2015年ブラジルの映画。
実話がもとになっている作品。
かつては神童と称えられた一人のバイオリニストが、
楽団のオーディションに落ち、失意の中、しかたなく就いたNGOの仕事。
スラム街にある学校で、子供たちに教えることになったんだけど、
彼らの日常は、せわしなく、暴力と貧困に圧迫されていて……。
みたいな感じ。
「天使にラブソングを……」の2作目みたいな?
って思っていたんですけどね、途中までは。
だけどやっぱり、同じように貧しい場所で暮らすガラの悪い子供ったって、
アメリカとブラジルじゃあ違うんですよ!って話でした。
大人たちにこき使われ、実入りのいい仕事をしたいなら犯罪に手を染めるしかない、
バイクは盗難車、女の子は、望んだものかそうではないかわからないけど妊娠中。
ちょっとしたことで諍いを起こし、希望も安心も、静寂もない暮らしの中にいる子供たちに
本当の音楽を教えるのは大変なことなんです。
だってお金にならないからね。
大人が「豊かな心をはぐくむために音楽をやらせよう」なんて考える世界じゃないんですよ。
才能豊かなサムエルの演奏と熱意に心を動かされ、
主人公ラエルチは一生懸命指導をします。
それでやっと少しずつこどもたちも、音楽を楽しむようになるのに……。
もうねえ。
悲しいったらないんです。
誰もが健康で、清潔な家があって、ご飯が食べられて、毎日学校へ行って、友達がいて。
そりゃ日本のこどもたちにも、悩み深いことはいろいろあるとは思いますが、
それって、安全・安心、守られている立場が当たり前だから、なんですよね。
その後に彼らにあるのは、ただ音楽だけ。
それだけでいいと、彼らは思ったんだと思います。
暴力や恫喝、貧困、争い、不信は彼らにとって当たり前でね。
それに文句を言うのではなく、音楽を愛する者として毅然として立つという。
あまり多くを語る作品ではないんですけども、
最後じゃあじゃあ涙が出ちゃったのは、
彼らの覚悟のようなものを感じ取ったからだと思います。
当たり前の平穏に感謝しようと思える映画でした。見て良かった。
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