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2016-06-30(Thu)

「シビル・アクション」

「シビル・アクション」

1998年のハリウッド映画。古いね!
実話をもとにした作品でした。
主演はジョン・トラヴォルタ。

主人公のジャン・シュリクマンは弁護士なんだけど、
基本的に傷害事件を得意としており、
最初にぶっちゃけてくるんだけど、
被害者がどういう状態だと一番稼げるか、なんて
ものすごく下世話な基準を設けている。
弁護士の報酬のあり方というものがはっきりしているので、
確かにきっと、白人の専門職、40歳で稼ぎ盛りの既婚男性の担当が一番儲かるのでしょう。
そして一番お金にならないのは、子供の被害者なんだ、でナレーションは終わり。

そんなお金にならない案件を、ある日持ち込まれるのです。
ラジオで法律相談をしていた時に、生電話でののしられるという形で。
2年前に依頼したのに知らんぷりなのかと言ってきたのは、
マサチューセッツのある街に住むひとりの女性で、
息子を白血病で亡くしています。
元気だった子がいきなり病気になって、あっという間に死んだ。
息子の死に納得がいかなりアンには、裁判で争う相手が見えていないんです。
なのでジャンはこの依頼は受けないと決めるんだけど、
スピード違反で取り締まりを受けた時に、見つけてしまうんです。
どうしてこの土地で急に白血病にかかり、子供が次々死んでしまったのか。

大企業の工場が並んでいて、そこからなにかが垂れ流されている。

これはビッグビジネスの予感!と、ジャンはこの依頼を受けます。
たくさんのこどもの命を奪ったのは、工場から出された発がん性物質であり、
そのあたりに適切ではない方法で廃棄されたから、井戸水にしみこんで、
健康被害がでてしまったんだと。

最初はいっちょ金もうけするか!ってな意識のジョンでしたが、
子供を失った親の哀しみ、勤め先を裏切りたくはないけれど、
汚染された土地で子供を育てている従業員の証言などを得て、
さらには企業側の弁護士のやりくちに腹をたてて、
少しずつ、忘れていた「正義の心」を思い出していくんです。

最終的には相手にしてやられまして、
事務所のお金はなくなり、所属していた弁護士は全員家を抵当に出され、
本当に1セントも払うお金がなくなり、みんなバラバラになってしまい、
やむを得ず相手の和解案に乗らねばならなくなりました。

本当にどん底に落ちてしまう、ジャン・シュリクマン。

彼は小さな小さな事務所を街角に構える羽目になるんだけど、
それでも情熱を失わない。
むしろ、失うものがなくなったから、パワーアップを果たす。
自分の信念を取り戻し、もう一度証拠を探し出して、再び法廷に立つのです。

弁護士ものっていろいろありますが、
弁護士ものの王道って感じの話でした。
弁護士になりたてのひよっこか、慣れ過ぎて金の亡者と化したベテランが、
本当の正義とはなにかに出会うみたいな話のひとつです。

でも、実際にすべてを失って、それでも立ち上がって被害者を救った人物がいるんですもんね。
ジャン・シュリクマンはこの後環境問題専門の弁護士になったのだそうです。
潤沢な資金を持っている相手は強いw 
この作品は、企業側の弁護士を演じているロバート・デュヴァルがすごくいいし、
ジャンの事務所で経理を担当するウィリアム・H・メイシーがすごく良かったです。

結構前の映画なのに、不思議と古臭さも感じませんでしたよ。
レインメーカーはあんなに「古っ」って思ったのになあ。
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2016-06-21(Tue)

「アリスのままで」

アリスのままで

2014年の作品。
主演はジュリアン・ムーアで、これでアカデミー主演女優賞をとりました。
大学の教授として働く50歳。夫は医療関係者で、こどもは3人。
長女は結婚して子供を授かろうとしており、長男はまだ学生、次女は演劇の道を目指している。
そんな彼女は最近体調が少し悪い。
よく知った道で迷い、言葉が出てこない、約束を忘れる……。

医者にかかってよく調べてもらうと、若年性のアルツハイマーであることがわかる。
主人公のアリスがゆっくりと自分を失っていく中で、
家族はそれぞれ、妻であり母である彼女と向き合っていく。
そういうお話です。

大切な妻、お母さんを家族の愛でもって支えていこう、なんて単純な話じゃないですよね。
もっと年を取っていればきっと諦めがついたであろう病なんです。
邦画でも、「明日の記憶」という作品がありまして、
渡辺謙が主演を務めました。
働き盛りの男性が突然アルツハイマーを患い、
毎日毎日少しずつできることがなくなっていくお話でした。


病でもちろん弱っていってしまうんだけど、
単純に命が削られる病気ではないんです。
簡単にできるはずのことができなくなり、
家族だっていうのに名前を忘れてしまう。
寒いか暑いかもわからず、さっき聞いたばかりのこともわからない。
なのに遠い過去の記憶は鮮明で、妄想にもとりつかれ、
時間に構わず気になったことへまっしぐら。

なにも知らない人ならば、この人は一体なんなのか、と思ってしまうであろう病状です。
アリスもハッキリとそう認識しており、ガンだったら良かった、
ガンだったら恥ずかしくなかったのに、なんて言い出すほどなんです。

しかもこのアルツハイマーは「家族性」というタイプのもので、
子供にも50%の確率で遺伝し、受け継いでいれば100%発症してしまうというもの。
アリスは子供たちに説明した後、強く自分を責めます。

大学の教授としての職を失い(学生たちからの最低の評価を受けてやめることになる)
生きがいであった学問の道が閉ざされ、アリスは重大な決意をします。
ところがこれも、病のせいでうまくいかない。
このシーンはものすごく見ていて辛かった。
迫真の演技でね。ああ、なんてことなんだ……と愕然とします。

アリスが少しずつ自分を失い、からっぽになっていく様と
家族の向き合い方の変化も描かれていきます。

夫は当初病気を認められず、でも頑張って向き合おうと考え、
かいがいしく世話をしますが、結局最後は逃げてしまうという流れ。
まだまだキャリアを積んでいける年齢だから、
妻の介護だけにすべてを割くわけにはいかなかった。わかる。わかるけど、切ない。

長女のアナは、自分の家庭があり、こどもが欲しい。
不妊治療もしているんだけど、そこに母の病を告げられ、
しかも自分にも遺伝していると知ってしまうんです。
たぶん、将来自分もこうなってしまうんだとすごく身構えていて、
母には優しくしたいけど、病人として扱う気持ちが強い。
自分の家族を守り、子供を育てていきたいのに、
未来の姿をまざまざと見せつけられて辛くて、
心が引き裂かれそうなんじゃないかと思いました。
彼女の態度は少し悲しいものなんだけど、うちに秘めた葛藤を思えば仕方ない。


長男のトムは、末っ子なのかな、まだ学生でふわっとしていて、
いい部分の母しか見ていない感じがしました。
たまにしか出てこないのは、男の子ゆえかな……。
アリスが認知症患者のための集まりでスピーチをするんですが、
その時に同行していて、お母さんの言葉はとても良かった。
あの言葉を信じたい。まだ大丈夫、いい状態のままでいられる……って
夢を見ているような印象でね。頼りないんです。
この子は遺伝子検査で陰性が出たので、姉よりも楽観的になれる立場でして、
多分、このあとも積極的に介護をすることはないだろうなと感じます。


そして次女のリディア。
母からは演劇の道を反対され、もっといい未来をとくどくど言われており
それをとても疎ましく思っています。すごく正直で、自分がある。
ところが母の病がわかってからは、一番寄り添ってくれる存在になります。
リディアは姉と違って遺伝子検査を受けておらず、
未来のことはわからないまま伏せた状態にしていて
姉とのキャラクターの対比がよくできているなと思いました。
たくさん母親とぶつかってきたから、
病気になってからのたくさんの変化に気づき、
母の「素」を真っ正面から見つめて、受け入れようと決めたのかなって。
そんな風に見えました。


認知症は悲しい病だと思います。
記憶や思考、思想はその人を形づくる大切な要素なのに、
それが失われ、別人に変わっていってしまう。
誰もが最後までやわらかな善人のままでいられる方法があればいいのに、
残念ながらそんな都合のいい話はまだこの世界にはないんですよね。


こうしたらいい、こうすべきだという主張は、この物語にはありません。
アリスの計画もとても責められない。自分でも同じようにしようと考えるかもしれない。

人間はたくさんの病気を克服し、命を長持ちさせられるようになりましたが、
いまだに不治の病も、心を折られる不幸は残っている。

いつまでも元気で、聡明で、優しいばかりの世界は
この世にはまだないし、これからも現れないのかなあ。


命って不思議です。一体誰に試されているのかな、と思わせる
辛いけど見ごたえのある映画でした。

2016-06-18(Sat)

「ザスーラ」

「ザスーラ」

2005年、ハリウッドの作品。
ちょっと前に「ジュマンジ」を見て楽しかったのでこちらも。
すごろくゲームをプレイしていると、
コマについた時になにが起きたか説明するイベントカードが出てくるんだけど
本当にその通りになっちゃう超常ボードゲームをプレイした兄弟の話。

なにせこのボードゲームの舞台が宇宙なんだよね。
だから、コールドスリープをさせられたり、
トカゲ星人がせめてきたりともう大変!

ジュマンジはジャングルが舞台だったうえ、
街を巻き込んでの大騒動になるという展開でした。
最後は全部もとにもどって大団円、だったけど、
今回はどんなふうに〆るかな~とワクワク。


兄弟は母が出ていっておりまして、お父さんと暮らしてます。
気ままな姉さんもいるけど、兄弟よりもちょっと大人で対応はクール。
お父さんはちょっと頼りない弟をかわいがっていて、
兄ちゃんはそれがあんまり気に入らない……という関係性。

兄と弟は時々けんかをしたりしながらも、
ザスーラという名のゲームを進めていきます。
途中で壊れかけたロボットが暴れたり、
肉を求めて襲ってくるトカゲ型星人に襲われたり、
宇宙空間でさまよっていたお兄さんを仲間に加えたりしながら、
途中で強い絆を手に入れ、協力しながら「あがり」を目指します。

いや、結構いい話だよね、これね。
お兄さんの正体もなかなかいい感じ。
こんなとんでもないゲームならば、
分岐の別れた先の未来が混在していても気にならないというか。

宇宙っていってもエセ宇宙だから、
外に出たって息はできるし、勢いよく飛び出して行っても戻ってこられるという。

子供が見たら大興奮なんじゃないかな。
結構いい話だしね。

お父さんを演じているのがティム・ロビンスで、
あいかわらずデカいなあwなんて思いました。

2016-06-14(Tue)

「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」

「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」

1994年、ハリウッドの作品。
原作はアン・ライスの小説「夜明けのヴァンパイア」だそうで。

当時、トム・クルーズとブラッド・ピットのイケメン共演!
みたいな感じで騒がれていたなあ、と思うんですが
天邪鬼なのでそんなイケメンイケメン言ってこの野郎って
まったく見ずにおりました。

トム・クルーズはさすがとは思うんだけど、いまだにそこまで好きではなく
ブラッド・ピットに関しては「セブンイヤーズインチベット」などで
なかなか美しい人だったのなって最近感心したので
いい機会だし見てみよっと、という流れ。


物語はサンフランシスコからスタート。
ライターのマロイが誰かにインタビューしているところから始まる。
黒髪の青年ルイは自分はヴァンパイアだと話し、
これまでの二百年の人生について語り始める。

ニューオリンズで農場主をやっていたものの、
妻は出産で死に、子供も助からず、途方に暮れていた。
もう死んでしまいたい、誰かに命を絶ってもらいたいと願って
自暴自棄な暮らしをしているものの、そう簡単に殺してはもらえない。

するとある日、レスタトという男が現れる。
苦しみから解放してやろうと囁く彼に噛まれ、
ルイはヴァンパイアとして覚醒するんだけど……。

という話。ルイは人の血をすすり、命を奪うことにどうしても抵抗があって
苦しい思いをしながらも自分を戒めて生きていきます。
ペストの流行で生き残った少女を噛んでしまったり、
ヴァンパイア化した彼女に振り回されたり、
レスタトの容赦のなさについていけなくなったり。

意識は人のままヴァンパイアになってしまったルイの、
放浪の人生の物語でした。

特に良かったのは、少女ヴァンパイアを演じたキルスティン・ダンスト。
すごい。本当に素晴らしい。
肉体が少女のままでいる自分に疑問を抱き、
本能のままに命を奪い、大人になりたいと願い、
ルイの優しさを愛する彼女は、子供と大人が同居した
すごく複雑な魅力にあふれておりました。
単純にものすごく美しいっていうのもありますけど、
いや、ビックリ。きれいだった。

勝手なイメージのヴァンパイア通りだったのは彼女だけで、
トム・クルーズとブラッド・ピットはなんか違うかな……みたいな。
バンデラスもちょっと違うよね。え、バンデラスなの?って思ってしまった。
もう少し線が細くて消えてしまいそうなはかなげな人が演じた方が
良かったかなあなんて思っちゃうんですけど。
少し前のデイン・デハーンとかね。あんな感じの透けちゃいそうな感じ?

みんななぜかゴリっとしてて、そこが不思議で。
不健康な印象が薄くて気になりましたとさ。

話自体は面白く、ラストは結構意外な締め方でね。
なんだかんだ二人は仲良しってことなの?って思ったら
もうちょっとゴリ感の薄い人たちの方が雰囲気でたんじゃないかな。

2016-06-13(Mon)

「バッドガイ 反抗期の中年男」「リアル刑事ごっこ in L.A.」

ちょっと地味めで短い二本まとめてメモ。


「バッドガイ 反抗期の中年男」 2013年、アメリカ作品。

あらすじが面白そうだったんだよね。
40歳独身男のガイが、規則の穴を抜けて
こどもたちの為の知的格闘技であるところの
「スペル大会」に強引に参加し、優勝を目指すという話。

スペル大会というものが一体なんなのかというのが
まず日本でなじみがなさすぎるというのが第一のハードルでございました。
みてたらなんとなくわかるんですが、
ちょっと難しい単語のスペルを正確に当てるというもの。
知らない単語でも、語源や意味、用法を聞いて推測してもいいんですが
なんにせよ非常に知識の量を求められる競技なのです。
基本的に子供のための大会(8年生修了までの者に限られている)なのに、
自分は8年生を修了してないからいいんだ!
更には新聞社などの推薦がないと参加できないんだけど
参加規約を読み込んでそのあたりもガッチリクリアしてある。
主人公ガイは結構なヒネくれ者で、
隣に座った頑張り屋の子供たちを罠にかけて積極的にひっかけたり
自分に協力してくれている記者の女性と愛のないセックスをしたりとまあ
やりたい放題であんまり好感度が上がらないw

彼がこの大会に出たのには強い理由があってのことだし、
全国大会に向かう飛行機で出会った10歳のチャイタニアとは
大人なりの友情をはぐくんだり、いいところもあるんだけどね。

親子の繋がり、子供の勝利のためとはいえ、親がどこまではりきるかなど
いろいろと訴えたいことが詰め込んである作品かなあって思いました。
ただ、なんとなく突き抜けたいいところがなくて、惜しい感じ。
締め方とかは良かったんだけどね。
だけどまあ、ライバルの蹴落とし方がちょっとエゲつなさすぎて
どうしてもガイに肩入れし切れないっていう。
笑いの部分のブラックさがやりきれない、ちょっと切ないコメディです。


「リアル刑事ごっこ in L.A.」
こちらは2014年の作品。もちろんアメリカの。

学生時代からの友人同士であるライアンとジャスティン。
一方はアメフトで将来を嘱望されていたのに、けがのせいで挫折し現在はニート。
子供たちに一方的にコーチとして押しかけ、公園でわあわあ騒ぐ日々を送っている。
一方はゲーム会社に就職したものの、意地とセンスの悪い社長のもとでは実力を出せず
ひたすら雑用を任されるばかりの切ない日々。

そろそろ田舎に帰ろうかな、なんて思いがよぎっていたある日、
同窓会のお知らせが届く。仮装パーティだと思って警官のコスプレをしていくと、
実際は仮面パーティでみんな正装している。
過去の自分の活躍をビデオで見たり、今どうしてる?と聞かれて大口をたたいたり
二人はすっかり自己嫌悪に陥ってすごすご帰るんだけど、
その帰り道、街行く人から「本物の警官」扱いをされてライアンはすっかりご機嫌に。
ジャスティンに止められたものの、警官ごっこが超楽しくて
パトカーをオークションで競り落とし、勝手に階級章をつけ、
無線まで勝手に聞いておまわりさんごっこをし始める。

ギャングに絡まれて困っている町の人を助けたのをきっかけに、
悪いやつらに目をつけられた二人。
本物の警官の目をごまかしつつ、最後はとうとう大ボスとの対決まで行くんだけど……

っていうお話。
悪ふざけがすぎるでしょう、っていうのが正直な感想w
ライアンのノリの良さについていけるような、ついていけないような。
ジャスティンは結構良識的なのでなんとか事態を収束させようと頑張るんだけど、
ライアンのゴーゴーぶりに振り回されて最後は一緒にゴーゴーゴーですよ。

割と王道なつくりの物語かな。
ある意味、安心して見られます。面白いけど、なんとなく地味。こちらも惜しい。そんな感じでした。