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2017-11-16(Thu)

映画見た記録

欧州編

「ミモザの島に消えた母」

2015年フランスの映画。
母が姿を消したことに心を痛め続けたまま大人になった姉と弟が
あらためて消息を追って真実を見つける話。これはしんどい。
子供の立場なら、知りたくないだろうなあ……って思いました。


「ハイ・ライズ」

2015年イギリスの映画。
昔のSF映画を原題で実写化するとこうなるかも、
という共感できなさがあふれる作品。

最新式のタワーマンションの高層に、選ばれし者が住み、
低層にはそこそこの住人が住み始める。
高層の住人は放蕩の限りを尽くし、低層の住人がとばっちりと受ける。
結果、反乱がおきて王国が崩壊してしまうという話。
小さな国の興亡と考えてみればしっくりくるかも。
警察来なさいよ、って思うもんね。

最後は破壊と乱交の限りが尽くされ、
大体「ソーセージ・パーティ」と同じ感じになる。
もしかしたらほぼ一緒かも。



「ミス・シェパードをお手本に」

2015年イギリスの映画。
ロンドンのカムデン通りに一人の老婆が住み着いている。
彼女は古い車を住処にしており、住人の誰かの家の前に停車して暮らしている。
通りの住人はこの「ミス・シェパード」を疎ましく思いつつも、
邪見にすることなく暮らしている。
そこに劇作家のベネットが引っ越してきて、謎の老婆と仲良くなっていくんだけど、という話。

こういう独自の哲学を貫く人っているよなあ、という話なのかな。
世間体とか、周囲とうまくやろうとか、そういうことの前に、
自分がどうしたいか、なにを一番大事にするのかを貫くという
謎の「ミス・シェパード」にベネットは人間的な魅力を覚えたんだと思います。
最後のシーンはかなり見ごたえがある。
ミス・シェパードはお手本にはできない人なんだけど、
ベネットはたぶん、自分を偽らずに生きる、という気持ちを彼女のおかげで手に入れたのかなって。
画面からにおいが漂ってきそうで、演技が見事。マギー・スミスはすごい。




「ラン・スルー・ザ・ナイト」

2016年のロシア映画。
タイトルはちょっと失敗かな。あんまり夜を駆け抜けない。
恋人の画家が殺され、なぜか自分も追われることになったサーシャ。
なぜ彼は殺されたのか、どうして自分まで追われるのか。
友人にかくまってもらいながら謎を探っていく、という話。

30分くらいでたぶんこういう話なんだろうな、っていう見当がつく。
黒幕についても、1時間でわかると思う。
とても素直な脚本で、みどころはサーシャの美貌がメインかもしれない。
恋人同士の時間の回想は、とにかくモザイクがでかい。

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2017-10-20(Fri)

「孤独のススメ」

孤独のススメ

2013年のオランダ映画。

オランダっていうとどうにもこうにもクレイジーな印象(映画に関して)
だったんですけど、今回はそうじゃありませんでした。

妻を亡くし、息子も独立して一人暮らしのフレッドが主人公。
彼はいつでも時刻通り、まじめ、勤勉、敬虔なクリスチャンとして
自らを完璧に律した暮らしをしている。
ところがそんな彼の暮らしに突然、ひとりの男が現れる。
謎の男なんですよ。最初は名前もわからない。
なんとなくしゃべれるような、意思が通じるような謎の男の名はテオ(あとからわかる)。

なにもできず、なにも持たないテオを家に招き入れ、
なんとか「ちゃんと暮らせるように」しようとするフレッド。
きっちりとした暮らしを、そのせいで少しずつ破っていかなければならない。
いままで通りを少しずつ崩されていくうちに、
周囲からは誤解されたり、思わぬテオの正体がわかっていって、
その結果フレッドの人生は大きく動くことにーー。

というお話。
タイトルがあってなさすぎて、終わってから本当にピンと来なくなるという。
どちらかというと、孤独からの解放、なんですけどね。
原題は「マッターホルン」でして、彼らの最後に行き着く場所です。
とはいえ、マッターホルンだと登山映画かと思われちゃうかもしれませんけども……。



以前にみたフランスの映画「八日目」に似てるかなあ。
あくせく働く男が、ダウン症の青年とつきあっていくうちに
人生ってもう少し自由でいいんじゃないか、と目覚める話でした。

フレッドの人生は、ずっとずっと勤勉だったのだと思います。
息子と別れることになった理由はあとから明かされますし、
あれほど愛していたであろう妻との仲は結構意外なものだったりするんですけどね。

また、テオをなぜ受け入れ、救おうとしたのか。
映画の感想かくサイトなんかみると、わからんという意見がいっぱいありましたが
あれってきっと、本当に敬虔なクリスチャンだったからじゃないかと思います。

貧しく清いものこそが天国に近い存在だから、
彼らをもてなし、一番上等な服を与えなさい、なんて書いてあった気がします。
フレッドの通う教会の祭司よりもきっと、フレッドはまっすぐだったのでしょう。

ところが、テオはフレッドが思っていたよりも複雑な人生の持ち主でした。
彼を思う優しい妻もいる。家だってある。大切にしているヤギもいる。

事故で脳にダメージを負ったせいで、それまでの人生を送れなくなってしまっただけ。
フラフラと彷徨い続ける彼がなぜか、口やかましく、時には怒鳴ったり、
勢いあまって手を出してしまったりしたフレッドを慕い、頼ってくれて。
それでフレッドは、自分を縛っていた規律を、本当の意味で破り始めるんです。

そしてようやく、息子に会いに行く。
キリスト教は認めていないんですよね、同性愛を。
本当に聖書の教えを守るとなると、そうなっちゃうんです。
だけど教会に、聖書の教えばかりを守ろうとして、
大切な家族を理解できないってどうなんだろうって
目が開いたのだろうなあ、と私は思いました。
彼の息子は、父に気が付いたときに驚いた顔をします。
驚き、戸惑いつつも、ステージで歌うんですけど、美しい歌声なんですよ。
フレッドが本当はずっと聞きたかったんだろうなあと思うと
なんだか涙が出てしまうクライマックスでした。


自分を形作ってきた価値観や教えを
破ったり捨てたりするのは容易なことではないでしょう。
長い時間守り続けてきたものほど、大きすぎて大変なはず。

それでも、時には、本当に大切なものがなんなのか、
フラットな気持ちで考えられたら、幸せがやってくるかもね……

なんてメッセージを受け取ったような気がします。
こんな内容じゃないけど、とか言われたらどうしようかな。笑っちゃうよね。


少しわかりにくいかもしれませんが、
宗教を大切に生きている人の「勇気」の物語だと思ってみると、
胸にじーんとくるものがあるのではないでしょうか。

オランダ映画はなかなか、色味も独特で好きですねえ。
途中で余興を依頼してきた夫婦、ものすごく背が高くて、
あの辺のひとたちホントにデカいなって感心したりもできますよ。

2017-09-24(Sun)

「シング・ストリート」

シング・ストリート

2016年、アイルランド・イギリス・アメリカ制作の映画。
いやーもう、ひさびさに心に超ヒットしましたよ。
満足度は100%で間違いないです。


時代は1985年のダブリン。
不況に見舞われ、父は失業、母も仕事が減り、夫婦の仲は破綻寸前。
兄は大学中退、姉は勉強中、末っ子の主人公コナーは
生活費確保のために公立の高校へ転校を余儀なくされてしまう。

新しい学校は「シングストリート高校」。
一歩入るなり不穏な空気が渦巻くところで、
いじめっこにからまれ、校長から靴の色が校則違反だと言われ靴下で歩く羽目に。
最悪な日々の中、また暴れん坊にからまれて、
うんざりのコナーに声がかかる。
なんだか抜け目のなさそうなダーレンは「コンサルタント」で、
なんかあったら俺が話をつけてやるよ、なんて話に。
そしていつもいつも学校に着くと、向かいの家の前にミステリアスな美少女がいる。
自称モデルの少女ラフィーナの美しさにすっかりノックアウトされたコナーは
彼女の気を引くために「バンドのMV撮影をするから出てよ」と声をかける。
そこから本当にバンドを組んで、音楽を始めて、MVを作っていくんだけど……

というお話。
高校生という半端な身分で、生活がギュウギュウに苦しいという
人生で一番「苦しいことを苦しい」と感じてしまう世代が頑張る話でした。
コナーはダーレンの人脈をフル活用して、
楽器ならなんでもできるエイモンと出会う。
ダーレンをマネージャーに据えて、エイモンと一緒にバンドメンバーを探す。
学校で唯一の黒人だからとンギグをドラムに、
メンバー募集の張り紙のひどいいたずら書きに負けずに応募してきてくれた
ギャリーとラリーも加え、5人組のバンドが出来上がり。
最初はあこがれのデュラン・デュランのコピーをしていたものの、
録音したテープを聞いた音楽オタクの兄、ブレンダンは「コピーはやめろ」。
他人の曲で女が口説けるか、と叱咤され、コナーはエイモンと一緒に曲作りを始める。


この、兄貴がいいんです。ブレンダンは夢破れて、家でただただレコードを聴く日々。
弟の中に光を見たのか、逐一アドバイスをしてくれるという立ち位置でね。
そして見た目はもっさい冴えないエイモンが、かなりの万能キャラクター。
いつ何時に行こうと、一緒に曲つくりをしてくれるんです。
そしてとうとう一曲目ができて、本当にラフィーナを呼んでMVを作る。
素人の高校生がひどい格好で集合していたのに、
ラフィーナは少し呆れつつも、撮影につきあってくれます。
見た目をよくしなきゃとメンバーにもメイクをして、
彼らの作った音楽の良さに真摯に目を向けて、
コナーたちの作品に大きな花を添えてくれるのです。


その後も、次々に現れるその時代のスターたちの影響を受けながら、
音楽活動を充実させていくコナーたち。
学校にも逆らい、家庭はますます冷え切っていくけれど、
逆にそのせいなのかもしれないけれど、音楽の道をひたむきに走っていきます。

コナーも、ラフィーナも、そして兄貴のブレンダンも、
みんな自分の夢や人生について考え、悩んでいるんですけどね。
もちろん、うまくいかないこともある。
キラキラしたかけらはいくつも拾えるけれど、
それで人生がすべて輝き始めるはずもない。
長い長いこれからの道を、自分はどんな風に歩んでいけばいいのか、
その願いが叶うのか……
若いうちは未来が見えなさ過ぎて、苦しいものだよなあって。
そんな中でコナーは、悲しみの時があっても、それでも前に進んでいまして。


劇中のクライマックスともいえる、ラフィーナのいないMV撮影の日。
あのシーンはとても華やかなんだけど、
その分切なくてなんかしらないけどめっちゃめちゃ泣いてしまいました。
兄貴のギターがうなり、校長が飛び回る。
あんな世界が本当にあったらいいのに、現実ってそうじゃないんだよね……。


だけど最後には、コナーの放つ強い光にみんなが救われた、みたいな感じで
とても希望に満ちた、力強い終わり方をします。
女の子の気を引くために始めたバンド活動だけど、
音楽への思いも本物だったから、だからあんな風に強くなったのだなあって。

コナーの歌がとても素敵なんです。歌詞もとてもいい。
時代の輝きを取り入れながら、すごくいい音楽がずっと流れていて
とにかく見ていて気持ち良すぎる名作でした。






2017-05-31(Wed)

「ロブスター」

ロブスター

ギリシャの監督さんの作品。英語の作品です。
あらすじが結構衝撃的なので見たんですけど、
そのまんま衝撃的な作品でした。
ブラックなコメディですけど、
最終的には人間とか愛ってなんなんだろうって考えちゃう系の内容。


舞台はヨーロッパのどこか(多分)。
主人公は妻に捨てられて、とあるホテルに連れてこられます。
近いのか遠いのか、とにかく地球の未来のいずれかに存在するかもしれないこの世界では
独身でいることが罪になり、一人になった者はこのホテルに連れてこられます。
そこで45日以内にパートナーを見つけられなかったら動物にされてしまう。

この動物、何になりたいか選ばせてもらえるのが唯一の良心かな。
それ以外はもう、なんというか、味のない乾いたなにかを無理やり口に入れられているような
荒涼としたたまらん世界なんですよ。

主人公のデヴィッドは妻に捨てられて傷心の中ホテルにやってくるのですが、
連れている犬は実のお兄さん。
ホテルでは与えられたものだけを利用、身に着けてよく、
私物の持ち込みは厳禁。

期限内にパートナーを見つけなきゃならないので、
毎日毎日いかに独身が悪いか、パートナーのいる人生が幸福なのか見せつけられ、
ついでにマスターベーションは禁止、相手のいる幸せを刺激するためなのか、
毎朝メイドさんに股間を刺激され、反応したところで放置されるという
おっそろしい拷問を強いられたりします。
ちなみにセルフでしたのがバレたら、アッツアツのトースターに手を突っ込まれて焼かれ、
更には、滞在期間を延ばすためのボーナスとして、
独身のまま彷徨う誰かを捕まえたら一人につき一日、動物にされるのを先延ばしにできる
そんなゲームが用意されているという恐ろしさ。

デヴィッドは自分の心を偽ってとある女性とパートナーになろうとするも、
ただこの状況から逃れたいという妥協の上にやっぱり愛は存在しなくって
うまくいかなくなり森へ逃げ出します。

森の中にははぐれ独身者が身を寄せ合って暮らし、
追われつつも自由を謳歌しているんですが、
ここはここで、絶対に独身でいることを強いられるという極端な世界。

追われ、隠れて暮らしていくうちに、ある女性に惹かれてしまうデヴィッド。
だけどその愛も、とんでもない横やりが入ってズバッズバに引き裂かれてしまう。
そして最後に、愛に対する覚悟を試されるんですけどもね。


タイトルのロブスターは、もしも動物にされるならなにがいいか
デヴィッドが希望した生き物なんです。
その理由を思い返すと、そうかあ……ってしみじみしちゃうんですけどね。

こんな世界ヤだよ!っていうのがまずひとつ。
人間の感情や愛の不自由さについて考えたりっていうのがもうひとつ。
ほかにもきっとモヤモヤしたものが心に残って、
でも案外イヤじゃないという不思議な作品でした。
世界に無理やり恋愛させられるって、恐ろしいもんです。
極限状態に男女がいればこうなりますけれども、
所詮インスタントな愛なんてこんなもんすよ、
っていう悲しい笑いがあるんだけど、
個人的にはもっともっと湿気の多い愛を信じたい、みたいなこころもち。


にしても、レア・セドゥいいですね。
独身の森のリーダー役でしたが、なんかすごい力のある女優さんで。
この間見た「たかが世界の終わり」では、
田舎から出られない20歳そこそこの妹なんてキャラだったのに
ロブスターではヤバイオーラ満載で。素晴らしいです。

2017-02-06(Mon)

「DRAGON」

「DRAGON」

2015年のロシア映画。
公式サイトとかが見当たらないので、
どの作品かわかるようにAMAZONの商品ページへリンクを貼っておきます。

WOWOWでやってたのでみてみたんですが、あたりでした。

あるところに長い間悪いドラゴンに苦しめられてきた国があって、
若い娘をいけにえに捧げていたんです。
真っ白い衣装をまとった娘たちは小舟に乗せられ、海へ流され
村の人々は彼女たちを送る歌を歌うんです。
するとドラゴンがやってきて娘たちをさらって去っていく。

ところがある時、恋人を奪われたことに怒った男が立ち上がり、
ドラゴンを倒すんです。
村には平和が訪れ、いけにえの儀式だけが伝統として残ります。

時は流れて、
ドラゴンを倒した勇者の孫と、領主の娘の結婚が決まったところから物語はスタート。
ドラゴン殺しの勇者の血縁だからと、結婚式のために
いけにえの儀式を模したセレモニーを行うんです。
花嫁のミラはちょっと鼻っ柱の強いお嬢さんで、
愛はないけど英雄の孫だしいいよね!くらいで結婚を決め、
まだ未婚の姉ちゃんを小ばかにする始末。
ドラゴンがいたら面白かったのになーなんて軽口をたたくようなお年頃なんですが
彼女が船に乗り、いけにえを捧げる歌を歌い始めたらさあ大変。
滅びたはずのドラゴンがバッサバッサと飛んできて、
ミラを小舟ごとさらっていってしまうんです。

ドラゴンの棲む島は絶海の孤島で、
隠された航路を知っていなければたどり着けない場所。
ミラは島の深い穴に落ち、そこで名のない謎の青年と出会います。
この青年が実はドラゴンなんですが、
今の意識を失って完全にドラゴンになってしまうことに抗っているという設定。
細マッチョの美青年と、きれいな少女であるところのミラは
お互いを知り合い、少しずつ心を通わせていき……

というラブロマンスでした。
これがねえ、いいんですよ。
ドラゴンの描写もいいし、設定もいい。
最初は世間も愛もしらなかった娘が成長し、
素敵な女性になっていくさまもいいし、
二人の愛がもたらす奇跡も超いい感じで、
とにかくこういう異種族間恋愛とか、悲恋好きはみたらいいぞ!と
おすすめしたいところであります。

実際みた方がいいので、細かいネタバレはしないでおきますが
いやー、本当、ドラゴン青年男前でした。
声がココリコの田中さんみたいでしたけども、
ミラの美しさ、最後のお姉さん、お父さんとのシーンも良くてね。
っていうか恋敵であるところのイーゴリも男前で
眼福映画でもありました。ロシアすごい。