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2015-07-21(Tue)

「チョコレートドーナツ」

前からみたいと思っていた一本。
ちょっと前に近場のミニシアターでやっていたのに、
時間があわず、行けないまま1年過ぎてようやく観られました。

チョコレートドーナツ

予告とか作品紹介的に、ハートウォーミング、感動する類の話だと思わされていたのですが、
蓋を開けてみたら全然違っててビックリ。
現実の厳しさ、社会の目、他人を許容できない人の攻撃の鋭さを、
描き切った作品でズシーンと来る一本。

ダウン症のこどもの役を、実際にダウン症の人間が演じたことが話題になりましたが
素晴らしい演技でしたね。


1970年代の実話をもとにした話。
ゲイバーで働くルディと、客としてやってきたポール。
二人は出会ってすぐに惹かれあう。
そしてルディのアパートには、母親から育児放棄をされた少年マルコがいた。
ある夜二人は出会って、そのあとすぐにマルコの母親は麻薬所持で収監。
施設に入れられたらかわいそうだと、ルディはマルコを引き取ろうとする……

という話。
自分をゲイであると認め、ゲイとして暮らしてきたルディは社会の片隅で、
「普通」の扱いをされてこなかったのだろう、その苦しさを知っているからこそ、
マルコを引き取ろうと決め、精一杯頑張ります。
けれど、彼の正直な生き方に対し、社会は厳しい。
子供の前で女装をしている、ゲイバーで働いている、男同士でキスをしている、
まともな住処を持っていない、などなど。
カップルではなくいとこ同士だと偽り、法廷ではスーツを着て、
「差別を受けるから」という理由で普段の自分を隠してマルコを受け入れ、
彼を病院に連れて行き、専門家の診断を受け、学校にも通わせる。
マルコは優しく、ユーモアがあって、ダンスも上手。
受け入れてくれる人もたくさんいるけれど、
でも、気に入らないとおもう人間もたくさんいて、
最終的にルディたちとマルコは引き離されてしまう。


監護権を争う裁判で出てくるのは、ゲイがいかに「悪」かということばかり。
必死で愛情を主張する二人に対し、世界は本当に厳しい。
マルコも二人と暮らしたいと望んでいるのに、
そんなささやかな願いはすくいとってもらえず、
すべてが「ゲイの否定」、気に入らない人種を叩きのめすために動いていく。

裁判のシーンは本当に見ていて辛い。
正当性などかけらもない、ただの憂さ晴らしのような時間でしかなくて、
ただ他人と少しだけ違うことがそんなにも悪いのか、
けれど他人を受け入れない人間は確かにいて、
今この瞬間も誰かを傷つけるために力を注いでいるのだと
涙を流さずにはいられなかった。

マルコとともに暮らすために、ポールは自分達の愛情について語り、
言いたくなかったであろう言葉も、裁判長に向けてぶつける。
「背が低くて、知的障害のある太ったこどもなど、誰も養子に欲しがらない」と。
自分達が望んでいるのは、そんなマルコを幸せにする暮らしであって、
誰の邪魔もしない、彼を良い大人に育てるから、と訴える。でも、却下されてしまう。

結末も本当に、悲しい悲しいもので、
ルディは夢見ていたシンガーとしての道を歩み始めるけれど、
彼の歌も本当に悲しくて、世界の残酷さにやるせない気分になってしまう。

それでも一年は一緒に暮らせて、ちょっとは幸せだったからいいじゃない、という考えもあるけれど、
世界がもう少しだけ寛容だったなら、その幸せは長く続いていたじゃないかと。

自分に関係のないところにある幸せよりも、
自分が許せない者への攻撃が優先されるって
一体なんなんでしょうね。

神様は意地悪だなあ、とか、
人間は不完全な生き物なんだなあとか、
切ない気分でいっぱいになりました。

「チョコレート」に続いて、差別問題満載の映画を観てしまった……。
時代は進んで、少しくらいは緩和されたけれど。

他人に親切で、寛容な人間でありたいと思います。
いつだって完璧ではいられなくても、心におもしを置いて生きていくように
こころがけたいものですね。

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