ちょっと長めの2時間半で、寝かせておいた一本。
1999年、スタンリー・キューブリック監督の最後の作品。
トム・クルーズとニコール・キッドマンがまだリアル夫婦だったころのもの。
あらすじとか内容については全然知らないままみたんですが、ズシーンと重たい映画でした。
序盤の物語の進み方のゆっくりさもあって、雰囲気の重さは別格じゃないかな。
ニューヨークで医師をしているビルと、その妻アリス(美術館勤務だったが潰れて今は求職中)。
7歳の娘のいる、結婚9年目の2人は互いに愛情を持ちつつも倦怠期に突入中。
ってな感じなんです。パーティに出かけて女の子に声をかけられたり、知らんおっさんにダンスに誘われたりすることにほのかにときめきつつも、互いを裏切るのはダメ。
誠実でいよう、一途でいようと思ってなのか、マリファナを使って生活に刺激を与えてみたりしている二人なんですが、ほんの些細な妻の告白がきっかけでぐらっと大きく揺らいでしまう。
話の内容としては、これだけ、なのだと思います。
妻の妄想の告白にグラグラ揺れて、夫であるビルは町をさまよい、娼婦に声をかけられて引っかかり、とうとう内緒の仮面乱交パーティに行き着いてしまう。
夜中に知らされた一人の患者の死から、現実と妄想がまじりあって崩れていくような、そんな感覚に包まれていく。
ビルはふらふらとさまよい、妻を裏切りそうになり、ぎりぎりで救われつつ、怪しげな連中に絡まれ、悲劇にもあうけれど、最後は平和な日常に戻るんだよね。結果としてはそういう話なんだけども。
人生っていろいろとうまくいかないことが多いけれど、その原因は深くてどうしようもなかったり、浅すぎて逆にどうしようもなかったり、つまらないことにいつまでもこだわってモヤモヤし続けてしまったり、そういう繰り返しだと思うんですけど、そういうことなのかなーって思いました。
この映画のテーマはなんなのかなっていうのを考え出すと、なんだか深いような、なんでもなかったような。最後はあんな締め方だし、ビルはフラフラしながらもなんだかんだでギリ踏みとどまっているし……。って考えちゃうんだけど、現実って案外シンプルなもんですよね。本当はね。正直に、素直に、本能に従うべき時もありますよね、みたいな。
そういう人生そのものを一本のえいがにしちゃったよ、的な感じなのかなと思いました。
全編、映像から漂ってくる緊張感が半端ないので無駄にハラハラしちゃうんだけど、それがなんというか、つまんないことで悩んで一人で悶々といているときの感覚に似ているというか。
だからシンプルに、物語だけをじっと追っていくとなんにも響かない可能性があるんじゃないかしら、なんて思いました。
こういうのを見てどう解釈するんだって悩んでいるひねくれ者の観客を、監督は笑っているんじゃないかって思ってしまったり。
そんな気分になる映画でした。不思議。
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