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2017-06-06(Tue)

「レイチェルの結婚」

「レイチェルの結婚」

2008年の作品。アン・ハサウェイ主演。
いや、できるよねアン・ハサウェイって思わされる出来でした。

主人公の女の子の名前はキムで、どうやらなんらかの施設から出てきたところ。
担当医やら同じ施設にいたであろう男の子と会話を交わして、
迎えに来てくれたお父さんと一緒に帰宅。
結婚式を目前に控えた家の中はとても賑やかで、
結婚するのはレイチェル、キムのお姉さんなんです。

学問に勤しみごくごくマトモな常識人であるところのお姉さんは
キムをやさしく迎え入れてくれるけれど、
施設帰りなだけあってなにかあるんでしょう、
姉のお友達はちょっぴり棘のある態度。
ドレスを試着している場所でタバコを吸い、
消せと言われてもなかなか消さない、
というか消さずにトイレでスパスパしちゃうあたり、
この主人公曲者なんだろな……という気配が充満し始める。

姉の結婚にあわせて施設を出たわけではなくて、
施設を出たタイミングがちょうど結婚式直前だったのがわかり始める。
キムを助けたいと願う父と、
結婚式の準備に追われる姉、
家を出て、離れたところで暮らしている母。
一家とその周辺の人たちとの交流の合間に、
キムの抱えている事情と、そして、家族を引き裂く大きなヒビとなった
過去の大きな大きな事件がわかっていくんですけどね。


こういう家族っているだろうなあっていうリアルさが充満する中、
なんだか不思議なカメラワークなんですよ。

キムは一生懸命ダメな自分と向き合おうとしているんですが、
どうしてもね、弱い子でね……。
過去についたどうでもいいウソがバレてしまって、
自分がかわいそう、自分を認めて、自分はがんばってる!と
自分自分自分、な態度が顰蹙を買っちゃう。
姉はなんとか争いにならないよう頑張るけれど、でもどうしても無理。
父はなんとか娘を認めようと思うけど、バランスが取れない。
責められてやるせなくなったキムは母のもとへ向かうけれど、
そこでとうとう、自分の犯した罪と向かいあうことになるんです。
向かいあうだけで、乗り越えられなくて、そして自暴自棄になり。

弱くてかわいそうな子を、常識のある人は責められないんですよね。
家族という血でできた鎖で結ばれていると、
突き放せないし、完全な無関係にはなれない。

で、なんだかんだで揉めた結果、お互いの思いが理解しあえて
良かったようなそうでもなかったような……

と思ってたら、不思議なカメラワークの謎が最後にわかってヒーンってなるという。
よくある人間同士の摩擦ドラマだっただけじゃない、
とはいえ、ただただおっかないだけでもなくて、
あれはきっと「好きだったから」なんだよねって最後にちょっと思ってエンド。

アン・ハサウェイが全然かわいくないんですよ。
すんごい擦れたダメ娘を好演しています。
あれ、アンだよね……?って最初になるという。
なかなか面白い映画でございました。
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2017-05-13(Sat)

「グッド・ネイバー」

「グッド・ネイバー」

2016年の作品。
事の顛末、監視カメラ映像、法廷の3か所で物語が進んでいく作り。
主人公はイーサンとショーン、2人の高校生。
かつて行われたある実験を下敷きに、自分たちもとある試みをしているところです。

向かいの家に住んでいる偏屈ジジイにイタズラを仕掛け
その様子を6週間観察し続ける。
ポルターガイストのような現象を起こし続けていって、
幽霊を信じるようになるかどうか……試したいのです。

向かいに住む頑固じいさんは通行人を口汚く罵ったりするし、
妻を毒殺したなんて噂もある人物。
なので少々のお仕置きくらいいいじゃない?
ってノリで、まずは留守中に家中に監視カメラを仕掛ける。
監視はところどころに穴があるものの、じいさんの日常は丸裸に。

ところが、ドアを荒々しく開閉しても、
暖房が勝手に切れて家の中が寒くなっても、
窓がいきなり割れても、じいさんはなんだか平常心のまま。

監視を続ける二人は、じいさんがたびたび入り浸る地下室が気になってくるのですが、
そこまで入り込むのは不可能で……。


というお話。

最初に二人の口から説明されるとある実験に関する見解、
「人は見たいものを見る」
これそのまんまのお話でした。

仕掛ける側の二人組のうち、イーサンは爺さんにちょっとした恨みがあるんです。
それが物語が進むうちに明かされていく。
私怨があっての実験だったとわかって、ショーンは怒り、打ち切ろうとするも
イーサンはどうしても「自分の見たい現実」を捨てられず、
思い切った行動に出てしまって、
途中でわかりますが、最終的には死者が出る、という悲しい結末を迎えます。
それが一体誰なのか。最後にわかって、しかも理由がハッキリとして
なんてこった……!
ってなって終わり。

ものすごく皮肉な展開なんですよね。
幽霊を信じさせようなんて、ちゃんちゃらおかしい目的だったね、とか
最悪の結末ではあったけれど、爺さんにとってはひょっとしたらよかったのかも……とか、

でもとにかく、個人の勝手な思い込み、勝手な印象で他人を判断してはならないよ
って話なんだと思います。はい。
どんなに明るくても心に暗いものを抱えていたり、
どんなに陰気でも、いざという時にはとても頼りになる賢者だったりなんて
たくさんある話なんですもんね。

人は見たいものを見る

思い込みこそが現実の一番の敵なのかもしれません。




あとは「ソムニア 悪夢の少年」と「ディアボロス/悪魔の扉」を細切れで。
「ソムニア」はルームで名演技を披露していた少年が
夢みたものを現実のものにしてしまう力を持っているものの、
彼のママを食べてしまった悪霊「キャンカーマン」まで呼び寄せてしまうというもの。
キャンカーマンは結構おっかない風貌なんですけど、
その正体や現れた理由は結構悲しいもので
ホラーなんだけど静かでドリーミィな感じでした。

「ディアボロス」はまたキアヌ主演で、敏腕弁護士役。
無敗のままやり手街道を突っ走るために、明らかに悪い依頼人を守るため
セクハラされた女学生にかなりの嫌がらせをかましてしまう。
そんな彼を超一流の弁護士事務所がスカウトして、
お金ザックザクの超リッチ生活が始まったものの
妻は精神に異常をきたすし、
所長が実はお父さんだったり、正体が悪魔だったりでもう大変。

アル・パチーノが悪魔、っていうのはものすごくハマってて
なるほど感が素晴らしかった。
正義の道を行きたかったはずの若きやり手弁護士役がキアヌにもあってて
でもそれよりなにより奥さん役のシャーリーズ・セロンがかわいいのなんの。
あんなかわいい美女に甘えられるのサイコーじゃないのって思った分
彼女のたどる運命がかわいそうでならないっていう。

シャーリーズ・セロン最強伝説がまた1ページ刻まれたなあって思いました。
全体的には、ちょっと長かったかなあって感じ。

どれもなかなか良かったです。

2017-05-06(Sat)

「スウィート17モンスター」

スウィート17モンスター

現在公開中の作品。新聞で紹介されていて、こりゃ見なくては!と
病院へ面会へ行った帰りに映画館へ。
新宿のシネマカリテ、初めて行ったんですけども
朝のうちにもう夕方までの上映が売り切れちゃってて。
少し遅い時間のチケットを予約していきました。
武蔵野館と同じ小さな劇場で、スクリーンも小さい。
なんというか、濃い映画好きが集ってる感じがあって面白かったです。


主人公は17歳の高校生ネイディーン。
イケてなくて周りにちっとも溶け込めないイタタな女子高生には
イケてる兄貴が一人と、生涯で唯一の友人クリスタがいる。
その辺の適当な高校生なんかクソ食らえスタイルのネイディーンなんだけど
ママが留守の間にクリスタと盛り上がっていると
兄貴も友達を連れてきてパーティを開始。
ふてくされ、酔いつぶれてトイレで寝ていたら
その間にいつの間にか兄貴と親友ができあがっていて……。

というお話。
唯一無二の親友が、にくたらしい兄貴によってリア充の世界の住人になっていき、
寂しいわ悔しいわ腹立たしいわで怒り心頭のネイディーン。

だったらアタシだって、アタシだって……!
って思ったけど、全部が全部空回りしちゃう、という
暗黒青春アイタタムービーでした。

ほんの少しだけね、まあいいか、って思えたら
ネイディーンの世界はだいぶ快適になるはずなんですよ。
だけどそこで「うん!」って言えないのがヒネクレ者のつらいところで。
っていうのがものすごくわかるわかる、ああ、超わかるってなって
正直もう突き刺さって痛くて、その上で本当にこの主人公かわいい!
ってなる映画でした。本当に、ただいま人生の暗黒部分を全力疾走中で、
全然半端なところもなくて、やりきった感のある素晴らしい一本。

ネイディーンは足も長いし本当はかわいいんだけど、
世界に迎合すんのが嫌なんだよね。
そういう、妙なプライドが生まれつき備わったタイプで、
いろいろと心当たりがある自分にはものすごくストライクで
今の年齢だから楽しいとかかわいいと思える映画よなあってしみじみ。
もうちょっと若かったら直視できなかっただろうと思います。

学校の先生役のハレルソンがものすごくいい味を出していて、
ハマってましたね。
クリスタはちょっと17歳にしては完成度が高すぎるというか
声の落ち着きっぷりが40代くらいに思えて
それがまたネイディーンを包むのにちょうどよかったのかなあとか。

にしても、あのあと変な噂とか流されなかっただろうか
ちょっと心配になってしまう。がんばれよ、ネイディーン。

とにもかくにもいとおしい映画でした。

2017-03-26(Sun)

「SING」

SING

ただいま絶賛公開中、イルミネーションの最新作を見てきました。
ちびっこ引率のため、吹き替え版で。
正直字幕で見たかったんですが、吹き替え版もみなさんお上手でした。
MISIAを起用とかステキだよね……と言える出来でしたよ。



潰れかけの劇場支配人、バスター・ムーン。
銀行からの電話を避けまくるさえないコアラはなんとか劇場を再び盛り上げたくて
新人シンガーのオーディションを行うことに。

なんとかかき集めた全財産1000ドルを賞金にしようとするも、
200歳のカメレオン秘書にお願いして作ったチラシにはなんと
10万ドルの文字が。
そんなにもらえるなら、と参加者が殺到して嬉しいコアラ。
素晴らしい歌い手を選んで、そしてとうとうミスに気が付いて。
でも、今更お金がないなんて言えない。
持ち前のポジティブシンキングでなんとかできるさ、と
隠したままステージを実現しようとしていくのだが……。

というお話。

もっともっと楽しいだけの話かと思いきや、
夢を持つことの素晴らしさと現実の厳しさ、
自分の弱さや、生活していく上での立ち位置、
世間の目の厳しさなんかが描かれておりまして
それでいて、あらゆる動物たちがまじりあって暮らしているという世界観がマッチして
おもしろい作品になっているのだなあって感心しました。

父親がギャングで、その手伝いをさせられているゴリラのジョニー。
彼氏と二人で夢を見ていたけど、破れ、一人で立ち上がるヤマアラシのアッシュ。
実力はあるけど口も行動も軽くて、自業自得ながらも憎めないネズミのマイク。
25人もの子供を抱えるブタの主婦、ロジータ。
誰よりも上手で歌を愛しているのに、恥ずかしがり屋で実力を出せない象のミーナ。

その他脇役のキャラクターたちも非常にいい感じで、
バスター・ムーンの友人であるニート羊のエディもすごくポイントが高い。

そしてそして、なにより感心したのがロジータと組むことになる
もう一人のブタ、グンターですよ。
ド派手な金色のジャージで歌い踊り、ただ一人だけ普段の暮らしがクローズアップされないんです。
あいつなんかヘンな奴だなあって思われながら暮らしているであろうグンター。
クローズアップされないのでキャラクターとして浅いわけですが
逆にすごくミステリアスで、描かれないことがとてもよく見えてくるわけです。

歌はみんな上手だし、映像もすごくいい。
ジョニーの父ちゃんの野性味あふれる動きが素敵でねえ。
やっぱゴリラっていいよなあって思うんです。

物語としてはとても王道的なんですが、
それがとても清々しくてね。
落ち込んだ時なんかに見たい作品だなあって思いました。
エナジームービーと銘打っているのは間違いではないです。
字幕版も見に行こうかなあ。どうしようかなあ!

2017-02-28(Tue)

「君に読む物語」

「君に読む物語」

2004年アメリカの映画。
小説が原作で、なんともピュアなラブストーリーなのです。

LA LA LANDを見て、ライアン・ゴズリングのイメージが変わったので
彼の代表作(多分)も見てみようかなーって。

舞台は老人の施設で、穏やかな男性が女性に読み聞かせをしている。
むかしむかし、お互いの生まれに邪魔されながらも愛に生きた二人がいた。
彼らの辿った人生を丁寧に綴った物語を、男はゆっくりと読んでいく。

聞かされている女性は認知症だと、少しずつわかっていく。
男性も体の調子はよくなさそうで、最近心臓の発作に見舞われたんだと。
そして男性は施設に入る必要はないのに、女性のそばにいたいからあえて入所しているのがわかる。

二人の愛の物語と、少しずつ読み進められていくノート。
かわるがわる映し出されていく光景に、
ああ、これはこの二人、年老いた二人の歩んだ人生だったんだ……とわかる。

貧しい青年のノアは、夏の間だけ地元にやってきたアリーに恋をする。
ひとめぼれしたノアはアリーに自分をアピールしまくって、
ぶつかり合いながら、強く強く惹かれて愛し合うようになるのです。

ところが生まれが違うし、進路も違う。
肉体労働者をクズと呼ぶような両親にアリーは反発するも、
そこまで言われてしまっては……とノアはすっかりぐったり。
私と一緒に来てよと言われても、いくら愛していてもまだ17歳。
すべてを捨てたとしても幸せにできる自信がなくて、
揺れている間にアリーは連れ戻されてしまいます。

それでも、愛は乗り越えられるんだ……。
というのがこの話のテーマんでしょうね。
身分とか、将来の不安とかも乗り越えて、
そして時が過ぎた後には、消えていく記憶、老化の容赦なき忘却をも
二人は乗り越えるんです。

それでエンド。おそろしくうつくしい終わり。
二人のロマンチックな愛にふさわしい、美しすぎる終わり方ですね。

アリーを演じていたレイチェル・マクアダムスがかわいいのなんの。
ちょっと鼻っ柱の強いところもあるお嬢さん、でした。かわいかった。
婚約者はたまったもんじゃなかっただろうけどね。

愛した人だから、その幸せを願いたい。
そんな思いがこの世のすべての人の中にあれば、
ストーカー事件なんて起こらないんでしょうね。
自分を見てくれないならイラナイ、なんて
なんと愛のない考えなのでしょう……

と、続けてラブストーリーを見て考えてしまいました。
たまにはこんなピュアピュアなものもいいよね、みたいな。

本当に愛する人がいるなら、このラストはうらやましいんじゃないかなあ。
人生、こんな終わり方ができたら、どれだけ幸せでしょうね。