2015年イスラエルの映画。
いやー公式サイトの明るい作りは一体なんなんだろう。
煽り文句もだけど、こういう映画ではありません。
正直言って、デッドマン・ウォーキング以来の重たさですよ。
邦題も詐欺レベルかと思います。
確かに、自分の死に方くらい自分で選びたいと思うのは自然なことですし
それが老年、長く生きたあとならなおさら。
もう完治したところで元気に生きていけるはずがない、
認知症になるかもしれないという恐怖が迫りくる、
友人たちが少しずつ違うひとになっていく姿を目の当たりにする、
などなど、長く生きた後に起きる出来事は一種のホラーみたいなもので、
いわゆる「尊厳死」を望むのは当たり前の心理だと思うんです。
これはそういう映画なんです。
年老いた友人が願うことはただひとつ。
自分が壊れてしまう前に、機械に繋がれてただ生かされている状況になる前に
幸せを抱いたまま死にたい。
それを、主人公は叶えてしまい、それが周囲に知れ渡って、
主人公たちは何人もの友人を天国へ帰していくんですが、
それが自分の妻相手となると……
そして仲間の一人が実は金をとっていたと判明し……
とまあ、人間の悲しみ、葛藤、苦しみが存分に詰め込まれた映画なんです。
本当に若い人は見ない方がいいし、
年老いた人にも見せたくはない。
見るべきは、30~50代くらいの、まだ終わりには少し遠いくらいの人かな。
老いの訪れとはこういうものだとここまで容赦なく描くかなあと。
イスラエルの言葉はあまり聞いたことのない響きですし、
映像の色合いもひたすらに暗いです。
だからポスター、公式サイトの明るさがものすごくむなしく見えるという。
残される側からすれば、なんにしても自殺なわけですから、
もう少し一緒にいたかったと思われている場合は
すごくつらい展開だなあと思ったり。
しかし病を患っていたり、痛みがあったりする人には
生き続けることそのものが辛いわけでして、
人間とはなぜこんな仕組みの中で生きているのだろうか
なんて考えてしまう映画です。
安楽死、尊厳死というものはあっていい、って思っていたんですけどね。
無駄な延命なんていらない、と考える人は増えていると思うんですけど、
それでも最後、娘へのメッセージビデオを撮影しているシーンを見て、
残される側の辛さも相当だなって感じてしまって……。
こう考えられるのは、とてもリアルな物語だったからでしょう。
こんな作品に出演された俳優さんたち、すごいです。ほんと。
胸に刺さる映画でした。
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