2009年フランスの映画。
もともとはボリショイ交響楽団の指揮者であったアンドレイ。
30年前にあった政治的な問題がもとでその座を追われ、
今では楽団の清掃員として働いている。
彼だけではなく、方針に従わなかった団員はみな奏者ではない
雑用なんかをしながら、それでも音楽に焦がれながら暮らしているというシーンからスタート。
フランスのある劇場から、演奏の依頼のFAXを勝手に受け取り、
かつての仲間たちとボリショイ交響楽団として演奏しに行こう……
そういうコメディなのかなーなんて思っておりましたが
実際にはもっと強いメッセージ性のある映画でしたね。
ヨーロッパの周辺国が抱えている事情、地続きで国がつながっているというのは
なかなか面倒だったりするんだろうなあって思わされます。
アンドレイはフランスのバイオリニスト、アンヌ=マリーを指名し、
オーケストラと一緒に演奏したいとお願いします。
へんてこな楽団と、アンドレイの語ったチャイコフスキーへの異常なまでの思い、
彼の抱えた重たい過去などにちょっと引かれちゃうんですけども、
彼女はアンドレイたちの大切な仲間の娘で、どうしても一緒に演奏したいんです。
アンヌ=マリーの両親への思いを利用する形で、演奏当日を迎えます。
オーケストラの仲間たちはみんな腐った生活をしていて、最初はグダグダ。
ちゃんと集まるかどうか不安だったものの、
アンヌ=マリーの中にかつての仲間の姿を見出して、
演奏が始まって心を一つに重ねます。
やっぱり役者さんがやっているので、レビューなんかみると
動きがダメとかなってないとか、こうるさい意見が散見されますけども、
そういうところには目を瞑ってみるととても素敵な映画だと思います。本当に。
アンヌ=マリーの演奏が始まった瞬間、
楽団を追われた人たちの心に灯がともって、
本当に音楽を愛していて、ずっと忘れられずに生きてきたんだと、
もう失われてしまった大切な仲間への思いが背中を強く押してきて
すべての音が重なって美しいメロディを作っていくんだと。
音楽がどうしてこの世界にあるのか、ほんの少しだけわかるような気がしました。
人間を動かすのは、やっぱり理屈とか物質じゃないんだろうななんて
ヴァイオリン交響曲の演奏の中で少しだけ見せられる彼らの未来に安堵しながら
考えてしまいました。あんま細かいこと言わない人にはぜひおすすめしたい一本です。
コメディはあんまり合わないけど、フランス映画はいいですね。
あまり感情的にならないというか、冷静な視線で淡々と、
文学的な見せ方をしてくれるのがいいと思います。
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