アメリカンハッスルに出ていたのと同一人物とは思えない
素敵なクリスチャン・ベイルを見られます。はい。
主人公のラッセルは可哀想なやつなんです。
田舎町でほそぼそと真面目に働いているんですが、急に不幸が連続して起きるのです。
恋人とささやかに慎ましやかに暮らしていたんですが、
ある夜交通事故を起こして収監。
刑期を務めている間に、父親が死に、恋人はおっさん保安官に寝取られ、
戦争から帰ってきた弟もなんだか妙なことをしているようで……。
改めてまた慎ましやかな暮らしを再開するも、弟が地元では有名な荒くれ者に殺されてしまう
という無情な展開。
静かな映画なんです。主人公も静かな男です。
この話は、ずっと慎ましやかに暮らしをしていたある男の、
秘められていた激情についての物語だと思ったんですが、
その激情ですらも静かでね。アーティスティックだと思いました。
抑圧されていた暮らしからの解放、なんだと思います。
それまでにたくさん抱えてきた諦めが募った結果、
自分でやるしかない。やると決めたからには、最後までやる、みたいな。
弟が出来なかったことを、兄が果たしたという面もある。
ずっと自分を縛っていたすべての鎖を解いて、ラッセルは本当の人生を歩みだしたのかなあと。
彼を待っているのは、厳しいことこの上ない現実だと思うんですが、
でも、清々しい気分だったんじゃないかなって。
最後、ラッセルは弟の仇を討つんですが、その場面もとても静かでね。
そこに美学というか、彼の魂のあり方みたいなものが滲み出ているようで、
味わい深い映画だと思いました。
ものすごく面白いかと言われると、そうでもないんだけど。
こういう静かな映画って、いいものだと思います。
あと、あいかわらずウディ・ハレルソンがやべえなって感じました。
すごい存在感だよね!
ド派手なCG、わかりやすい物語、とは対極の、
一人の人間の修羅場を美しく描いた一本だと思いました。なかなか良かった。