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2016-09-05(Mon)

「ナイトクローラー」

ナイトクローラー

2014年、ハリウッド映画。
事件や事故の映像を撮るカメラマンの話、というと語弊があるかな。
警察の無線を傍受してだれよりも早く現場に駆けつけ、
被害者がいようが犯人がいようが関係ない、
刺激的でダイレクトな映像を撮って、テレビ局に売る
事故映像専門のパパラッチが主人公。
ナイトクローラー、夜を這い回る者、みたいな感じかな。

結構衝撃的な内容でした。

主人公は、現在無職でコソ泥でなんとか食いつないでいる男、ルイス・ブルーム。
冒頭からちょっとマトモじゃなさそうなんです、ルイスは。
明らかに入ってはいけない場所に入って、注意されて、
笑顔でごまかそうとした挙句、警備員にアタック。
勝手にフェンスを切り取って売りさばき、
売り込んだ先で就職活動を開始する。
そこの社長には、コソ泥なんか雇わないよって言われて、
そうっすよねなんて笑顔でかえっていくんですけど……。

この後ルイスは偶然交通事故の現場に遭遇して、
被害者を救出しようと頑張る警察官を撮影しているところを見るんです。
その映像は、次の日の朝のニュースで流れる。
事故や事件の決定的な映像は売れる、ビジネスになると理解し、
盗んだ自転車を元手にしてルイスはカメラを手に入れ、
パパラッチへの道を歩み始めるんですけども……。

この映画のパッと見の訴えっていうのは、
人としての倫理観ってどうなのとか、テレビで見せられているのは誰かの作り上げた
編集済みの勝手な物語なんだ、とかそういうものだと思うんですけどね。

それよりなにより、主人公のルイスが怖い!
カッと見開いた目は相手をじっと凝視し、
彼だけの勝手なルールのままに会話が運ばれて、
大した愛情も情熱もなさそうなのに体の関係を求め、
より認められるためには手段を選ばなくなっていき。
最後の事件に関しては、本当に超えてはいけない一線があったのに
彼は軽々と飛び越えちゃうんですよね。

そういう人物がいるから、より刺激的な映像が撮られるし、
より刺激的な映像は話題になり、視聴率に繋がる。
もっともっと、の構造はこういうとこにあるんですよね。
もっと強く、もっと早く、という要求から、
カメラを持った人たちも理性をどんどん失っていく。
ブレーキはきかなくなって、大事なものが壊れてしまうっていう。

いや、ルイスはそもそもブレーキがきかないタイプだったようですけどね。
あそこまでやらなきゃいけないものなのか……
って思う自分が正常であってほしいと願わずにはいられないというか。

ルイスのやりすぎは、映画だからね、って言えるものなんですけども
だけどこういう人、本当にいるんじゃないかなって恐怖も感じるんです。
人間っていったいどうなっているんだろう。
ここまで非情に、良心のかけらも持ち合わせずに生きていけるものか?
ルイスの強烈な「認められたい」という気持ちを、
理解できるようなできないような、とにかく見ていて心にトゲが食い込んでくるような
恐ろしい映画でございました。


残酷なもの、なまなましいもの、性的なものに関しては、日本でもいろいろと
もっと刺激的なものをというスレスレのチキンレースが続いていると思ってます。
あいつがここまでやったなら、こっちもやらなきゃっていう
より売るための道具として、良心が削り取られていく感じ。
ここまでしてはいけないという声も、結果、お金の前には無力です。
たとえ誰かが傷ついたとしても、たとえ多少のウソが混じったとしても。
視聴者、読者が求めるから……だからより過激に!っていう流れですよね。
なんとか止まらないかなって、いつも感じています。
だから余計にこの映画は、刺さったなーって。

主演のジェイク・ギレンホール、すごかったですね。
あんな危ない目をした男ではなかったと思うんだけど。
他の映画ではみたことのない鋭さで、すごい存在感でした。
これは本当に、見た方がいい映画だと思います。
いけないんだよーこういうのはー といういい子の主張の奥に隠されたあれこれを
特に若い子には見てほしい気がいたしました。
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