2014年中国制作作品。
とある地方都市で発見されたバラバラの死体。
被害者を見つけ、怪しい二人組を逮捕しようとするも、
所持品の検査を徹底しなかったばかりに同僚二人が撃たれ、
犯人たちも射殺、事件は迷宮入りに。
この事件でケガをし、一線から引いた元刑事が主人公。
5年後、警備の仕事をしている彼は再び同様の事件が起きていることをしらされる。
調査を進めているうちに、最初の事件の被害者の妻がすべての事件にかかわっていることがわかって……。
という話。
中国のさびれた地方都市が舞台なんですが、このさびれ具合がまずとても良い。
刑事たちも服装がラフすぎて、ついでに目印もなんにもないのでどれが刑事なんだかさっぱりわからず、確保した犯人たちも速攻で手錠をかけられるものの、いろいろと甘すぎて唐突な銃撃が起きたりするのもなんだかすさまじい。多分、リアルなんだと思う。
特に最初の夜の街の部分が、大友克洋の映画作品をみているような気分。
色合いといい、町の雑然とした様子といい、登場人物たちの顔立ちといい。
(これは多分大友監督のクオリティが高いのだと思うけど)
それから、5年経つシーンのつなぎ方がすごく印象的でね。
美しくて寂しくて、ユニークだなあと。
主人公の心の荒み方も含めてかな感じられるところも良い。
物語は、元は刑事として働いていたのに、自身の失敗で人生をくじかせてしまった男と、浅はかでしたたかな女の物語。
犯人が一体誰なのかというよりは、地方のさびれた町で人生をすり減らし、理不尽にぶちあたった人間の心がさびていくさまを見るものかなと。
全編にわたって不安だし、物悲しいし。
そして最後のダンスと微笑み。
真昼間にあがる花火のむなしさなどなど。
するめのように噛めば噛むほど味の感じられる一本じゃないかと思いました。
それから「クイーン・オブ・ベルサイユ」
アメリカのある大富豪の夫婦が、アメリカで一番大きな屋敷を建てて引っ越しをしようとしているところからスタート。
完全なドキュメンタリーだとすぐにわかって、ちょっと血の気が引きました。
屋敷の施工主であるシーゲル夫妻は、アメリカで会員制リゾートの販売業をしており(リゾートマンションのシェア利用権を売っている会社をやっている)、資産は1800億円を超える本物の大金持ち。
引っ越し先の豪邸は、ベルサイユ宮殿をモチーフにデザインしたもので、総工費は100億円なんだそう。8000平米以上の敷地に、屋敷の中にはトイレが40か所。大階段の下には舞踏場があって、観客の入れられるテニスコートもあって、ボウリング場もあって……。
想像できないほど、笑うしかないレベルの大豪邸を建築中なわけです。
ところがこのドキュメンタリーを作っている間に、リーマンショックがやってきて、そこからの転落がもう本当にすさまじい。
もちろん、豪邸の工事はストップ。あらゆる資産が抵当に入り、1800億以上あったはずが、いつの間にかマイナス1200億円まで落ち込んでしまう。
ほんの一瞬、人生のほんの一瞬だけで、この落ち込み。
もともと住んでいた豪邸は少しずつ乱れ、こどもたちを8人抱えた夫妻の生活はじわじわと崩れていく。
新しい家に置くはずだった大量の美術品、高価な石材、大量のバッグ、服。車はなくなり、自家用ジェットを失い、夫婦の仲には亀裂が入り……。
開始早々は夫婦の二人ともが自信に満ち溢れていて、本当に華やかに暮らしているんですけども。
転落後の姿はなんというか……。
まだなにもかもを失ったわけではなくて、だけどあまりにも多く持ちすぎていた故に、消えていったものも大量にあって。
こういう人生はなかなかないでしょう。彼らは特にタイミングもよくなかったとは思うんですけども。
いや、壮絶だなあって。そのくらいしか、小市民の私からは出てこないのでした。
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