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2016-05-20(Fri)

「シカゴ」「NINE」

「シカゴ」と「NINE」。
どちらもロブ・マーシャル監督の作品で、
シカゴは2002年。NINEは2009年に制作されたミュージカルです。

両方ともめちゃめちゃ好きで、これまでになんども見てるので
また見たついでに記録しておこうと思って。

まずは「シカゴ」。
主役であるロキシー・ハートをレニー・ゼルウィガーが。
彼女が憧れ蹴落とす相手、ヴェルマ・ケリーをキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じてます。
二人はそれぞれ殺人を犯し投獄され、
敏腕弁護士をやとって無罪を勝ち取ろうとするという
非常にインモラルな話なんですけれども、
そのあまりの身勝手さや、女性のいいとこ悪いとこ全部まとめて
見せてくれる業の深い作品なんです。
とはいえ、映像は軽やかでキラキラ。エンタメですよ。
女性の殺人犯を専門にしているお金大好き弁護士ビリー・フリンはリチャード・ギアが。
こちらもお金大好きな看守役を、クイーン・ラティファという隙のない配置。

さえない夫に愛想をつかして早何年なんだろうな、
スターを夢見るロキシーは、劇場の支配人とトモダチだという
フレッドと愛人関係にあります。
今日こそ支配人に紹介してよね、と思いながらロキシーが見つめる先には
舞台の上で歌い踊るヴェルマの姿が。
ヴェルマはこの日、夫と妹を殺害してきたところ。
一緒に舞台に立つ妹と、マネージャーである夫が浮気をしている現場を見てしまい
激昂して二人を射殺し、でもすぐにバレて逮捕されてしまいます。

一方のロキシーも、最初はよろしくやっていたフレッドが最近冷たい。
舞台に立ったらこんな風に自分を演出したい、スターになりたいと
フワフワしたことばかり言うロキシーにフレッドは冷たく言い放ちます。
支配人とトモダチなんでウソだよ、と。
お互いいい思いしたしいいじゃないか、とうそぶく男に怒って、
ロキシーもまた引き出しに隠していた銃を取り出して引き金を引いてしまう。

美しい犯罪者にライトを当て、裁判をショーアップして楽しむ。
それがシカゴという町のやり方だ……なんてことを本編でいうんですけどね。
確かに、見目麗しい者は罪人だろうが関係なくピックアップされます。
殺人犯として投獄された女性たちは、記者がやってきて写真を撮られているうちに
スターになっていく……スターになった気になってしまう……
っていう話なんですよ。

シカゴの舞台は女子刑務所で、いろんな理由で人を殺めた犯人が出てきます。
一番目立って、一番記事にされて、一番センセーショナルで、一番撮られたい。
ロキシーはヴェルマに張り合い、哀れな夫を騙し、ビリーと一緒になって
無罪を勝ち取るべく裁判に挑むのですが……。

まーよくできた面白いミュージカルなんですよ。
これ、普通に撮ったら「お前なにいってんだ」ってなるところなんですけど
歌と踊りにいざなわれている間に楽しく見られちゃう。

ロキシーのちょっとブスかわいい、エロい感じがすごくうまいし、
ヴェルマの迫力ある声がいいし、
なによりも愛だよね!と白々しく歌うビリー、
犯罪者をスターにすることでピンハネする看守のママ・モートンも最高。

冷静になったらダメ。だってもう、お前ら自分がなにやったのかわかってんの?ってなるので。
善悪とかそういう部分はおいといて、目と耳で楽しむといい映画だと思います。

もちろん、悪事を働いた人間に世間は厳しいし、現実は非情だし。
だけど女たちはたくましく、美しい。そんな映画です。大好き。


そして「NINE」。
こちらは「8 1/2」という映画をもとにしたミュージカルの映画化で、
フェデリコ・フェリーニの自伝がベースになっている。

イタリアの映画監督、グイド・コンティーニがスランプに陥り、
人生の中で深くかかわってきた女性たちとのあれこれが
夢のように繰り広げられていくという内容です。

こちらの物語は、すごく単純に考えるともう、クズ男が!ってなっちゃう。
グイドには美しい元女優の妻がいるんだけど、
可愛い人妻の愛人がいて、ファンだと寄ってきた女性記者をつまみ食いし、
オーディションで若い女優の卵に粉をぱっぱと振りかける。

グイドを取り巻く女性は全部で7人。

愛するママ。長い間一緒にやってきた理解者である、衣装デザイナーのリリー。
かつて自分の作品で起用した女優である妻、ルイザ
少し頭が弱いものの、愛らしくて一途な愛人、カルラ
何作も主演をやってもらった有名な女優、クラウディア
監督が大好きとあっけらかんと寄ってくる女性記者、ステファニー
そして少年時代のグイドに女とはどんなものであるか教えた、娼婦のサラギーナ。

それぞれ、美しい女優が演じているんです。
ママはソフィア・ローレン。長年の相棒リリーはジュディ・デンチ。
キレる妻ルイザは、マリオン・コティヤール。
エロかわいい愛人はペネロペ・クルスで、
インスピレーションを与え続けた主演女優はニコール・キッドマン。
映画オリジナルで追加された女性記者は、ケイト・ハドソンで、
怪しげな魅力を爆発させた砂浜の娼婦はファーギー。


グイドはスランプに陥っていて、映画を作れない。
ところどが世間もスポンサーも彼を逃がさない。
適当にでっちあげたタイトル、プロットを会見で発表し、
なんとなーくこういう感じと衣装を作らせているけど、
肝心の映画そのものの中身は決まっていない。
グイドは逃げ出し、愛人とイチャイチャする。
思い出と現在が交錯し、彼の人生と女性たちの物語が次から次へ。
そしてとうとう妻に愛想をつかされ、
からっぽになってしまったグイドは「映画は作れない」と引退するも……

みたいな話。色男め、もげろ!ってな感じの話なんですけどね。

この物語については、各々の許容範囲があると思うので、
どこまで許し、どこが許せないかズレてくるかなあ。

だけどこの女性たちのそれぞれの美しさと、
グイドに向ける愛の性質の違いは非常に楽しめる内容なんじゃないでしょうか。

最初の最初に、まず愛人が登場して歌ってくれるんですけども
(いや、本当はママが最初なんだけどさ)
これがまあ、いやらしい!ペネロペ・クルスすごい!ってなる。

幼いグイドにインスピレーションを与えた、フォリー・ベルジェール。
砂浜で出会った娼婦のサラギーナの妖艶さ。
あっけらかんとした明るい魅力のステファニーに、
愛しているのに「女優」としてしか見てもらえないクラウディアの悲しみ、
そしてとうとう爆発した、夫に心底愛想を尽かした正妻の怒りのストリップ。

どれも全部、本当に美しいんです。女性ならではの美しさが存分に描かれる。
特に印象に残るのは、砂と椅子を使ったサラギーナと、
愛を与えつくした妻の、静かだけど激しい怒りのステージじゃないかな。
ステファニーの明るい「シネマ・イタリアーノ」もすごくステキなんだけど、
とにかく思うのは、ロブ・マーシャル監督は女性の美しさを描く天才じゃないかなってことです。

シカゴでもそうなんですけど、衣装も振り付けも本当に素晴らしい。
(監督は振り付け師でもある)
これが一番、女性の美しさを魅せられる、って思って作ったんじゃないかなって感じるんですよね。
男女は平等であるべきだけど、同一にはなりえません。
女性は女性ならではのものがあるでしょって、言われているような気分になる。

ビリー・フリンが乗っている女体の車も、
ボンデージファッションに身を包んだ女囚たちも、
砂をまき散らしながら男に愛を説く娼婦も、
清らかに叶わぬ恋心を歌う高嶺の花の女優も、全員みんな美しい。

なんつって、「イントゥ・ザ・ウッズ」は先日見てイマイチだったんだけどね。
またこういう、監督に向いている作品作ってほしいなって思います。
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