有名な映画ですが、今更観ました。
リドリー・スコット監督作品は
「アメリカン・ギャングスター」「マッチスティックマン」
ときて3作目かな。
他は多分観ていないけれど、丁寧で整然とした作品揃いな印象。
監督のセンスってすごく出るのだなあと感心しきりです。
束縛の強い夫に不満を抱きつつも言えない主婦テルマと、
少しばかり気の強いルイーズの二人が
バカンスに出掛けて、トラブルに巻き込まれ、転落していく話。
続いていく旅の中で、二人はみるみるうちに転落していく。
二人は少しずつなにもかもを振り切って行って、
最後には本当の自由を得る。そういう話ですが、重い!
爽快!なんていってらんない内容。
映画だから、お話だから、って突き放してみれば確かに爽快なだけだろうけど。
冒頭の、テルマの夫のダリルの不機嫌そうな様子。
酒場で出会った最低男のハーラン。
爽やかな出会いかと思いきや、ヒッチハイカーのJ.D。
お下劣極まりないトラックの運転手。
ルイーズの恋人であるジミーはいい奴だったけど、
なんだかんだ怒りのあまり物に当たる男だったりもする。
男と女は、人間としては同じだけど、性的な役割は絶対に違うわけで、
真の平等などは訪れないと思っている(努力はあってしかるべきだけども)。
そういう話。
強い女性もいるし、時代や国の違いもあるんだけれども、
基本的には男性の方が力が強く、
襲われた時には女性の方がはるかに弱い。
妊娠してしまうのも女性だけ。
人間がそういう風に出来ているから仕方ない部分もあるけれども、
その土台があって、女性が犠牲になるという構図がある。
(男性だって犠牲になるっていうのはわかってるけどあえてこう書く)
散々抑えつけられてきたテルマと、
彼女を救ったルイーズ。
混乱の果てに逃亡を選び、
また男に騙されて、安易な、強盗という道へ突き進んで戻る場所を失う。
二人の中に溢れる解放感は気持ちのいいものだけれど、
犯罪の上にしか成り立たなかったのはとても悲しい。
タンカーが爆発したとこは思わず笑ったけれど、
あのシーンで露わになっている二人の怒りこそがすべてだと思う。
ハル刑事はいいやつだったのにな。
ああいう男がいかに少ないか、
あんな風に思いやってくれる存在がいるなんて思いもよらない、
っていう描写が、容赦なくてとても良かった。
見て良かった映画だった。
理性や優しさに溢れた男性はたくさんいるんだけどね。
自分の人生の上に、不幸な被害が訪れていないことに感謝しつつ。
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