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2017-06-12(Mon)

「ロンドン・ロード ある殺人に関する証言」

「ロンドン・ロード ある殺人に関する証言」

2015年のイギリス映画。ミュージカル(ダンスなし)です。

イプスウィッチという町で起きた連続殺人事件。
売春婦がつぎつぎと、短期間のうちに5人も殺されて、
街のイメージはすっかりガタ落ちに。
犯人は逮捕され、ちゃんと真犯人であることがわかるんだけど、
解決とは別に街の印象をちゃんとよくしようと
街の人たちが団結してステキなロンドン・ロードを作ろうね

って頑張るというお話。
実話をもとにしたミュージカル、舞台になったものを映画化、
ということでして、
歌詞、セリフになっているのは実際に事件があって
取材を受けたひとびとが語ったものがもとになっているというリアリティ。
だけどそれだけになっちゃっているかな。

事件が起きて、町がくらーくなっちゃって、警察が来て、
容疑者が起訴され、裁判が続く中、
街の人たちは戸惑い、落ち込み、このままではイカンと立ち上がる。
淡々とそう描写されるだけで、盛り上がりがないんですよね。
ドキュメンタリーを歌ってみました
みたいな話になっちゃってて、ちょっと残念でした。
現実って確かにミュージカルみたいなドラマティックな展開ないんですけど
だったら歌わなければよかったのでは……くらいの半端さでした。
話そのものはいいんですけどね。
あと、トム・ハーディがオマケすぎて。
セリフが意味深すぎて、最後までハラハラしたんだけどなにもないという。

ミュージカル好きとしては残念かなあ。
もう一声欲しかったです。はい。
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2017-06-06(Tue)

「レイチェルの結婚」

「レイチェルの結婚」

2008年の作品。アン・ハサウェイ主演。
いや、できるよねアン・ハサウェイって思わされる出来でした。

主人公の女の子の名前はキムで、どうやらなんらかの施設から出てきたところ。
担当医やら同じ施設にいたであろう男の子と会話を交わして、
迎えに来てくれたお父さんと一緒に帰宅。
結婚式を目前に控えた家の中はとても賑やかで、
結婚するのはレイチェル、キムのお姉さんなんです。

学問に勤しみごくごくマトモな常識人であるところのお姉さんは
キムをやさしく迎え入れてくれるけれど、
施設帰りなだけあってなにかあるんでしょう、
姉のお友達はちょっぴり棘のある態度。
ドレスを試着している場所でタバコを吸い、
消せと言われてもなかなか消さない、
というか消さずにトイレでスパスパしちゃうあたり、
この主人公曲者なんだろな……という気配が充満し始める。

姉の結婚にあわせて施設を出たわけではなくて、
施設を出たタイミングがちょうど結婚式直前だったのがわかり始める。
キムを助けたいと願う父と、
結婚式の準備に追われる姉、
家を出て、離れたところで暮らしている母。
一家とその周辺の人たちとの交流の合間に、
キムの抱えている事情と、そして、家族を引き裂く大きなヒビとなった
過去の大きな大きな事件がわかっていくんですけどね。


こういう家族っているだろうなあっていうリアルさが充満する中、
なんだか不思議なカメラワークなんですよ。

キムは一生懸命ダメな自分と向き合おうとしているんですが、
どうしてもね、弱い子でね……。
過去についたどうでもいいウソがバレてしまって、
自分がかわいそう、自分を認めて、自分はがんばってる!と
自分自分自分、な態度が顰蹙を買っちゃう。
姉はなんとか争いにならないよう頑張るけれど、でもどうしても無理。
父はなんとか娘を認めようと思うけど、バランスが取れない。
責められてやるせなくなったキムは母のもとへ向かうけれど、
そこでとうとう、自分の犯した罪と向かいあうことになるんです。
向かいあうだけで、乗り越えられなくて、そして自暴自棄になり。

弱くてかわいそうな子を、常識のある人は責められないんですよね。
家族という血でできた鎖で結ばれていると、
突き放せないし、完全な無関係にはなれない。

で、なんだかんだで揉めた結果、お互いの思いが理解しあえて
良かったようなそうでもなかったような……

と思ってたら、不思議なカメラワークの謎が最後にわかってヒーンってなるという。
よくある人間同士の摩擦ドラマだっただけじゃない、
とはいえ、ただただおっかないだけでもなくて、
あれはきっと「好きだったから」なんだよねって最後にちょっと思ってエンド。

アン・ハサウェイが全然かわいくないんですよ。
すんごい擦れたダメ娘を好演しています。
あれ、アンだよね……?って最初になるという。
なかなか面白い映画でございました。

2017-05-31(Wed)

「ロブスター」

ロブスター

ギリシャの監督さんの作品。英語の作品です。
あらすじが結構衝撃的なので見たんですけど、
そのまんま衝撃的な作品でした。
ブラックなコメディですけど、
最終的には人間とか愛ってなんなんだろうって考えちゃう系の内容。


舞台はヨーロッパのどこか(多分)。
主人公は妻に捨てられて、とあるホテルに連れてこられます。
近いのか遠いのか、とにかく地球の未来のいずれかに存在するかもしれないこの世界では
独身でいることが罪になり、一人になった者はこのホテルに連れてこられます。
そこで45日以内にパートナーを見つけられなかったら動物にされてしまう。

この動物、何になりたいか選ばせてもらえるのが唯一の良心かな。
それ以外はもう、なんというか、味のない乾いたなにかを無理やり口に入れられているような
荒涼としたたまらん世界なんですよ。

主人公のデヴィッドは妻に捨てられて傷心の中ホテルにやってくるのですが、
連れている犬は実のお兄さん。
ホテルでは与えられたものだけを利用、身に着けてよく、
私物の持ち込みは厳禁。

期限内にパートナーを見つけなきゃならないので、
毎日毎日いかに独身が悪いか、パートナーのいる人生が幸福なのか見せつけられ、
ついでにマスターベーションは禁止、相手のいる幸せを刺激するためなのか、
毎朝メイドさんに股間を刺激され、反応したところで放置されるという
おっそろしい拷問を強いられたりします。
ちなみにセルフでしたのがバレたら、アッツアツのトースターに手を突っ込まれて焼かれ、
更には、滞在期間を延ばすためのボーナスとして、
独身のまま彷徨う誰かを捕まえたら一人につき一日、動物にされるのを先延ばしにできる
そんなゲームが用意されているという恐ろしさ。

デヴィッドは自分の心を偽ってとある女性とパートナーになろうとするも、
ただこの状況から逃れたいという妥協の上にやっぱり愛は存在しなくって
うまくいかなくなり森へ逃げ出します。

森の中にははぐれ独身者が身を寄せ合って暮らし、
追われつつも自由を謳歌しているんですが、
ここはここで、絶対に独身でいることを強いられるという極端な世界。

追われ、隠れて暮らしていくうちに、ある女性に惹かれてしまうデヴィッド。
だけどその愛も、とんでもない横やりが入ってズバッズバに引き裂かれてしまう。
そして最後に、愛に対する覚悟を試されるんですけどもね。


タイトルのロブスターは、もしも動物にされるならなにがいいか
デヴィッドが希望した生き物なんです。
その理由を思い返すと、そうかあ……ってしみじみしちゃうんですけどね。

こんな世界ヤだよ!っていうのがまずひとつ。
人間の感情や愛の不自由さについて考えたりっていうのがもうひとつ。
ほかにもきっとモヤモヤしたものが心に残って、
でも案外イヤじゃないという不思議な作品でした。
世界に無理やり恋愛させられるって、恐ろしいもんです。
極限状態に男女がいればこうなりますけれども、
所詮インスタントな愛なんてこんなもんすよ、
っていう悲しい笑いがあるんだけど、
個人的にはもっともっと湿気の多い愛を信じたい、みたいなこころもち。


にしても、レア・セドゥいいですね。
独身の森のリーダー役でしたが、なんかすごい力のある女優さんで。
この間見た「たかが世界の終わり」では、
田舎から出られない20歳そこそこの妹なんてキャラだったのに
ロブスターではヤバイオーラ満載で。素晴らしいです。

2017-05-13(Sat)

「グッド・ネイバー」

「グッド・ネイバー」

2016年の作品。
事の顛末、監視カメラ映像、法廷の3か所で物語が進んでいく作り。
主人公はイーサンとショーン、2人の高校生。
かつて行われたある実験を下敷きに、自分たちもとある試みをしているところです。

向かいの家に住んでいる偏屈ジジイにイタズラを仕掛け
その様子を6週間観察し続ける。
ポルターガイストのような現象を起こし続けていって、
幽霊を信じるようになるかどうか……試したいのです。

向かいに住む頑固じいさんは通行人を口汚く罵ったりするし、
妻を毒殺したなんて噂もある人物。
なので少々のお仕置きくらいいいじゃない?
ってノリで、まずは留守中に家中に監視カメラを仕掛ける。
監視はところどころに穴があるものの、じいさんの日常は丸裸に。

ところが、ドアを荒々しく開閉しても、
暖房が勝手に切れて家の中が寒くなっても、
窓がいきなり割れても、じいさんはなんだか平常心のまま。

監視を続ける二人は、じいさんがたびたび入り浸る地下室が気になってくるのですが、
そこまで入り込むのは不可能で……。


というお話。

最初に二人の口から説明されるとある実験に関する見解、
「人は見たいものを見る」
これそのまんまのお話でした。

仕掛ける側の二人組のうち、イーサンは爺さんにちょっとした恨みがあるんです。
それが物語が進むうちに明かされていく。
私怨があっての実験だったとわかって、ショーンは怒り、打ち切ろうとするも
イーサンはどうしても「自分の見たい現実」を捨てられず、
思い切った行動に出てしまって、
途中でわかりますが、最終的には死者が出る、という悲しい結末を迎えます。
それが一体誰なのか。最後にわかって、しかも理由がハッキリとして
なんてこった……!
ってなって終わり。

ものすごく皮肉な展開なんですよね。
幽霊を信じさせようなんて、ちゃんちゃらおかしい目的だったね、とか
最悪の結末ではあったけれど、爺さんにとってはひょっとしたらよかったのかも……とか、

でもとにかく、個人の勝手な思い込み、勝手な印象で他人を判断してはならないよ
って話なんだと思います。はい。
どんなに明るくても心に暗いものを抱えていたり、
どんなに陰気でも、いざという時にはとても頼りになる賢者だったりなんて
たくさんある話なんですもんね。

人は見たいものを見る

思い込みこそが現実の一番の敵なのかもしれません。




あとは「ソムニア 悪夢の少年」と「ディアボロス/悪魔の扉」を細切れで。
「ソムニア」はルームで名演技を披露していた少年が
夢みたものを現実のものにしてしまう力を持っているものの、
彼のママを食べてしまった悪霊「キャンカーマン」まで呼び寄せてしまうというもの。
キャンカーマンは結構おっかない風貌なんですけど、
その正体や現れた理由は結構悲しいもので
ホラーなんだけど静かでドリーミィな感じでした。

「ディアボロス」はまたキアヌ主演で、敏腕弁護士役。
無敗のままやり手街道を突っ走るために、明らかに悪い依頼人を守るため
セクハラされた女学生にかなりの嫌がらせをかましてしまう。
そんな彼を超一流の弁護士事務所がスカウトして、
お金ザックザクの超リッチ生活が始まったものの
妻は精神に異常をきたすし、
所長が実はお父さんだったり、正体が悪魔だったりでもう大変。

アル・パチーノが悪魔、っていうのはものすごくハマってて
なるほど感が素晴らしかった。
正義の道を行きたかったはずの若きやり手弁護士役がキアヌにもあってて
でもそれよりなにより奥さん役のシャーリーズ・セロンがかわいいのなんの。
あんなかわいい美女に甘えられるのサイコーじゃないのって思った分
彼女のたどる運命がかわいそうでならないっていう。

シャーリーズ・セロン最強伝説がまた1ページ刻まれたなあって思いました。
全体的には、ちょっと長かったかなあって感じ。

どれもなかなか良かったです。

2017-05-09(Tue)

「スラムドッグ$ミリオネア」

「スラムドッグ$ミリオネア」

2008年のイギリス映画。
アカデミー賞をいくつかとっていたなあ、って印象しかないまま見たら
ものすごくドラマチックな作品でした。

舞台はインド。主人公はムンバイで育った青年のジャマール。
彼はインド版の「クイズミリオネア」に出場し、
最後の一問まで正解し続けたところで警察に捕まってしまった……
というところからスタート。

なぜクイズ番組に出場したのか、
学のない貧しい育ちの彼がどうしてクイズに正解し続けたのか?
最初に出される四択の答えが
見ているうちにだんだんわかっていく
とても面白い作りだったと思います。


ジャマールの人生はハッピーとは縁遠いもので、
母を失い、兄に裏切られ、恋する少女も同じような不幸にからめとられてしまった
波乱に満ちたものでした。

だけど、大切な少女であるところのラティカを一途に思い、
力強く生き抜いていくうちに、
それまでにたどってきた運命の糸が力強い縄になって
彼の人生を空へ引き上げる力になった……

みたいな感じなのかなあ。
クイズが進んでいくたびに、ジャマールは人生を振り返っていきます。
あの日、あの時に起きた、あの出来事。
辛いことばかりだけれど、乗り越え、耐え抜いたジャマールには
大切な経験、知識になって助けになるわけです。

インドと日本じゃ全然違いますけどね、いろんなことが。
だけどやっぱり、つらいとか、苦しい経験も
人間を育てる大事な糧だよなあって思います。

最後はとても幸せでお茶目な終わり方で
顔がふわーっと笑ってしまいました。
いやー、いい映画だった。

ただ、ミリオネアのシステムを知らないと楽しめないかも。
日本での放送もずいぶん前に終わっちゃったので
ご存じない方は仕組みくらいは調べてから見るのがよさそう。