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2015-08-19(Wed)

「ゴースト・ワールド」

ゴースト・ワールド

公式サイトが古い。よく残っていたもんだ……と妙な感心をしつつ。
2001年の作品。ソーラ・バーチ主演のものです。
もともとコミックが原作なんすね。アメリカらしからぬ、陽気さのない作品でした。

大きな感想からいうと、ものっすごくいい作品でした。
主人公の女の子イーニドは、高校を卒業したものの進路は決まらず、
それどころか美術の補習を受けなければ証書をもらえないという体たらく。
真面目に働くこと、身分のない今をまっすぐに見つめず、受け止めず、
この時期特有のイライラと妙なプライドの高さ、残酷さ、そして少しばかりの誠実さを
これでもか!というほど濃密に描き出している作品でした。

親友のレベッカと一緒にだらだら暮らし、実家を出たいから二人で暮らそうと考えるものの、
物件を見るとか、家賃のために働くこともできず、
からかうだけのために新聞に公告を出してダメ男を探し出し、
彼に絡んで執着するけれど、その人間性に惹かれてしまい、
彼に幸せをと思うけれど、いざ誰かがそばにやってきたら怒りを抱き、と。

イーニドはめちゃくちゃなんです。
思春期の女子特有のあのあやふやな感情、湧きあがる苛立ちが
容赦なく描かれていてとにかくすごい。

結局、イーニドには自分の確固たる居場所がなくて、
彼女の好きなものだけを集めた素敵な場所が欲しいのに、
そういうわけにはいかないと頭では理解していてたまには努力するんだけど、
ただただ真面目に努力するのはやたらと悔しくて、
ついつい衝動に任せてめちゃくちゃにしてしまうけれど、
それはただ一時の憂さ晴らしにしかならず、
すべての結果が良くない形でいっぺんに最後、返って来てしまう。

あとほんの少しだけ、世界が彼女に優しかったらなあと思ってしまう。
イーニドは本当に駄目な女の子なんだけどね。
でも、とても可愛い。歳をとった自分には、とても可愛い子だと思いました。
多分シーモアもそう思ったんだろうなあ。

青春の時期にひとかけらも鬱屈などしていない、
自分は真面目にやってきた!好き放題やった!という方には
あんまり響かないかもしれない。

主演のソーラ・バーチの肌の白さと、彼女のきている真っ赤な服のコントラストが
みていてとてもハラハラさせられるのも良かった。
あの赤の鋭さは、意図して選んだものなんでしょうね。
年だけは「大人」扱いされるところまで来たけれど、
彼女はある意味で既に「女」なんだけど、中身は頼りない少女そのもので、
そう思うと、あの最後のシーンはとても悲しくてね……。

あのバスは新天地へ行く物なのか、それとも、この世ではない場所に誘うものなのか。
しみじみ考えてしまった。すごくいい映画でした。みて良かった。
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