2012年、どこの映画かなこれ。ベルギー?
舞台がどこなのかもちょっと把握しづらい、
不思議な恋愛というか、遅れてきた青春映画のような空気でした。
主人公は刑務所の看守をやっているJ.C.
とても静かでまじめそうな男なんですが
彼の唯一の趣味がタンゴ。
教室にいって静かに踊っていると、とある女性が入ってくるんです。
それが、アリス。
40手前くらいの色気のあるアリスにJ.C.は惹かれるんですが、
ある日、刑務所で仕事中に気がついちゃうんですよね。
夫がいて、自分の働く刑務所で服役しているって。
そこから少しずつ変わり始める、
硬いばっかりのJ.C.の人生……みたいな話。
恋愛は成就しません。だからこれは恋愛映画というよりは、
恋愛をとおして人生を変えた男の話、です。
看守としては、受刑者の近親者と交流をもったらダメなんですが
どうしてもアリスが気になって、J.C.はそっと
アリスと教室で踊ったり、来なくなってしまったアリスを気にかけ
電話をかけてみたりするんですが
どーにもこうにもこの男は純情すぎて、
見ていてキューンと切なくなってしまうっていう。
ところでヒロインのアリスなんですが、
15歳の息子がいて、受刑者の夫フェルナンがいるんですが
もう一人、受刑者のドミニクって男とも親しいのです。
親しいを通り越して、もう一人の夫みたいなの。
この辺が最初理解できなくて、あれ、お父さんなのかな?
っておもったら愛人っていうね……。
愛人というか、なんというか、ちょっと奔放なのかな……みたいな。
そんな複雑な男女が刑務所で入り乱れて、
夫には「看守とタンゴを踊るなんて」と嫉妬され、
ドミニクには「あと20年もこの中なんて耐えられねえ」と自殺未遂をはかり、
自分が実は父親ではなく、仲良しのオッサンの子供だったと知った息子が
ちょっとグレかかったりなどなど
アリスとその周辺の奔放さに振り回されて、
それでも彼女がいとおしくて、
J.C.は最後に、アリスとその息子の力になりたいあまり、
思いっきり大きな一線を踏み越える。いや、飛び越える、かな。
嫉妬しながらも、アルゼンチン人にタンゴを習うフェルナンとか、
ムショ内で教えてくれるアルゼンチン人たちの
タンゴの見事さとかね。
女を落とすための踊りだと言いながら、
まずは男同士で練習するんだとか、
刑務所の中なんで、基本的には殺伐としながら
時には踊り、時には笑い、人間は生きていくんだなあ……みたいな。
ちょっと不思議な映画なんですよね。
J.C.の変化は非常に大きいんだけど、
見た目的にはすごく控えめにしか変わってなくて。
最後のシーンのあと、どうなるのかなあ、彼らはって
心配になっちゃうような終わり方なんですけどね。
だけど、さわやかな風が吹いてきたような
すがすがしさの漂うラストで、
なんか、ちょっといいもの見たなって気分になれる映画でした。
囚人のタンゴが見事で、
ついでに囚人のタンゴって響きで「シカゴ」が見たくなりました。
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