うのをやめて、
彼の運命の日に、他の面々も自分の理想が破れたのを知る。
なにもかも嘘、まっかな嘘なんだなあって。イメージカラー、赤だよね
(海外でもまっかな嘘っていうかどうかはしらんけど)

キャロリンは見下していた夫に「弱みを握られた」と思い込む。
実際には、レスターはそんな風に思っていないけれど。
アンジェラは被っていた仮面を落として、レスターに「経験がない」と告白する。
男なんて盛るばかりだと思っていたのかな、その後の紳士的な対応に、思わず涙してしまう。

そして、この日をレスターの最後の一日に変えた大佐は、
きっと「これまで隠し続けてきた自分の弱さを知られてしまった」から
あんなことをしたんだろうなあ。

自分を認めるよりも、隠し続けることを選んだ。そんな風に思いました。

そして変わり果てたレスターを見つけて、思わず彼の服を抱きしめるキャロリンですよ。
こどもたちのショックは当然なんだけれど、キャロリンの様子にはホント、
男女の愛の不思議を観たような気分です。
憎たらしいけれど、やっぱり、一生をともにしようと誓った相手なんだもんね……。みたいな。
あんな最期を迎えるほど、酷い人ではなかった。そういう思いが残っていたわけで、
なんというか、人間の妙がこれほどまでぎっしり詰め込まれている映画もないかなって。

今ならば、アカデミー賞とって当然ですなって言えます。
いい映画だった。

そしてどうでもいいけど、リッキーの顔、ものすごく猛禽類でした。

2015-02-21(Sat)

「ノーカントリー」

「ノー・カントリー」

コーエン兄弟監督作品は、「ファーゴ」に続いて2つ目。
いやなんかもう、ズーンとなる映画っすね。

物語としては、狩りをしていた男モスが
死屍累々の凄惨な現場を発見。
おそらくは麻薬の取引で揉めた……と思われる場所から
大金を発見してお持ち帰り。

ただ、一人生き残った男が水を欲しがっていたのを思い出し
深夜届けようとしてしまい、そこから追手がかかって逃げる。

という流れ。
追っ手のひとりがものすごく異常な殺人者で、シガーって名前なんですが
モスとシガーの攻防戦がみどころ、みたいな感じで観ちゃうわけです。

ところが、この映画の主題はそうじゃなくて、
本当にタイトル通り。ノーカントリー「for old man」ってことなのね……。

たとえば黒人が明らかに差別されていた時代、
医療が今ほど発達していなくて、病気やケガでひとが簡単に命を落としていた時代、
女性が男性に従うべきだと考えられていた時代、
戦争に明け暮れていた時代、などなど

残酷で非情で、苦しかった過去はいくらでもあると思うんだけど
それが終わって、たくさんの自由を得て、長く生きられるようになって今、
最早うかうかぬくぬくと生きていられる場所はなくなった、みたいな……。

抜かりがなく、戦争に行っていた過去もあり、出来る男であるモスと
自分のルールを徹底し、それに外れた者は容赦なくすべて消していく殺人鬼であるシガー。
追われる夫を案じ、保安官を頼るモスの妻。
そして重い腰をあげた保安官。

そう、保安官。主役は保安官だった。
なんだかすごくデキそうな感じなんだけども、
モスと妻を救ってくれそうな気がするんだけれども
職務とか、正義感とか、そういったものがすべて失われて
今のこの時代、この国を諦めちゃってる。枯れきってる。

最後、なんだよもう!って思ってしまいそうな終わり方なんだけどね。
でも、これが本当なんだと思う。保安官だから、警察だからって命かけてられないよ。

すごい映画だなって思いながら寝たんだけど、
その後、最初にシガーを一度は逮捕した若い保安官、
あいつすげえなって思いました。おわり。

2015-02-14(Sat)

「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

ジャック・ニコルソンが見たくなったので!

ド田舎のさびれたガソリンスタンドに偶然訪れた主人公フランクは
本当は別な土地に行くつもりだったのに、
整備士として働いて欲しいと請われてそこに留まることに決める。
それは、店主の妻が美しく魅力的だったから……。

というところから始まって、フランクと奥さんは割とすぐに不倫状態に。
邪魔な夫を殺してしまおう→殴ったけれど失敗→なんだかんだ揉めたけど
やっぱり一緒になりたい→邪魔な夫を殺してしまおう→今度は成功!
でも自分も大怪我しちゃって……

みたいなすごくゲスい話でした。
サスペンス要素があるというか、これはなにかあるぞ~というオーラがむんむんしているので
郵便配達人がやって来て何かが起きるのだ!
とハラハラしながら見ておりましたが、郵便配達人は出て来ない。っていう。
タイトルは内容と全然関係なかったそうです。ビックリだよね!


主人公のフランクと、恋に落ちる人妻であるところのコーラは
すごく駄目なんです。
お互い我慢が利かないし、邪魔だからという理由で夫を殺す。
本当はね、別れるとか、駆け落ちだって出来ると思うんだけど。
とても短絡的で、感情的で、打算的で、後先考えてなくてね……。

自堕落な生き方をするっていうのは、こういう事なのだなあっていう映画になっていました。
原作だとちょっと最後、違うみたいなんですが
っていうか映画化4回もされてるって知ってまたビックリ。

私が観た1981年版は、主演ジャック・ニコルソン。
この頃のニコルソンは本当にかっこいい。滲み出る男の色気というか、悪の香りがたまらない。

最後の最後、二人は心を入れ替えてこれから生きていく……っていうことなのかなあと
想ったら!そううまくいくかー馬鹿めー! みたいなオチでまたまたビックリです。

人を犠牲にした人間には、それなりの報いがあるよってことなのかな。
まとめかたがあんまり上手だとは思いませんでした。
奥さん役のジェシカ・ラングはとても美しかったけど。
なんというか、無常感漂う一本でした。ジャック成分は補充できて良かった。