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2017-02-03(Fri)

「ザ・ヴァーチャリスト」

「ザ・ヴァーチャリスト」

2015年、イタリアの映画。

地味でさえないオタクの高校生2人が、
偶然発見した天才プログラマーの作り上げた
感覚没入型のヴァーチャルワールドの世界へ入り込んで
ああだこうだするお話。

全体的にはちょっと半端な出来なんです。
ヴァーチャル世界に入り込んでしまいたいフランチェスコと、
彼にゲーム・セラピーと称した遊びを強いられて
じわじわリア充になっていくジョヴァンニの対比はいいんだけどね。
ゲーム世界の映像はとても素晴らしいのに、
ところどころ細かいところが甘くて、
最終的には世界の創造主との争いになるものの、
ワチャワチャしているうちにウワー みたいな終わり方をしたので。
それをとてつもなくカッコイイ風に描いているので
見ている側からするとギャップがあって乗り切れない……みたいな。

もうちょっとフランチェスコ側の心理を丁寧に描いていたらよかったかな。
同類だと思っていた友人においてけぼりにされて、
狂っていくくらいでも良かったのでは……と思います。

とはいえ、現実ではできないんだからゲーム世界でコミュ障直そうぜ!
からのジョヴァンニのリア充化と、それを許せないフランチェスコの描写は面白かった。
イカした彼女ができて割とすんなりベッドインして、
それについて「なんか想像と違ってた」と正直に話し、
「AVとは違うんだよ。なんかゴメンね?あんたのあこがれてたのとは違って!」
みたいに怒られるシーンは結構よかったですし、
そういう風に思ってもバカ正直に話したらダメなんだよねえって。
でもしょうがないよね、経験が少ないから……
怒る彼女にも、素直な彼氏にもうんうんってなる自分がバカだなあって感じて
そのへんはとても面白かったです。

そういう青春ムービー的な側面と、ゲーム世界の謎ときのサスペンシブな部分が、
うまくバランスとれてなかったかなって感じでしょうか。
「クロニクル」くらい追い詰められ要素が入ってたら化けたのかも?
なんて思いました。


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2017-01-17(Tue)

「SPY TIME」

「SPY TIME」

2015年スペインの映画。
最近私の中で急上昇中のクレイジー株、スペイン産の映画です。
「スガラムルディの魔女」でも思いましたけど、
スペインも笑いのセンスが独特よな、って。
イタリアともフランスとも違う、なんとも言えない無常感。

荒涼とした岩山を行くタキシード姿の男。
彼は「失敗しない」スパイ・アナクレトで、
囚人の移送をしようとしているところ。
ところが計画は漏れており、車はバズーカで破壊され、移送は大失敗。
それどころか「お前の息子ボッコボコにしてやっかんな」と宣言され、
アナクレトは大慌て。
彼の息子、アドルフォはすごく普通の社会人で、
ちょうど彼女にフラれてしまったところ。
なんとかヨリを戻そうとしていたら、突然ヘンテコな武術使いみたいなやつが襲ってきて……。

というコメディ映画。
アクションは若干緩めかな?
アナクレトはバリバリのスパイであるのに対し、息子はぼんくら……
かと思いきや、日々の遊びの中でめっちゃ鍛えてましたから
みたいな感じで才能が開花していき、
最後は親子二人でラスボスに立ち向かうという。

フランス映画を見ていても思いますが、
親子間でのセクシャルな話題の許容量がいまいちわかりません。
わからないので、笑いどころなのかどうかがつかめないっていうね。

そしてこれはとてもわかりやすいコテコテのコメディなのに
たまにすんごいゴア表現差し込んでくるので油断が出来ないっていう。

もうちょっとアクションがキレてたらよかったかなあ。
父ちゃんの飄々とした雰囲気はいい感じで、
ハリウッドでリメイクすると失われちゃう部分かと思うので
全体的にスピード感が出ればもっともっと楽しかったかなって。

スペイン特有の地獄感が背後にちらほらと垣間見えたので
そういう意味ではとても満足です。

2016-11-18(Fri)

「リザとキツネと恋する死者たち」「マジカル・ガール」

みてみたかった映画を2本。ポケモン始める前に見なきゃってことで急いで視聴しました。
偶然2本とも、インチキジャパン要素が入ってました。
インチキってほどじゃないかな。真剣にやったけどちょっとズレてる的な感じか。

まずは
リザとキツネと恋する死者たち
2015年、ハンガリーの作品。ハンガリー映画って「人生に乾杯!」くらいかな。
不思議な映画でしたよ。

30歳になろうとしている看護師のリザが主人公。
公式サイトはラブリーな雰囲気にまとまってますけど、そんなラブリーじゃないですよ。
ラブリーではあるんだけど、ブラックなラブリーです。

リザは元日本大使夫人の家で住み込みで働いております。
マルタ田中は病を患い、自分では動けない状態。
リザは夫人から日本語を学び、かつてスターであった、今は亡きトミー谷の歌を愛する女性です。
30歳の誕生日にステキな恋人に出会えると信じているリザは
愛すべき誰かを探すためにいろいろしているんですけども、
彼女にだけ見えるトミー谷の亡霊が実は悪いヤツで、
嫉妬心から彼女に恋する男をつぎつぎに殺していっちゃう。
あまりにも不幸が続く状況を、
自分には那須に住まう化けキツネがとりついていると嘆くリザ。
この呪いをとくには、見返りを求めない、無償の愛を注いでくれる人が必要、
ってことで、運命の人を探してドレスアップしたり出会いを求めたり、
それがなかなかうまくいかなくて、でも案外その相手はすぐそばにいて……という話。

トミー谷を演じているのが日本人でよかったなーというのがまず1つのポイントw
海外の映画だと、日本人役を日本人が演じていることってなかなかない(と思う)ので。
デンマーク生まれのハンガリー暮らしということで、あんまり日本語は上手じゃないみたいでしたけど(リザの方がうまかったっていう)。

リザは可愛いんですよね。
モテなさそうであり、美人なんだけど、ネガティブで、純真で、清らかなんです。
トミー谷の霊に愛されてしまうのも仕方がないかなあ。

映像的にもとても面白い作りで、
運命の人であるゾルタン警部がなぜか全然死なないところとか、
愛の力があれば死なないんですって急に力業で訴えてくる感じがめちゃめちゃよかったです。




マジカル・ガール

2014年、スペインの映画。
やっぱスペインってちょっとクレイジーなんですかね。すごいんだけど。

キャッチコピーは「魔法少女ユキコは悲劇のはじまり。」で、
実際に魔法少女ユキコというキャラクターが登場します。
こちらも日本好きの香りが漂っております。
ユキコを愛しているのは12歳のアリシアという女の子。
友人たちと交流する時のハンドルネームも日本風でして、
ただしアリシアは白血病を患っており、余命いくばくもないんです。
アリシアは日本で作られたユキコのコスチュームが欲しいと願っているんですが
(彼女の願いを書いたノートは正直泣ける)
日本円で90万円もするんです。
7000ユーロという値段を見て、失業中の父親はため息をつく。
とても買えないけれど、娘の願いを叶えたい。
13歳まで生きられないと言われてしまったから。

父親のルイスは宝石店で強盗をしようとしますが、決行する直前に上から吐瀉物をひっかけられます。
上から声をかけてきたのは、もう一人の魔法少女というべきなのか、
深い闇を魂の底に抱えたバルバラという名の奥様なんですが。
なんだかんだルイスと関係をもってしまったバルバラ。
すべてを携帯電話に録音して、ルイスはお金をもっていそうな彼女を脅します。

とにかく、闇の深いというか、深い闇で作ったような映画でした。
バルバラには、因縁のある男がいます。昔彼女の担任だった教師、ダミアン。
恐喝されてなにやら怪しげな方法でお金をつくったバルバラでしたが、
ユキコのコスチュームには魔法の杖がついてない!
魔法の杖は2万ユーロで、ルイスに再び恐喝され、仕方なく更に怪しげな部屋へいくバルバラ。
なにがあったのか、ボコボコにされてしまったバルバラは、ダミアンのもとへ。
助けを求めたのではなくて、復讐するためにです。

バルバラの行ったあやしげなバイトの詳細は伏せられたままですが
普通の人生ではありえないであろうなにかであるのは間違いありません。
バルバラとダミアンの関係についても、詳細はわからない。
でもたぶん、ダミアンはバルバラを愛してしまったんでしょうね。
とても歪んだ偏執的な愛を、バルバラは利用します。
かつて少女だったころのバルバラも、現在の闇の心をもった彼女にも、
魔女的なオーラがぷんぷんただよっておりまして。

スガラムルディといい、スペインには魔女信仰みたいなものがあるのかな?
でも考えてみれば、日本人も魔法少女大好きですもんね。
無垢な少女の魔法の力は、大人になれば百戦錬磨の魔女のものに変わるのでしょう。

最後の最後、ダミアンの狂気ははっきりと浮き出して、
最悪の悲劇を招いて映画は終わりますが、
その最後の最後、アリシアの瞳の強さがすごく印象的でして。
おもしろいとか面白くないとかじゃなくて、ハートを切ってくるような映画だなと。
そんな感想を抱きました。スペイン映画は闇が深い。ますますそんな風に思います。

2016-10-05(Wed)

「マーシュランド」

マーシュランド

2014年のスペイン映画。サスペンスです。
最近いろんな国の映画を見ていて、
オランダとか北欧はなかなかクレイジーな作品出してくるなって思ってたんですが
ひょっとしてスペインもなかなかクレイジーなんじゃない?って感じ始めてて。
評価も高いので見てみることにしました。

1980年、スペインアンダルシア地方。
さびれた田舎町で美しい姉妹が行方不明になり、
二人の刑事がやってくる。
バイオレンスなフアンと、まだ若いペドロ。
姉妹は最悪な形で見つかり、どうやら少女連続誘拐殺人事件が起きているとわかって
二人の刑事は犯人を追い始めるが……

という話。
全編ムードがとてもいいし、すべてのシーンに伏線はってるよー的な緊迫感がみなぎっている。
さびれた田舎町に住む女の子たちはみんな街を出たがっていて、
スペインの抱えていた政治的な問題の影響もまだ残っていて
労働者たちは給料をあげろと叫び、
あやしげな霊能者の女の意味深な言葉に、麻薬の密売なんかもかかわってきて
密度がとにかくすごい映画でした。
私が淡く抱いていたクレイジー具合とは違っていたんですが
ちょっとだけ別角度にめちゃめちゃとんがってる作りでございましたよ。


少女たちの殺され方はとても残酷なもので、
容疑者は何人も出てきて、
とにかく全シーン思わせぶりでして。
浦沢直樹のマンガみたいだな!って思いながら最後。

謎を残したまま、事件は終わるんです。
と思わせておいて、最後の最後にひとつ爆弾が投げ込まれる。
だけどその爆弾、ホンモノなのかニセモノなのかはわからず。
もしかしたらヤツが真犯人なのか……!とハラハラしながら
ペドロのように後ろ髪をひかれながら町を去ることになります、視聴者が。

少女たちをつぎつぎに落とすイケメン青年キニが異常なほどイケメン。
タイトルのマーシュランドは、湿地帯という意味だそうで。
なるほど、入り込んだら泥まみれ、なかなか抜け出せない、
そんな町だったな……ってどーんと落ち込みそうな
よくできたミステリーでした。俳優さんたちもみんなかっこよかった!

2016-05-26(Thu)

「スガラムルディの魔女」

スガラムルディの魔女

2013年、スペインの映画。
いやーとんでもないものみたなーw というのが素直な感想です。

ざっくりしたあらすじを書くと、
妻とは離婚し、可愛い息子と週2回しか面会できない
失業中のダメ男ホセが同じように食い詰めた面々と
宝石強盗を働き、逃走するんですが、
逃げた先が魔女の伝説が残る場所スガラムルディ。
でも、伝説なんかじゃなくて、ホントにいるの。魔女って。

で、もー大パニック!

っていう内容。

最初は、ちょっとホラーなコメディなのかなーって思っていたら
魔女の宴が始まったあたりがすごくてね。
こいつはあかん!って気分になる箇所がちらほら。

たまたま乗り込んだタクシーの運転手と乗客、
追ってきた二人の刑事と、ホセの元妻も巻き込んで超大パニックでしたよ。
小ネタがいちいち笑わせてきて辛いw
いわゆる特殊効果的な部分は、若干甘いかな。
だけどそのお陰で笑えるので、よいのではないでしょうか。

魔女の母、祖母たちを裏切るセクシーなエバがいいし、
最初は「女なんかくそくらえ!」って言ってた男たちが追い詰められすぎるし、
最後の最後は「うわああああー」ってなるので、
最近刺激が少ないわ って人は見たら楽しいかもしれませんが、
割とグロいとこもあるので注意です。

EDの歌がまたなんとも言えない感じで、笑っちゃったよねw
すっごくいい!とは言えないけど、愛すべき作品。
映像的には飽きない作り、だと思いました。