アカデミー賞とってて、なんだかすごそうだなということだけは知っていた、音楽家の魂のぶつかり合いムービー。
2014年、アメリカ作品。
主人公のアンドリューはドラム奏者を目指して名門、シェイファー音楽学院へ進学。
すこしばかり不器用で孤独な彼がレッスンをしていると、名指導者であるフィッチャーがやってきてアンドリューに声をかける。
そこから始まる、アンドリューとフィッチャーのぶつかり合いです。それがこの映画のすべて。
だけどそのぶつかり合いがとにかく苛烈。激しくて苦しくて、たまらん映画でした。
フィッチャーのような指導者は日本にもよくいるというか、日本に多いタイプなんじゃないかなと思います。本物かどうかはおいておいて、ああいうちくちくと刺すような指導者は多いのではないかと。だからたとえば、体育会系の部活で苦しんだことがある人には少し苦しい映画かもしれない。
フィッチャーのやり方は、悔しさや負けん気を刺激するもので、それももう、ほんとに半端なくとがったむき身のナイフのようなするどさなんです。
椅子を投げられ、大勢の前でなじられ、正解を言っても、逃げても、正直にわからないと答えてもとにかく全コースが罵倒の嵐。そのかわり、ちゃんとやれた時には受け入れられる。
麻薬のようなやり方で奏者を操り、焚き付け、ついてこられたものだけを選ぶ。そんなやり方をする指導者に、すべてを捨てる覚悟でくらいついていくけれど……。
みたいな。
最後は本当に胸がぎゅーっと、絞られるような苦しさがありました。
事故にあっても舞台に立とうとしたアンドリュー。
結果お互いに学院から追放されて、再び出会って、これ以上ないくらいの意地悪なステージへ。
だけどそれでもおれなかったアンドリューと、それに満足したフレッチャー。
二人はとうとう、最高の舞台へ。
このやり方は大勢に拒否されるだろうし、今の日本だったらダメ、絶対なんだと思います。
だから拒否反応が出るのは当然。だけどこの激しすぎる指導だけが生み出せるものもたぶん、確実にあると思うんだよなあ。
憎まれる覚悟と、絶対に満足させてやるんだという強い思い。
ものすごく研ぎ澄まされた映画でした。
見ていて苦しくなるけれど、最後は脱力しちゃうんですけど。
それでも見てよかったと思える一本でした。すごいパワーだった。
PR