まずは「ネブラスカ」。邦題は「ネブラスカ 二つの心をつなぐ旅」。
公式サイトのタイトルのロゴとか、のほほんとしたイメージだけれども
これは結構ハードな家族再生物語。再生じゃあないかな。
家族受容の物語ではないでしょうか。
先週観た「サイドウェイ」と、去年みた「アバウトシュミット」と同じ監督ということで
ふかく納得。なんというか、甘い理想のエッセンスを入れ過ぎず、心に残る出来。
「100万ドルが当選しました!」といういわゆる典型的な詐欺の手紙が届き
「当選した」「賞金を受け取りに行く」と言ってきかない年老いた父。
妻が止めても息子が止めても、まったく聞き入れず、高速道路に徒歩で入り込んだりと
どうしようもない。
諌めても諦めないというのなら、気が済むようにさせるしかない。
決意した息子は、仕事を休んで父を連れてネブラスカまで出かけていく……。
という話。
これはアルツハイマーであることだなあ、と最初にまず思って辛い。
お父さんは「人の話を信じやすい」「酒癖が良くない」という設定なんだけれども
状態はそれ以上によろしくなくて、映画なのだけれどもため息が出てしまう。
これはしないようにと言ったことをやり、
ものをなくし、無理して怪我して病院送りになりつつ、
途中で一家の故郷に寄る事に。
言っちゃ駄目だよといわれたそばから、父は「100万ドルが当たった」と周囲に漏らす。
古い知人や親せきたちは、大富豪が現れた!と表面上は祝福してくれるが、
もちろん実際には善意だけの人達ではない。
過去に金を貸した、世話をしてやったからとお金を無心するようになって、
息子の「なにも当選はしていないんだ」という言葉を信じない。
最終的に、当選の手紙が強奪されて、それが嘘だったのだと判明する。
それでも行きたがる父を連れて、息子はとうとうネブラスカへ。
認知症になったとしても、そうでなかったとしても、
タガの外れてしまった老人の相手っていうのは大変なものだと思う。
強く思い込んで現実を認められないし、子供と違って行動力があるから。
最後の最後に、息子はひとつ、父の夢を叶えてやる。
父がどうしてそこまでくじにしがみついたのか、理由がわかったから。
この息子が本当に優しくて、素晴らしいなあと思いました。
本当に結びつきのない親子なら、こうは出来ない。
苛立ちと虚しさ、無力感に潰される人の方が多いだろうなあ……と。
時の流れは残酷なものだけれど、でも、人生って捨てたもんじゃない。みたいな。そんな映画。
全編モノクロなんだけれども、映像はすごく美しかった。
画面の向こうに色が見えるモノクロだなあと感じました。良かった。
次は「キリングゲーム」。
登場人物がめっちゃ少ない。ほぼトラボルタとデ・ニーロ。
二人が森でお互いを狩り合うお話。
かつてある紛争地で、現地の兵士と派遣されてきた軍人として出会った二人。
方や森の中で古傷をさすりながら暮らす生活、
一方は十八年も必死になってカタキの行方を捜していた。
偶然を装って出会い、雨の晩に語り合って、翌朝戦いはスタート!
わあデ・ニーロつよい
って感じで進みます。トラボルタの方が若いし情熱的なはずなんだけど
なんだかんだ老練の兵士にはかなわなかったよ的な。
アクションは時々ピリっとするものの、そう長くはない。あとめっちゃ痛そう。
メッセージはしっかり込められている。戦争はよろしくない。
誰もが傷つくだけで終わる。復讐なんてもう忘れようよ……と。
実際にはもうちょっと深いかんじなんだけれども、
そこに家族愛も詰め込んで85分。短い。
エッセンスをぎゅぎゅっと詰め込んだシンプルな造りなんだけど、
ちょっとシンプル過ぎたかもしれない。
もうちょっと遊びがあっても良かったな、なんて思うけどでも
ここまで無駄なく作れるのもすごいなあと。ちゃんと主題伝わるからね。
なんだかんだロバート・デ・ニーロ。老いてなお健在でした。
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