イギリス制作。舞台はブラジル。タイトルから受ける印象とはだいぶ違うかな。
とりあえず「!」はいらないのでは。
原題はただの「Trash」でして、いわゆるゴミ、クズ、くだらないものを指す言葉です。
主人公は14歳の少年3人組。
ビデオに撮られた彼らのメッセージが再生され、これを見ている人がいるなら、僕はもう死んでいるだろう……なんて物騒なセリフが少年の口から飛び出してくる。
一方で、一人の追われている青年の登場。彼は警察に追われ、追い詰められて、自身の財布をゴミ収集車に向けて投げ込む。
彼は拷問の末死に至り、ゴミ捨て場では大勢がなにかいいものがないか漁っている真っ最中。
これが多分、彼らの日常なんだろうというのがすぐにわかる。
ゴミの山はトラックの積んできた廃棄物で埋まっており、老若男女、大勢が山を登ってはお宝探しにいそしんでいる。
冒頭のビデオに出てきた少年、ラファエロもその一人。
ともだちのガルドと一緒にゴミ山を漁り、青年の投げ入れた財布を見つける。
中身を確認して、現金をわけあって。あとはもう捨ててしまえば?と言われるけれど、面白そうだからと手放さない。
そしてやってきた警察官たち。彼らが捜しているものが、自分の拾った財布だと気が付くラファエロ。
警察は信用できない。ましてや、見つけた者に謝礼を出すとなれば、相当に大事なもの。
二人は財布を隠そうと決めるけれど、景気よく鶏肉を買ってきたガルドのせいで目をつけられてしまう。
なんとか隠し通さなければと、ゴミの城の奥の奥に暮らすラットのもとへ二人は向かい、そして財布に隠された秘密を探り当てていく……
という話なんですが。
この少年たちの置かれた状況に、まずは圧倒されると思います。
彼らは痩せていて、汚れていて、だけど生きていくための知恵はしっかり持っていて。
それでいて、ただの少年で無力なんだけど、財布に隠されていた青年の無念を感じ取って、情報を集め、それぞれの些細な能力を使って権力者たちの悪事を突き止めていくんですけどね。
警察は子供にも全然容赦がないんです。
ゴミの山で暮らす人々は、ゴミ同然の扱いをされてしまう。
住人たちもそれを理解していて、子供たちが頼りにしている神父はちゃんと行動はするものの、これ以上は無理ってラインを引いてあきらめてしまっている。
ラファエロたちはたくましく、そのラインを越えて、警察に追われ死の危険に迫られながらも、小さな財布に潜んでいた秘密を突き止めるために走り抜けていくんです。
途中で親切な誰かとの出会いはあるけれど、どれもささやかなものでして。
もう彼らは死んでしまったんだろうと何度もあきらめられてしまう。
刑務所に面会に行ったり、聖書に隠された暗号を解いたり。
財布をゴミ収集車に投げ込んだジョゼは幸運だったのだなと最後に思いました。
あれを拾ってくれたのが、ラファエロでよかった。
ラファエロにいい友人がいてくれてよかった。
彼らに協力してくれる大人が、少しでもいてくれてよかったと。
子供は守られるものだというのは幻想で、世界中のあちこちでただただ搾取されたり、売られたり、暴力にさらされたりしているものなんだ……と改めて。
日本は平和ですよね。あの神父やボランティアの女性のように、できることならしてあげるけれど、命をかけてまではちょっと……というのが大概の大人の考え方でしょう。
それでいいんだけれど、それでもこの映画の描いた世界の裏側の現実は重たい。
最後の最後、少年たちの行きついた場所はとても美しくてね。
だけどいつまでもあのままではないんじゃないかなとか。
深刻な貧困を抱える世界と、そういう場所での権力の在り方とか、訴えるものがとても多い作品でした。
PR