マリオン・コティヤール主演、2014年の
フランス・イタリア・ベルギー合同制作作品。
マリオン・コティヤールが好きなんだよね。
陰のある美人で、雰囲気がいいです。
この映画の物語はとてもシンプルで、凝ったものではありません。
主人公であるサンドラが病気を患い、回復して復職しようとしたら
突然解雇を申し入れられてしまう。
職場で、サンドラの復職をするか、従業員にボーナスを出すか
どっちかを選べっていう投票がなされたからなんですが、
サンドラの同僚が伝えにくるんです。
主任が圧力をかけて、ボーナスを選べって言われてるんだと。
サンドラが患っていたのはうつ病でして、
これでまた落ち込んで、薬をいっぱい飲んじゃうんですよね。
だけど夫がいて、子供がいて、サンドラが働かないと
家賃にも困ってしまうような経済状態だし、
大体一方的に解雇するなんておかしいよと、
夫は戦うよう促してきます。
まずは会社に行って社長に訴え、
じゃあもう一度投票しなおそうという話に。
過半数が復職に賛成してくれたら戻れるけど、
そのためにはみんな、ボーナスをあきらめてもらわねばならないっていう。
月曜に行われる投票のために、サンドラは週末、同僚たちの家を回ります。
それだけの話なんだけど、重たくってねえー。
働き方について欧米に学べ、なんてよく言いますけど
解雇なんかはあちらの方が厳しいよねって思っちゃう。
自分の復職とボーナス、みんなが求めているものがなにか、
サンドラはよくわかっていて、
自分同様みんなも苦しいはずだと思いながら、
ひとりひとりの家をまわっていきます。
彼女に味方してくれる人もいれば、
もうしわけないと言いつつ、イヤだという気持ちを隠そうともしない
そんな人もいます。
もちろん、ボーナスがいいよね……とサンドラは相手を責めません。
それでもどうか、復職させてほしい。
相手に良心、同情、仲間意識に訴えていくんですけど
これ実際にやれと言われたら辛いだろうなあって。
最後は割といい結果に終わるんですけど、
サンドラはスッキリした顔で去っていきます。
失っていた自信を取り戻し、やれるだけやったという気持ちが
彼女を強くしたんだろうなって。
人生という厳しい戦いの連続の中でどう生きていくべきか。
そんなテーマを感じる映画でした。見てよかった。
もう一本
「凶悪」
2013年、山田孝之主演の邦画。
実話を基にしたというこの世の地獄のような話です。
もとになった話はこちら(Amazonへリンク)
主演は山田孝之ですが、こちらは事件の取材をする記者の役。
この映画で輝いているのは、
「凶悪」というタイトルのもとになった二人の人物を演じている
ピエール瀧と、リリー・フランキーでしょうね。
山田くんもすごくいいですけども、
ピエール瀧とリリー・フランキーがもうヤバい。
話の始まりは、新潮45に届いた一通の手紙で、
死刑の判決を出されながらただいま上告中の服役囚、
ヤクザの組長であった須藤から送られてきたもの。
まだ警察に話していない3件の余罪について話すから、
自分と組んでいた「先生」を追い詰めるために
記事にしてもらえないか、と持ち掛けられます。
人を殺し、騙し、金を巻き上げるという同じ罪を犯したのに
自分だけが死刑を申し渡され、
先生はのうのうと外の世界で暮らしているのは許せない。
そういう理由で、事件について話すから
取材をして世間に公表してほしいと。
須藤は非常に良心にかけた男で、暴力的なんです。
気に入った人間にはすごく目をかけるんだけど
そうじゃない相手には容赦がない。すぐに殺しちゃう。
先生は悪知恵の働く男で、
身寄りがなかったり、疎んじられている老人に目をつけ
彼らの持っている財産を奪い取ろうと考えている。
先生の方は実行力がない。
須藤は考えが足りないけど、なんでもできる。
二人が出会うと恐ろしい化学反応が起きて、
邪魔な人間は全員ひどい目にあって葬り去られていくわけです。
二人が起こした事件の残虐さが存分に描かれていて、
もう目をそむけたくなるような内容です。
この二人の演技が非常に怖い。
ピエール瀧は迫力があり、リリー・フランキーは不気味な恐ろしさで
暴力を思う存分楽しんでる感がすごい。
何件もの事件について告白され、
記者である主人公藤井は取りつかれたように調査していきます。
家庭も顧みず、良心のかけらもない行いについて
裏付けをとり、真実に迫り、最後は記事にして発表するわけです。
それで「先生」も逮捕され、裁かれる……わけなんですが。
二人の行いの恐ろしさ、良心をもたない人間の無慈悲さなんかとともに
そういった暗い穴を覗き込んでいるうちに
うっかりひきつけられたり、取り込まれたりしそうになる
人の心の危うさについても描かれているのかなと思います。
世の中には本当に凶悪な事件、人間が存在しますが
些細なところから始まって、ブレーキがきかずに
どんどんエスカレートしていってしまうっていう
そういう心のありようがわかるというかね。
牧師に出会って改心したという言葉ですら白々しく感じられる
憎しみの深さと、その強烈さに圧倒され、心がゆがむ感じ。
世の中で一番不思議なのはやっぱり、人の心なんじゃないかなと
思いました。はい。月並みだけど。
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