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2015-11-26(Thu)

「潜水服は蝶の夢を見る」

潜水服は蝶の夢を見る

ELLEの編集長であったジャン=ドミニク・ボビーの書いた自伝を映画化したもの。
公式サイトには「愛の感動作」って書いてあるけど、
愛の感動作ではないと思います。これは。
もちろん、ジャン=ドーを救ったのは愛なんですけども、
本当に彼を救ったのは間違いなく、彼自身の強さだったと思うので。


目覚めると、視界が歪んで体が動かず、声も出せない。
突然の病で突如体の自由を失ったものの、意識ははっきりしている。
動かせるのは唯一、左目だけ。
そんな絶望に沈んだところから、なんとか希望を見出して自伝を書き上げるまで、
ジャン=ドミニクのたどった過酷な運命について描かれています。

意志ははっきり残っているのに体がまったく動かない、
ロックトインシンドローム(閉じ込め症候群)に陥ってしまったという悲劇。
人は自分の命とどう向き合い、折り合いをつけていくのか、
経緯が丁寧に描かれていたなあと思います。

治らない病になってしまったのとは違う、
体の一部を失ってしまったわけでもない。
充実した人生を歩んできて、仕事も地位もあり、家族もあったのに、
突然肉体だけを失ってしまう。
自分から命を絶てもせず、周囲から暖かい言葉ばかりを投げられ、
自暴自棄になることすら許されない状況って、凄まじいものがあると思います。

こうなると、ゆっくりと立ち直るしかないわけで。

たくさんあきらめて、たくさん思い直して、たくさん心で舌打ちをして、
最後には自分の才能を諦めず、瞬きだけで言葉を綴っていくっていう。

あらすじとか細かいことは書きたくないです。
もし興味がわいたなら、実際に見た方がよいとおもいますので。

最近障碍児についていろいろと意見が飛び交っておりましたが、
出生前診断については当事者の判断にゆだねるとして、
人間ってなんだかんだ不完全で、ちょっとしたことで体が動かなくなったり、
機能が失われたりするんですよね。
病気だけではなく、ケガ、事故、どんなに気を付けていても、誰かの油断とか天災で、
どうにもならないことってあると思うんです。

私の家族にも、病気で突然体の自由を失った人間がおります。
毎日車いすを押していると、好奇の目に晒されたり、やたらと憐れまれたり、
思わぬ親切を受けたり、本当にいろいろ起きるんですよね。
当事者ではありませんが、そばにいる人間としてどうしても考えさせられます。

健康に生まれて、健康に生きていても、明日どうなっているかわからない。
いつ誰の世話になるかわからないんだから、
障碍者を受け入れるっていうのは、
将来の自分を守ることにつながるんじゃないかなと、思います。

周囲にある、煩わしいと思える存在に、ほんの少しでもいいから
理解を持とうと思って生きていくべきなんじゃないすかね……。

最近はなんでも便利になって、即席、速攻の世の中ですけど、
面倒なもの、自分とは違うものを全部排除していったら、
世界はもっと殺伐とするんじゃないでしょうか。

なんてことまで考えてしまいました。
井上雄彦先生の「リアル」でも、人生の途中で障碍を負った人たちがよく描かれています。

見てよかったとしみじみ思える映画でした。
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2015-11-20(Fri)

「ゾンビ・リミット」「デビルズ・ノット」

「ゾンビ・リミット」

制作はスペイン/カナダになってましたが、言語は英語。
タイトルにゾンビってはっきり入ってますが、原題は「Reterned」。

世界には人をゾンビ化してしまうウイルスがあって、
人類は何度かの危機を経験し、今では感染しても発症を抑える薬を開発しており、
ウイルスに感染してしまったものの、適切な治療で発症を免れている人が
タイトルの通り「リターンド」と呼ばれています。

リターンドはごく普通の人間と同じように生き、生活をしているのですが、
発症を抑える薬が少なくなっていて
(発症しゾンビになった人間の髄液からしか採れないという鬼畜仕様)
処分しろ!と声高に叫ぶ市民も結構大勢いるような世界観。

主人公は過去に父親が発症、母親は父に食べられてしまい、
父親を銃で撃ち殺したという経歴の持ち主。
リターンド専門の医師、研究家であり、恋人までリターンドだったりします。
そんなケイトが、リターンドが襲われる事件が連発し、抑制薬が失われる中、
恋人を救うために必死になる話なんです。

ゾンビはちょっと出てくるんですが、そんなには姿を見せません。
ゾンビ映画と呼ぶのはちょっと憚られるかな。

リターンドはごく普通の人間なんですが、薬がきれれば即発症してしまうし、
その血に触れれば感染してしまう危険な存在です。ゆえに反対派がいるのも仕方ない。
抑制薬に必要なタンパク質は、発症してしまった人からしか採れない。
今は薬で抑制されているので、発症しない→薬のもとがとれない
という悪循環もあって、代替品の開発が進んでいるけどなかなか完成しない。

リターンドが激しく追い立てられる中、ケイトは必死で恋人を守るのですが、
その努力は最終的に実らないんですよね。ラストは本当にかわいそうで、
最後の最後の豹変もやむなし……と思いました。

ゾンビをゾンビとしてではなく、ひとつの病として描くっていうのは新しいかな。
リターンドと人間であんなにイチャイチャするのは大丈夫なのかな?とか
子供が出来たけどそれってどういう感じで生まれるのかな?とか
疑問は色々。全体的にうすぐらーくて静かな雰囲気で、ムードが良かったなーと。思いました。


そして「デビルズ・ノット

アメリカで実際に起きた、子供三人が惨殺された事件。
その犯人を追及した裁判が非常に雑で、冤罪だったのではないかと言われているんですよ
っていうのを映画化した作品。

実際に犯人とされた3人の若者は2011年に条件付きで釈放されたという。
非常に怪しい人物について最後、言及されていますがこれは大丈夫なのかな?

あらすじだけに惹かれてみてみたら、デイン・デハーン様が出てました。
影のある若者やらせたら天下一品ですね。犯人っぽすぎてびっくりですよ。

映画は裁判がいかに不当に行われたかを描いたもので、
あまりの不公平感にイライラしてしまうっていうよくあるタイプです。
こういう裁判が、いかに田舎であっても本当にあったかと思うとクラクラしてしまう。

この映画よりも前に、同じように裁判の問題点について訴える作品があって、
アメリカでは非常にメジャーなのに、すぐに再審に結びつかなかったのは不思議。

自分の大切なこどもがあんな風に惨たらしく殺されて、
証拠らしい証拠が出て来ない茶番のような裁判でその辺の若者が犯人に仕立て上げられて
被害者の家族はどれほど辛かったでしょうね。
とにかくあいつらが怪しい、犯人だ、これでいいんだって人もいたのだという風に
描かれておりますし、真犯人については非常に近い人物が浮上しているみたいで
なんだかもう、やりきれない、本当に悪魔の仕業だなと思います。はい。

事件そのものも恐ろしいし、
こういう無茶苦茶な冤罪が存在するのも恐ろしいし。

で、レストランにやってきた男は一体なんだったの。どうなったの?
デハーン様がやったクリスはなんだったの、などなど
疑問は残ってしまう。事実をそのまま入れたんでしょうけども、
見せ方としては若干うまくない部分もあったかな。

とはいえ、人間の恐ろしさ、弱さが存分に描かれていたとは思います。
こんな事件は世界からなくなればいい。

2015-11-19(Thu)

買い忘れ

6巻を買った時に思っていたんです。
あれ、5巻を読んだかな?って。

で、6巻を読んでからわかりました。
5巻読んでねえって。




新黒沢最強伝説です。

カイジやアカギで有名な福本先生作品。
これの前のシリーズがものすごく好きで好きで、
きれいに終わったのにまたやるの?って思ったんですけどね。

前シリーズである「最強伝説黒沢」は、昔職場の方に貸してもらって知りました。
これ面白いよーって。チームの皆さんが面白いっていうので借りると、
その時は3巻までしか出てなかったんですけど、異常に心を打たれてしまって。
頼れるアニキデビューに失敗し、後輩に怖がられ、最後は側溝にハマって
出たくないとわがままを言う。
黒沢は人望が欲しくて、自分に自信がなくて、人生を変えたくて、
でもそんなに持ってる人ではなくて。

知らない方は一度「最強伝説黒沢」の3巻までとりあえず読んでくれないかなと思いますが、
側溝(いわゆるドブ)にハマるシーンにやたらと共感してしまって、
黒沢の気持ちがわかるって言ったら貸してくれた方には「駄目でしょ」って言われてしまいました。

その後、本当にみっともないやり方ながらも、黒沢は何度も立ち上がるんです。
挫けていじけて、嫌になって、苛立って、それでも最後は立つんです。
自分の魂のために、決して誇りを失わないようにって、立ち上がるんですよ。

そういうところが好きなので、新シリーズも読んでいます。
ものすごいスロースタートで、どうなることやらと思ったんですが、
ここにきてもう、すごい。響く。これが響く人とともだちになりたい。

ヒーローなんかいないんだよ、って今回の背表紙には書いてあります。
その通り。ヒーローなんていない。
みんなの望みをすべて叶えてくれる存在なんてこの世にはいないし、
いてはいけないのだと思います。

5巻のメインテーマは、増長と許容、みたいな感じかな。
つけあがるという心理の在り方が描かれているし、
人と他人のものさしは違うのだから、っていうのがね。

他人が自分とあまりにも違う場合、苛立ったり呆れたりしてしまうのでしょうが、
それは心にしまって、寛容な精神ですべてに臨めたらいいですよね。

黒沢は哲学書です。
カイジも面白いけど、やっぱり黒沢が一番の傑作だと思います。はい。

2015-11-18(Wed)

「マシンガン・ツアー ~リトアニア強奪避航~」

「マシンガン・ツアー ~リトアニア強奪避航~」

あらすじに惹かれてみてみました。
制作はイギリス・リトアニアとあるけど、これリトアニア的にはOKなの?

主人公はイギリス人の四人組。
近衛兵のマイケルは誕生日を迎え、恋人にプロポーズしようと張り切っているのに
アホな友人3人組がどうしても来いとやかましい。
5分だけだぞ、と付き合うが、車で待っていてもちっとも帰ってこないので
様子を見に行くと銃声が。友人たちはマフィアから大金と指輪を奪っていたのだ!

ド素人のやり方ではすぐに足がついてしまって、
まずは公共の場で働いているマイケルが補足されてしまう。
恋人からは鬼電、逃げようとした先では友人たちが高飛びを目論んでいて
それに巻き込まれてしまうのだが、火山活動のせいで飛行機はみんな欠航、
もしくは近くの空港に降りてしまい、目をさますとそこはリトアニア。

言葉は通じないし、美人局だの強盗だの、ついでにイギリスからの追っ手もやってきて
四人の逃避行は大混乱、みたいな話。

物語自体はただドタバタするだけ、東欧の自虐的なネタ満載で
見ているこっちは苦笑い。
まー、くだらない映画です。いい感じに不謹慎の針を振り切っていて。
最後の最後、みんなどうなっちゃったのかなーって心配になりますけど、
暴力・エロ、バランスがちょうどいい。やり過ぎない不謹慎って、なかなか難しいと思うので。
皆さんバンバン撃たれるけど結構元気の安心仕様。

オバカ映画好きにはおすすめしたいかな。
ただ、リトアニアには絶対行かないぞって気分になるけど。

2015-11-17(Tue)

「ミュータント・タートルズ」

ミュータント・タートルズ

2014年版。亀の忍者のやつ。
むかーし見たなあっていう懐かしい気持ちで。

マイケル・ベイ制作だけど、監督ではありませんでした。
だから爆発もほとんどしないし、人が串刺しになることもないという。

宇宙から来た謎の物質を投与されて進化した亀が
こっそり忍者の修業をしてて、ニューヨークを跋扈する悪の集団を倒す。
シンプル極まりない物語。

テレビレポーターのエイプリルはスクープを探していて、
偶然倉庫を襲う「フット団」の姿を目撃する。
それを謎の黒い影が襲撃。フット団は退散し、倉庫は守られた。
黒い影は謎のマークを残し、とても人間とは思えない動きをするのだが……。

みたいな導入で、主人公エイプリルの勤め先の上司がウーピー・ゴールドバーグ。
久しぶりに見かけたのでビックリしちゃった。もう還暦なんすね。

次に起きたのは地下鉄の襲撃事件で、
みんなが逃げる中エイプリルは記者魂を炸裂させて現場へ潜入。
ヘンテコな軍団に捕獲されるも、期待通り例の集団が現れ、
フット団は撃退され、去っていく正義の使者を追うと、巨大な亀人間が屋上でフィーバーしていた。

タートルズのみんなはなんというか、原作に忠実な姿で正直不気味。
でも明るく楽しく元気よく、しかも昔エイプリルの父が研究をし、
エイプリル自身も世話をしていた亀たちの進化した姿だと知ってびっくり仰天。

で、みんなで悪いやつをやっつけた、という話でした。
タートルズの動きが面白い。CG丸出しで今時感が薄いんだけど、
とにかく移動のシーンが見ていて楽しい。下水道と、最後の雪道がいい感じ。

気になるのが、敵の一人、謎の日本人? シュレッダー。
なんで時々日本語吹き替えになるのかな。
突然英語に戻るので、なんだかフフっと笑ってしまう。

日本の文化をどこから仕入れたのか問いかけたくなるトンデモジャパン風味は
味わい深くていい感じです。
センセイ!って呼ぶのも良い。

日本のフルアーマーをメタルアレンジしたスーツもなかなかいい感じ。強いし。
悪役のスケールが大きいんだか小さいんだかさっぱりわかんなくても、
それはそれで、みたいな。
主人公の同僚のお兄さんも、中途半端にオッサンだしイケてないけどそれもよし。

気楽な気分で見るのにピッタリ。
最後のジェットコースター風の演出も面白くて良かった。