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2015-03-01(Sun)

「それでも夜は明ける」

「それでも夜は明ける」

みておかなければならないようなが気がしたので。

実話がもとになっているという
とある黒人(自由が保障されている)が拉致され、奴隷として売られた12年間の話。

非常に恐ろしい話でした。

こんなにも露骨な差別があったのを映像にして見せつけられたっていうのと、
これ、現代にもあるんだなっていうのと、
ホント簡単に奴隷なんて言葉を使ったらいけないな……っていう。

主人公のソロモンは、妻と二人の子供と一緒に幸せに暮らしていたのに、
いい仕事があるよ(バイオリンが弾けるので、演奏の仕事)と言われて
行って、飲んで、酔って、目が覚めたらほぼ牢獄に入れられていた。

自分の名を名乗る事を許されず、主張も蜂起もできないまま、
白人の「御主人様」に買われて暮らす日々。
ただ、ソロモンは賢く、プライドのある男だったので、
横柄な態度の白人と幾度となく衝突する。

ソロモンの悲しい十二年間を追っている間に、
理不尽な暴力を見なければならない。

胸にずーんとくる映画は結構みているけれど、
こんなに悲しくなるのは珍しいと思った。

最終的にはブラッド・ピットに救ってもらうんだけど
(なんか彼だけは普通にブラッド・ピット過ぎて戸惑った)
でも「本当に良かったなー!」とはならない。
一緒に虐げられていた「仲間」を、置いて、振り切っていかなければならなかったのでね。


奴隷としてこき使われている間で一番恐ろしかった描写は、
ソロモンが首をくくられたシーン。
本当にギリギリのところで命が繋がるんだけれども、
つま先立ちで必死になって耐えていなければ死んでしまうような状況で放置される。
「御主人様」の判断がなければ余計な真似はしてはいけない、
という決まりがあるんだろうけれども
それに加えて「処刑が当たり前」なんだろうと思わせる
あの周囲のうららかな描写が本当に病的。
こどもたちが遊び、何人も行き過ぎる「仲間」がいて、
遠巻きに見る人間がいくらでもいるのに、
ソロモンに救いの手は伸びて来ない。
昼から、夕方まで。
ご主人様が間に合わなければ、ソロモンの気力が尽きれば命はそこまで。

あとね、女性の受ける理不尽が本当に辛かった。
本当に、こんなに悲しい気分になる映画、なかった。ビックリしちゃう。

創作物で簡単に「性奴隷」とか出されると気分が悪かったけれど
これからは多分もっと気分が悪いと思うw

創作物に怒るのはすごくしょうもないんだけれど、見せつけられてしまったのだから仕方ない。
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2015-02-26(Thu)

「アメリカン・ビューティー」

昔映画を毎月二本ずつ観てた時期があって、
映画の日は1000円だーって、新宿の映画館に通っていた。
半年くらいでやめてしまったんだけれども、その頃公開されて
ちゃんと映画館で観た作品の一つが「アメリカン・ビューティー」でした。

「わけがわからん」「なんでアカデミー賞をとれたのか」みたいな感想が多くて
私もまだあの時はよくわからなかったというか。
幸せだと信じていたものが壊れて、諦めの先に幸せがあったのだ、
みたいな感想は持ったと思うんだけど、
確かに主人公のレスターはちょっとキモイんだよね。
娘の同級生に一目ぼれして、そこをきっかけにブチ切れていく。

あれからもう15年ほど経ったので、きっと印象が違うだろうと信じて見てみると
先日みたばかりの「ノー・カントリー」と通じるものがあるな、と思いました。
自分達の信じていた幸せ、理想の形、追い続けていれば必ず勝者になれる、
みたいな幻想が破れて、その先にかつて自分が愛していたものを見つける。
一体なにが本当の幸せなのか、レスターは見つけて、なんというか
超越した人になったんだろうな。あのモノローグの感じからすると。
物質やステータスに縛られるなんてくだらないよ、
「こうあらねばならない」なんてただの思い込みだよ、と語りかけてくる感じ。

息苦しい職場、夫婦関係の破たん、反抗期の娘、幸せな家庭の過剰演出で
追い詰められたレスターは、ある日娘の同級生であるアンジェラに一目ぼれしてしまう。

あらすじは割愛するとして、

短期間で「隣人がやってきて」「父が恋に落ちて」「妻は不倫」「娘も恋をする」と
ものすごく色んなことが起きる。

妻のキャロリンが庭でせっせと育てている赤い薔薇。
あの真っ赤なバラが「アメリカン・ビューティ」。
幸せで優雅な暮らしをしていると周囲にアピールするための薔薇は、
妄想の世界でアンジェラを美しく彩る。

対して、レスター一家を隣から観察し続ける隣家のリッキー。
彼の世界は白い。純粋で、世界の向こう側をみているかのような達観した青年。

アンジェラへの一目ぼれと、パーティで出会ったリッキーの軽快さに
レスターの中でなにかが壊れてしまう。
それまでしていた我慢をやめて、思うままに生きようと決める。

少し筋肉をつけたら素敵だと思うというアンジェラの言葉を信じて鍛え始め
会社は辞める。しかも脅して退職金を巻きあげる。
欲しかった真っ赤な車を買って、妻には見切りをつける。

そして運命の日。

妻のキャロリンは不倫がバレて、相手と別れる羽目になる。
レスターからの冷静な言葉から少しおかしくなって、銃をバッグに潜ませて家へと向かう。
彼女は情けなく自分のいうことを聞かない夫を疎んでいたけれど、
不利な条件で離婚をしたくなかった。
自分を蔑んだような目でみるようになり、それまで築いてきたあらゆる彼女の美学を打ち砕いたから。
決意を固めるために、自己啓発系のスローガンを延々聞きながら家へと向かう。

お隣の大佐宅でも、事件が起きる。
自分の大切なコレクションに触れたと激怒し、息子を殴る。
ついでにリッキーの撮っていたビデオを見て、レスターに買われていると勘違いしてしまう。
彼は最初から「ゲイは憎い」とずっと公言していて、でもそれは実は
彼こそがゲイだったから……なんだよなあ。と思います。
それまでは、「最終的に従順」だった息子はキレて、しかも「男に買われてる」と言い(嘘だけど)
それで多分、プチっと切れちゃったんだろう。

息子に出て行かれただけではなく、「息子までゲイだった」、
しかも目の前でカミングアウトされた……というトリプルショックから、
それで多分、レスターのもとへ向かってしまったのだと思う。
レスターのビデオを見て、ときめいたんじゃないかなあ。
優しく迎え入れてくれた彼に、ついついキッス。
その後の対応がまた優しい。突き放すのではなく、そういうのダメよ俺違うしって、諭す。

リッキーは家出を決意し、ジェーンと共に出て行こうとする。
リッキーが好きじゃないアンジェラは止めるけれど、
ジェーンは「アンジェラよりもリッキーを取る」と宣言。
自分よりも見劣りする誰かを横に置いておきたいだけだろう、なんて言われて
アンジェラはすっかりハートブレイクしちゃうのです。

誰も彼も「こうありたい」「自分像」を追いかけすぎていて、ヘトヘトだったのだなあと
今回は観て思いました。

レスターは「妻の期待に応えて」「嫌な職場でもちゃんと働いて」
キャロリンは「出来る女」「素敵な家庭」「親としてもちゃんとしている」
大佐は「男らしくて」「軍人らしくて」「強い」
アンジェラは「男にモテモテ」「経験豊富」「ワンランク上のオンナ」

まずはレスターが虚像を追うのをやめて、
彼の運命の日に、他の面々も自分の理想が破れたのを知る。
なにもかも嘘、まっかな嘘なんだなあって。イメージカラー、赤だよね
(海外でもまっかな嘘っていうかどうかはしらんけど)

キャロリンは見下していた夫に「弱みを握られた」と思い込む。
実際には、レスターはそんな風に思っていないけれど。
アンジェラは被っていた仮面を落として、レスターに「経験がない」と告白する。
男なんて盛るばかりだと思っていたのかな、その後の紳士的な対応に、思わず涙してしまう。

そして、この日をレスターの最後の一日に変えた大佐は、
きっと「これまで隠し続けてきた自分の弱さを知られてしまった」から
あんなことをしたんだろうなあ。

自分を認めるよりも、隠し続けることを選んだ。そんな風に思いました。

そして変わり果てたレスターを見つけて、思わず彼の服を抱きしめるキャロリンですよ。
こどもたちのショックは当然なんだけれど、キャロリンの様子にはホント、
男女の愛の不思議を観たような気分です。
憎たらしいけれど、やっぱり、一生をともにしようと誓った相手なんだもんね……。みたいな。
あんな最期を迎えるほど、酷い人ではなかった。そういう思いが残っていたわけで、
なんというか、人間の妙がこれほどまでぎっしり詰め込まれている映画もないかなって。

今ならば、アカデミー賞とって当然ですなって言えます。
いい映画だった。

そしてどうでもいいけど、リッキーの顔、ものすごく猛禽類でした。

2015-02-23(Mon)

「ストリートファイター 暗殺拳」

「ストリートファイター 暗殺拳」

カンフー・ハッスルの次にみーよう♪と思っていたら
想像よりも長くて時間がかかってしまった(1日目寝落ち)。
この長さは……って思ったけど、ホントはもっと長いのね?

いわずとしれた格闘ゲームの映画化作品。
ではない、ストリートファイターを愛する余り、
ストリートファイターのちゃんとした映画を本気で作ろうじゃないか!
よし、やろう!
みたいな決意の結果がこれなのだな、と見て思いました。

かつてハリウッドで何回か映画化されたと思うんですよ。
アニメもあったね。アニメはなんかすごかったねw

でもそれは、ハリウッド流の「ウケる感じ」に染め上げられただけで
ストリートファイターの映画ではなかったと思うんです。
だから、真のファンは怒ったよ!
みたいな流れを感じるかなり愛を思わせる一本。

ストリートファイターっていったらやっぱ一番有名なのは「Ⅱ」で
リュウとケンが同門で、世界を飛び回ってファイターたちと戦って、
みたいな印象だと思うんす。
ゼロとか3とか続いていくけれど、基本はやっぱⅡだし、
リュウとケンかなあって。チュンリーやガイルもいるけどまあ、
とりあえず中心に据えたいのはリュウとケンのお二人。

だから、この映画ではリュウとケンが世界へ羽ばたくまでの修業時代と
お師匠様たちの苦悩、暗殺拳にまつわる悲劇や
戦う者の心意気だのなんだのをものっすごく丁寧に描いております。

最初にまずリュウとケンが出てきて、一緒に滝行に行くんですが
このシーンがなんともみずみずしくて、若々しくてくすぐったい。
で、先生がかっこいい。先生の師匠もかっこいい。豪鬼怖い。

私はあんまり詳しくないので、どこまで公式の設定としてあったのかは
正直わかんないんですが、とにかくカプコンの作ったストリートファイターの
リュウとケンへと続く系譜の部分を忠実にやったんだ!感がすごくて
映画の見せ方としては若干弱い部分があるんですが
(アクションだと思っていたのにどっちかっていうとドラマ寄りだけど
 設定がリアル過ぎて重たい。でも必殺技は撃つから、少し不思議なテイストに)
この愛は本物だなって。その部分に撃たれましたよね。って思った。

アクションも相当忠実にやってるなあって。
必殺技の見せ方なんかもすごくこだわってやってるよね。蹴りの形とか、
ああこうだったそうだった、って頷いちゃう感じで。

途中、ちょっとだけ笑ってしまったのは、
お寺の障子(ふすまだろうか)に描かれていた絵の「お前が書いたんだろ」感と
ロックマン2に大はしゃぎのリュウとケン(可愛い)
いつまでも飛んでいく波動拳(UMAの正体だなって思った)
米軍基地でガイルが出ない(そりゃそうだ)
の部分かな。ユーモアも混ぜつつ、真剣に作った真摯な作品でした。

袴はいてるケンが可愛かったなあ。
日本語と英語が切り替わるタイミングが全然わかんなくて
ちょっと戸惑ったけど。
っていうかリュウもケンも絶妙なバイリンガル具合でズルいなってw

ただ、ストリートファイターをまったく知らん人にはわかんないね。

2015-02-21(Sat)

「ノーカントリー」

「ノー・カントリー」

コーエン兄弟監督作品は、「ファーゴ」に続いて2つ目。
いやなんかもう、ズーンとなる映画っすね。

物語としては、狩りをしていた男モスが
死屍累々の凄惨な現場を発見。
おそらくは麻薬の取引で揉めた……と思われる場所から
大金を発見してお持ち帰り。

ただ、一人生き残った男が水を欲しがっていたのを思い出し
深夜届けようとしてしまい、そこから追手がかかって逃げる。

という流れ。
追っ手のひとりがものすごく異常な殺人者で、シガーって名前なんですが
モスとシガーの攻防戦がみどころ、みたいな感じで観ちゃうわけです。

ところが、この映画の主題はそうじゃなくて、
本当にタイトル通り。ノーカントリー「for old man」ってことなのね……。

たとえば黒人が明らかに差別されていた時代、
医療が今ほど発達していなくて、病気やケガでひとが簡単に命を落としていた時代、
女性が男性に従うべきだと考えられていた時代、
戦争に明け暮れていた時代、などなど

残酷で非情で、苦しかった過去はいくらでもあると思うんだけど
それが終わって、たくさんの自由を得て、長く生きられるようになって今、
最早うかうかぬくぬくと生きていられる場所はなくなった、みたいな……。

抜かりがなく、戦争に行っていた過去もあり、出来る男であるモスと
自分のルールを徹底し、それに外れた者は容赦なくすべて消していく殺人鬼であるシガー。
追われる夫を案じ、保安官を頼るモスの妻。
そして重い腰をあげた保安官。

そう、保安官。主役は保安官だった。
なんだかすごくデキそうな感じなんだけども、
モスと妻を救ってくれそうな気がするんだけれども
職務とか、正義感とか、そういったものがすべて失われて
今のこの時代、この国を諦めちゃってる。枯れきってる。

最後、なんだよもう!って思ってしまいそうな終わり方なんだけどね。
でも、これが本当なんだと思う。保安官だから、警察だからって命かけてられないよ。

すごい映画だなって思いながら寝たんだけど、
その後、最初にシガーを一度は逮捕した若い保安官、
あいつすげえなって思いました。おわり。

2015-02-19(Thu)

シルエットロマンス

NHKのBSプレミアムで「The Covers」という番組をやっているのです。

出演するアーティストが、自分の影響を受けたもの、好きな曲をカバーしてうたうっていう。
たまたまゴスペラーズが出演するのを知って、年末に見たんですが
スピッツの「ロビンソン」でねー。すごく良かったんです。

で、年始に「傑作選」をやるって宣伝があって、
それに吉井和哉がでるぞと。慌てて録画したんす。
大好きな吉井さんの歌った曲は「ウォンテッド」。
完全にあなたの曲ね!って言いたくなる程のハマり具合で、
やっぱりちゃんと世界観を確立させている人の歌は良いなと再確認したのでした。

その時出ていた歌手は大体良い感じで、
平原綾香の「たしかなこと」もものすごく良かった。
あと秦基博の「氷の世界」も良かった!
で、大体良かったんだけれども、一番最後に出てきたのが中田裕二さん。
「シルエットロマンス」がものすごく印象に残って、
なんかこう、久しぶりに胸がざわざわしてしまった、
何回も録画したものを見直した挙げ句、買ってしまったカバーアルバム
SONG COMPOSITE

なにがいいって、ものすごくマッチしてるとこだよね。
選んだ曲と、声と、アレンジと全部。素晴らしい。
ちょっとねっとりした感じだなあなんて最初は思っていたんだけど
そこがむしろよいんじゃないですかね、と。

で、名曲揃いなんだけれども、でもやっぱり一番良いのが「シルエットロマンス」だった。
「シクラメンのかほり」とかもハマっているけれども、
なんというかこう、たまらん感じです。
これはしばらく聞き続けるだろうなあって。本当に久しぶりのスマッシュヒット。
普段音楽には全然アンテナ張ってないんだけど、ちょっと反省しました。

昭和歌謡の良さにも最近グラグラしている。
自分が年寄りなんだなあって思うけれども、それはむしろいいことなんじゃないかなって
そんな風に感じられるようになってきました。