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2015-07-19(Sun)

「チョコレート」

ジョニー・デップのやつだー
と思ってたんだけど、間違い。「ショコラ」だよねそっちは……。

チョコレート 映画 で検索すると
最近では「チョコレートドーナツ」が出てくるようだけれども
私が観たのはハル・ベリーがアカデミー賞を撮ったちょっと前の作品。

原題は「モンスターズボール」で、2001年作品。

刑務官の男、ハンクと死刑囚の妻、レティシア。
二人は同じタイミングで、全然違う理由から息子を失い、出会う。
そこから始まる、悲しくて激しい愛の始まりについて描いた作品。

今回の邦題はいい感じかなあと思うのですが、
それは全部みたあと思う事で、甘い部分は本当にまるでない作品なので
タイトルの印象だけでみちゃうと後悔するだろうなあと。

あと、映倫再審査版、ということで、
本来R18だったものがR15くらいになってますよーと最初に告げられ、
なるほどこれはかなり性描写を削ったのだろうなあ、と納得。
レビューを見ると、性描写がしつこい、長い、という意見が目立つので
そっちを見たら感想はどうであっただろうか……という思いもありつつ。


ハンクは刑務官で、父親も息子も刑務官。
黒人への偏見・差別が激しい父親と、心優しい息子との三人暮らしが、
ある死刑囚への刑執行を機に崩壊してしまう。

息子が差別や偏見のない優しい心の持ち主なのは、
完全に父と祖父を反面教師にしているから。
祖父は特に差別を隠そうとしない。女性蔑視も酷い。
母も妻も亡くなり、口の悪い父親と一緒に暮らしているハンクも、
父とよく似た厳しい男なんだけれども、
その厳しさについて、息子から命懸けの抗議を受けることになってしまう。

息子の死は「弱さゆえ」と考えていたけれども、
最後に残した言葉は抜けない矢になって心に突き刺さったんだろう。
簡素すぎる葬儀を終えたあと、ハンクはどこか虚ろな様子。
あとは死を待つだけのやかましい父親との息苦しい暮らしの中で、
息子と二人で必死に生きているレティシアと出会う。

レティシアは美しいし、とても控え目な性格をしている。
対外的には、なんだけれども。
うまくいかない人生に憤りや苦しさ、哀しみを抱えて生きているけれど、
人に頼らず、一生懸命なんだよね。息子に苛立ちをぶつけてしまうけれど、
それも必死に生きているからなんだろう。息子の過食もストレスゆえだろうし、
貧しさ、夫の境遇、刑務所に通い続ける暮らし、すべてが辛い。
最後の面会でようやく漏らした「もう辛い」という言葉が、重たくて仕方ない。

不慮の事故から彼女も息子を失い、そこにハンクが通りかかって助ける。
いきつけの店で働きだした、自分が刑を執行した死刑囚の妻であった女性。
同じように息子を失った彼女のストレートな哀しみ、気丈な様子に心を動かされて、
ハンクはレティシアに手を差し伸べはじめる。

そこから二人は深い仲になっていくんだけど。
性描写のシーンはかなりカットされているので、
どんだけだったのかはわかんないんすけどね。
でも、私を女にしてくれ、というセリフがものすごく重くて、
レティシアの11年分の苦しみ、哀しみっていうのがその一言だけで伝わるというか。
一生出て来られない夫、うまく息子を育てられない、家賃ももう払えない、
追い出される寸前、貧しさ、黒人への差別などなどなどなど
耐えて耐えて耐えて耐えてきた人生の苦渋の中で、
酔いの中ではあったとしても、半信半疑の中なんだけれども、
白人の男性が自分によくしてくれる理由がなにかわからないけれど、
それでも自分を一人の女性としてみてくれる男がそこにいて、
すがっていいのだっていう、許されたような感覚が生まれて、
すくわれたような気持ちになれたのではないのかなあああああ、って思ったわけです。


最終的に、ひょんなところからハンクが刑務官であったことがわかって、
レティシアは泣き崩れてしまう。
信じたいけれど、信じられない。白人と黒人、上と下、踏みつける者と踏みつけられる者、
ずっと壁に隔てられてきた相手を、心から信じていいのか、
裏切られているのかわからなくて、それで叫ぶんだけど。

最後のシーン、二人はどうなるのか、祈らずにはいられない。
永遠にではなくても、短い間だけでもいいから、互いに信じられる日々があれば良いなと
思わずにはいられない作品でありました。

差別やいじめは世界のそこら中に山のようにあるものだと思うんですが
白人と黒人の問題は本当に根深いね。今この時代になってもまだ、
薄らいでいてもまだ、存在しているのだろうなあと。
考えずにはいられませんでした。

重たい映画だったけど、名作だなあ。
でもあんまり、二度みたいとは思えませんでした。辛すぎた!
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