忍者ブログ

2015-03-09(Mon)

「ネブラスカ」「キリングゲーム」

あれこれ作業しながら二本観てみた日曜日。

まずは「ネブラスカ」。邦題は「ネブラスカ 二つの心をつなぐ旅」。

公式サイトのタイトルのロゴとか、のほほんとしたイメージだけれども
これは結構ハードな家族再生物語。再生じゃあないかな。
家族受容の物語ではないでしょうか。

先週観た「サイドウェイ」と、去年みた「アバウトシュミット」と同じ監督ということで
ふかく納得。なんというか、甘い理想のエッセンスを入れ過ぎず、心に残る出来。

「100万ドルが当選しました!」といういわゆる典型的な詐欺の手紙が届き
「当選した」「賞金を受け取りに行く」と言ってきかない年老いた父。
妻が止めても息子が止めても、まったく聞き入れず、高速道路に徒歩で入り込んだりと
どうしようもない。
諌めても諦めないというのなら、気が済むようにさせるしかない。
決意した息子は、仕事を休んで父を連れてネブラスカまで出かけていく……。

という話。

これはアルツハイマーであることだなあ、と最初にまず思って辛い。
お父さんは「人の話を信じやすい」「酒癖が良くない」という設定なんだけれども
状態はそれ以上によろしくなくて、映画なのだけれどもため息が出てしまう。

これはしないようにと言ったことをやり、
ものをなくし、無理して怪我して病院送りになりつつ、
途中で一家の故郷に寄る事に。

言っちゃ駄目だよといわれたそばから、父は「100万ドルが当たった」と周囲に漏らす。
古い知人や親せきたちは、大富豪が現れた!と表面上は祝福してくれるが、
もちろん実際には善意だけの人達ではない。
過去に金を貸した、世話をしてやったからとお金を無心するようになって、
息子の「なにも当選はしていないんだ」という言葉を信じない。

最終的に、当選の手紙が強奪されて、それが嘘だったのだと判明する。
それでも行きたがる父を連れて、息子はとうとうネブラスカへ。


認知症になったとしても、そうでなかったとしても、
タガの外れてしまった老人の相手っていうのは大変なものだと思う。
強く思い込んで現実を認められないし、子供と違って行動力があるから。
最後の最後に、息子はひとつ、父の夢を叶えてやる。
父がどうしてそこまでくじにしがみついたのか、理由がわかったから。
この息子が本当に優しくて、素晴らしいなあと思いました。
本当に結びつきのない親子なら、こうは出来ない。
苛立ちと虚しさ、無力感に潰される人の方が多いだろうなあ……と。

時の流れは残酷なものだけれど、でも、人生って捨てたもんじゃない。みたいな。そんな映画。
全編モノクロなんだけれども、映像はすごく美しかった。
画面の向こうに色が見えるモノクロだなあと感じました。良かった。


次は「キリングゲーム」。
登場人物がめっちゃ少ない。ほぼトラボルタとデ・ニーロ。
二人が森でお互いを狩り合うお話。

かつてある紛争地で、現地の兵士と派遣されてきた軍人として出会った二人。
方や森の中で古傷をさすりながら暮らす生活、
一方は十八年も必死になってカタキの行方を捜していた。

偶然を装って出会い、雨の晩に語り合って、翌朝戦いはスタート!
わあデ・ニーロつよい
って感じで進みます。トラボルタの方が若いし情熱的なはずなんだけど
なんだかんだ老練の兵士にはかなわなかったよ的な。

アクションは時々ピリっとするものの、そう長くはない。あとめっちゃ痛そう。
メッセージはしっかり込められている。戦争はよろしくない。
誰もが傷つくだけで終わる。復讐なんてもう忘れようよ……と。
実際にはもうちょっと深いかんじなんだけれども、
そこに家族愛も詰め込んで85分。短い。
エッセンスをぎゅぎゅっと詰め込んだシンプルな造りなんだけど、
ちょっとシンプル過ぎたかもしれない。
もうちょっと遊びがあっても良かったな、なんて思うけどでも
ここまで無駄なく作れるのもすごいなあと。ちゃんと主題伝わるからね。

なんだかんだロバート・デ・ニーロ。老いてなお健在でした。
PR

2015-03-06(Fri)

「サイドウェイ」「フローズンライター」

二日分まとめて。

まずは「サイドウェイ」。
録画した分であらすじとかをすっかり失念しているので
「おっ、R15+表記だぞこいつはまた残酷表現ありか!」
と思ったら違っていました。エロ。

主人公のマイルスは作家志望の国語教師。
2年程前に離婚して、すっかりしょぼくれた冴えないただのワイン好きなんだけれども
親友のジャックが結婚する前にいわゆる「バチェラーパーティ」的な
独身生活最後の1週間をイエイイエイしようぜの旅に付き合う。
ところがジャックときたら、女とヤリまくるぜ!しか頭になくて……。

というお話。
マイルスはとてもこだわりが強くて、見た目は冴えない常識人。
つまり、イケてない。
ジャックの不誠実な振る舞いを快く思っていないのに、強くは止められない。
よく行くワインの名産地で気になる女性マヤがいるものの
こちらにも強くは出られない。
マイルスの人生を豊かにしてやろうと、ジャックはマヤと付き合えとうるさく言う。

結果的に、ジャックはもうすぐ結婚することがバレて、
よろしくやっていたステファニーさんに思い切り殴られる。
マヤといい感じになっていたマイルスも、お蔭でとばっちり。
なによアンタサイテー男なのね!みたいな。

出版エージェントに「いけるかもしれない」と言われていた小説も、
結局は採用されず、マイルスは全部の夢が破れてしまう。

悲しいほどに、マイルスは普通。すごく常識人で、良識もある。
胸の中に溜めていた怒りをちょっぴり発散して(ワインをたるごと飲む)、
ついでにジャックの大ピンチ(浮気相手の家にサイフ忘れたのを
不法侵入で取り返してくれる)を救ったりして。

最後に「とっておきのワイン」を開けて、一人で飲むマイルスに涙が浮かんだ。
特別な日に飲もうと思っていたワインだけれども、
マヤが途中で言った通り、「ワインを開けた日を特別な日」にした。
元妻の未練から卒業したんだなあ、と。

最後、なんとか一筋の光を掴もうと一歩踏み出したところで終わり。
この終わり方は憎いなあ。
マイルスが幸せになれますように、って思わざるを得ない。
なかなか味わい深い一本でした。


そして「フローズンライター」。
締め切り直前の脚本家が、さびれた元精肉工場に籠もって書き上げようとすると
次々事件が起きて……

と見せかけての、すべて「こんなシナリオどうかな」でしたー!みたいな話。
ただ、最後の最後、本当の結末はめっちゃホラー。ヤバ目。

主人公の「構想」を演じるのが主人公なので、
なるほどなにがどーなってるのかよくわからん 現象が起きてなかなかいい感じ。

そしてなにげに、主人公がE・ファーロング。老けた。見ただけだとわからないぞ!
でもやっぱ上手でした。

問題があるとしたら、全体的にすごく地味なところかなあ。
でもまあまあ、良かったです。はい。

2015-03-04(Wed)

「エリジウム」

エリジウム

なぜかマット・デイモンだと思わなかったマット様主演作。
マッチョの若者感がありすぎたからかな。40過ぎにはあんまり見えなかった。ご立派。
ジョディ・フォスターも出演しているよ!


取り残された汚れた地球と、その上にぽっかりと浮かぶ理想郷「エリジウム」。
宇宙にぽっかりと浮かんだそこは、緑が豊かにあふれ、あらゆる病とは無縁の場所。
一方、荒れ果ててしまった地球では、貧しい暮らしを強いられた人々が
エリジウムに憧れながら生きていた……みたいなSF。

ものすごくスタンダードなSFアクション映画だなあって感心してしまった。
物語は王道中の王道。
選ばれた人々しか行けない素敵な場所があって、
取り残された人々はなんとかしてそこへ潜り込みたいと願っていて
主人公の幼馴染の女性は、子供の病気を治したい(白血病)
主人公は上司の横暴にくるしみ、挙句の果てに「あと5日の命」になり、
エリジウムへ行く技術を持ったアンダーグラウンドなヤツらがいて、
エリジウムのお偉いさんはクーデターを考えていて、
宇宙へ行くためにちょっと無茶をして、
そしたらものすごい強敵が出てきて、
戦いながらなんとか目的地へ辿り着き、
そんで最後、これで「全員が救えるよ!」ってところで
それやったら主人公死んでしまいますよ!って事情がわかって……と。

こうして並べてみると、王道てんこ盛りだなあ。
でも、アクションはなかなか良い感じ。
SFの表現もいい感じで、警備用のロボットなんかもかなり好感触。
主人公が半サイボーグ化して強くなる展開も良かったね。
あの世紀末的なサイボーグ手術も良かったね。
幼馴染とのすれちがい、愛情を寄せ合って互いを思い合うラストも良い。
それで、最後は大団円。スッキリ。素晴らしい。
わかりやすくて、見本のようなSFアクション大作。

肩も凝らずにすいすいーっと見られました。
ただちょっぴりグロ表現あるので注意。

2015-03-01(Sun)

「それでも夜は明ける」

「それでも夜は明ける」

みておかなければならないようなが気がしたので。

実話がもとになっているという
とある黒人(自由が保障されている)が拉致され、奴隷として売られた12年間の話。

非常に恐ろしい話でした。

こんなにも露骨な差別があったのを映像にして見せつけられたっていうのと、
これ、現代にもあるんだなっていうのと、
ホント簡単に奴隷なんて言葉を使ったらいけないな……っていう。

主人公のソロモンは、妻と二人の子供と一緒に幸せに暮らしていたのに、
いい仕事があるよ(バイオリンが弾けるので、演奏の仕事)と言われて
行って、飲んで、酔って、目が覚めたらほぼ牢獄に入れられていた。

自分の名を名乗る事を許されず、主張も蜂起もできないまま、
白人の「御主人様」に買われて暮らす日々。
ただ、ソロモンは賢く、プライドのある男だったので、
横柄な態度の白人と幾度となく衝突する。

ソロモンの悲しい十二年間を追っている間に、
理不尽な暴力を見なければならない。

胸にずーんとくる映画は結構みているけれど、
こんなに悲しくなるのは珍しいと思った。

最終的にはブラッド・ピットに救ってもらうんだけど
(なんか彼だけは普通にブラッド・ピット過ぎて戸惑った)
でも「本当に良かったなー!」とはならない。
一緒に虐げられていた「仲間」を、置いて、振り切っていかなければならなかったのでね。


奴隷としてこき使われている間で一番恐ろしかった描写は、
ソロモンが首をくくられたシーン。
本当にギリギリのところで命が繋がるんだけれども、
つま先立ちで必死になって耐えていなければ死んでしまうような状況で放置される。
「御主人様」の判断がなければ余計な真似はしてはいけない、
という決まりがあるんだろうけれども
それに加えて「処刑が当たり前」なんだろうと思わせる
あの周囲のうららかな描写が本当に病的。
こどもたちが遊び、何人も行き過ぎる「仲間」がいて、
遠巻きに見る人間がいくらでもいるのに、
ソロモンに救いの手は伸びて来ない。
昼から、夕方まで。
ご主人様が間に合わなければ、ソロモンの気力が尽きれば命はそこまで。

あとね、女性の受ける理不尽が本当に辛かった。
本当に、こんなに悲しい気分になる映画、なかった。ビックリしちゃう。

創作物で簡単に「性奴隷」とか出されると気分が悪かったけれど
これからは多分もっと気分が悪いと思うw

創作物に怒るのはすごくしょうもないんだけれど、見せつけられてしまったのだから仕方ない。

2015-02-26(Thu)

「アメリカン・ビューティー」

昔映画を毎月二本ずつ観てた時期があって、
映画の日は1000円だーって、新宿の映画館に通っていた。
半年くらいでやめてしまったんだけれども、その頃公開されて
ちゃんと映画館で観た作品の一つが「アメリカン・ビューティー」でした。

「わけがわからん」「なんでアカデミー賞をとれたのか」みたいな感想が多くて
私もまだあの時はよくわからなかったというか。
幸せだと信じていたものが壊れて、諦めの先に幸せがあったのだ、
みたいな感想は持ったと思うんだけど、
確かに主人公のレスターはちょっとキモイんだよね。
娘の同級生に一目ぼれして、そこをきっかけにブチ切れていく。

あれからもう15年ほど経ったので、きっと印象が違うだろうと信じて見てみると
先日みたばかりの「ノー・カントリー」と通じるものがあるな、と思いました。
自分達の信じていた幸せ、理想の形、追い続けていれば必ず勝者になれる、
みたいな幻想が破れて、その先にかつて自分が愛していたものを見つける。
一体なにが本当の幸せなのか、レスターは見つけて、なんというか
超越した人になったんだろうな。あのモノローグの感じからすると。
物質やステータスに縛られるなんてくだらないよ、
「こうあらねばならない」なんてただの思い込みだよ、と語りかけてくる感じ。

息苦しい職場、夫婦関係の破たん、反抗期の娘、幸せな家庭の過剰演出で
追い詰められたレスターは、ある日娘の同級生であるアンジェラに一目ぼれしてしまう。

あらすじは割愛するとして、

短期間で「隣人がやってきて」「父が恋に落ちて」「妻は不倫」「娘も恋をする」と
ものすごく色んなことが起きる。

妻のキャロリンが庭でせっせと育てている赤い薔薇。
あの真っ赤なバラが「アメリカン・ビューティ」。
幸せで優雅な暮らしをしていると周囲にアピールするための薔薇は、
妄想の世界でアンジェラを美しく彩る。

対して、レスター一家を隣から観察し続ける隣家のリッキー。
彼の世界は白い。純粋で、世界の向こう側をみているかのような達観した青年。

アンジェラへの一目ぼれと、パーティで出会ったリッキーの軽快さに
レスターの中でなにかが壊れてしまう。
それまでしていた我慢をやめて、思うままに生きようと決める。

少し筋肉をつけたら素敵だと思うというアンジェラの言葉を信じて鍛え始め
会社は辞める。しかも脅して退職金を巻きあげる。
欲しかった真っ赤な車を買って、妻には見切りをつける。

そして運命の日。

妻のキャロリンは不倫がバレて、相手と別れる羽目になる。
レスターからの冷静な言葉から少しおかしくなって、銃をバッグに潜ませて家へと向かう。
彼女は情けなく自分のいうことを聞かない夫を疎んでいたけれど、
不利な条件で離婚をしたくなかった。
自分を蔑んだような目でみるようになり、それまで築いてきたあらゆる彼女の美学を打ち砕いたから。
決意を固めるために、自己啓発系のスローガンを延々聞きながら家へと向かう。

お隣の大佐宅でも、事件が起きる。
自分の大切なコレクションに触れたと激怒し、息子を殴る。
ついでにリッキーの撮っていたビデオを見て、レスターに買われていると勘違いしてしまう。
彼は最初から「ゲイは憎い」とずっと公言していて、でもそれは実は
彼こそがゲイだったから……なんだよなあ。と思います。
それまでは、「最終的に従順」だった息子はキレて、しかも「男に買われてる」と言い(嘘だけど)
それで多分、プチっと切れちゃったんだろう。

息子に出て行かれただけではなく、「息子までゲイだった」、
しかも目の前でカミングアウトされた……というトリプルショックから、
それで多分、レスターのもとへ向かってしまったのだと思う。
レスターのビデオを見て、ときめいたんじゃないかなあ。
優しく迎え入れてくれた彼に、ついついキッス。
その後の対応がまた優しい。突き放すのではなく、そういうのダメよ俺違うしって、諭す。

リッキーは家出を決意し、ジェーンと共に出て行こうとする。
リッキーが好きじゃないアンジェラは止めるけれど、
ジェーンは「アンジェラよりもリッキーを取る」と宣言。
自分よりも見劣りする誰かを横に置いておきたいだけだろう、なんて言われて
アンジェラはすっかりハートブレイクしちゃうのです。

誰も彼も「こうありたい」「自分像」を追いかけすぎていて、ヘトヘトだったのだなあと
今回は観て思いました。

レスターは「妻の期待に応えて」「嫌な職場でもちゃんと働いて」
キャロリンは「出来る女」「素敵な家庭」「親としてもちゃんとしている」
大佐は「男らしくて」「軍人らしくて」「強い」
アンジェラは「男にモテモテ」「経験豊富」「ワンランク上のオンナ」

まずはレスターが虚像を追うのをやめて、
彼の運命の日に、他の面々も自分の理想が破れたのを知る。
なにもかも嘘、まっかな嘘なんだなあって。イメージカラー、赤だよね
(海外でもまっかな嘘っていうかどうかはしらんけど)

キャロリンは見下していた夫に「弱みを握られた」と思い込む。
実際には、レスターはそんな風に思っていないけれど。
アンジェラは被っていた仮面を落として、レスターに「経験がない」と告白する。
男なんて盛るばかりだと思っていたのかな、その後の紳士的な対応に、思わず涙してしまう。

そして、この日をレスターの最後の一日に変えた大佐は、
きっと「これまで隠し続けてきた自分の弱さを知られてしまった」から
あんなことをしたんだろうなあ。

自分を認めるよりも、隠し続けることを選んだ。そんな風に思いました。

そして変わり果てたレスターを見つけて、思わず彼の服を抱きしめるキャロリンですよ。
こどもたちのショックは当然なんだけれど、キャロリンの様子にはホント、
男女の愛の不思議を観たような気分です。
憎たらしいけれど、やっぱり、一生をともにしようと誓った相手なんだもんね……。みたいな。
あんな最期を迎えるほど、酷い人ではなかった。そういう思いが残っていたわけで、
なんというか、人間の妙がこれほどまでぎっしり詰め込まれている映画もないかなって。

今ならば、アカデミー賞とって当然ですなって言えます。
いい映画だった。

そしてどうでもいいけど、リッキーの顔、ものすごく猛禽類でした。