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2016-06-28(Tue)

「パレードへようこそ」

パレードへようこそ

2014年、イギリスの映画。原題は「Pride」ですね。
邦題はとっても柔らかくなっております。

舞台は1984年。イギリスで炭鉱夫たちがストライキを起こした時の物語。
炭鉱が閉鎖されようとしていて、仕事を奪うなって立ち上がるんですよ。

だけど、ストライキを起こすも成果はなかなかでない。
政府が強いんです。強い姿勢で臨む!とサッチャー首相はこぶしを振り上げている。

そこで立ち上がったのが、ロンドンで暮らすゲイやレズビアンたち。
自分たちの権利を訴えるためのパレードをした日に、
参加者の一人であるマークは、炭鉱で働く人たちのために募金活動ができないかと考える。
サッチャー首相と警官は自分たちにとっても敵で、
敵の敵は味方なんじゃない?みたいな発想で。

ところがやっぱり、偏見があるんですよ。
団体名も炭鉱夫を支援するゲイとレズビアンの会、みたいなダイレクトなものにしちゃったので
応援させてくださいと連絡しても電話をすぐに切られちゃうんです。

最初は炭鉱夫たちの組合に連絡していたんだけど、
けんもほろろの対応によっしゃと奮起。
それなら直接どこかの炭鉱町に電話してみようと。
すると受話器の先で対応したのは親切な老婦人で、
炭鉱町ディライスから代表の男がやってくる。
まさかこんな団体だったなんて……と驚く代表のダイだったけど、
(団体名をちゃんと聞き取れておらず、LGSMという略称だけ伝わっていたので)
偏見を持っていない彼はゲイバーでの歓待にもひるまず、
支援に感謝しますと挨拶してくれるんです。

そこから始まる、ディライスとロンドンのレズビアンとゲイたちの交流物語なんですが
もちろん、一筋縄ではいかなくて……。

というお話。

今よりももっともっと理解のなかった、
不況、それから宗教感や、エイズの流行の始まりなどなど
1984年はゲイのみなさんにとって厳しい時代だったんですよね。


ディライスのみなさんは最初こそイロモノを見る目でLGSMのメンバーを見ますが
交流を重ねていくうちに偏見は取れて、
それどころか彼らは信じられないくらいの規模の支援をしてくれるんです。
心ない攻撃に負けず、明るく前向きに突き進んで、
最後にはお互いにはっきりと打ち解けます。

もちろん、問題はいっぱいあるんですよ。
かつての恋人がエイズにかかってしまって、不安に陥る者もいるし、
既にエイズに罹患していて今後が心配な者もいる、
家族にゲイなんだと打ち明けられず、バレて家に監禁されちゃう子もいるし、
乱暴なやつらに殴られて入院させられたりとか、

正直な自分で生きていくことは難しいんだなって思うんだけど
それでも彼らはみんな、困難でもまっすぐに進んでいくんです。

仲間がいて、理解してくれる人がいると知るのは人生をどれだけ豊かにするだろう。
そんな思いが伝わってくるんです。

ところがやっぱり、異端を許せない人というのはどこにでもいて、
強い悪意を持ってLGSMを追い払ってしまうんです。
お前らなんか及びじゃない、出ていけ。
せっかくはぐくんできた信頼を部外者が勝手に打ち破って、
小さな町と小さな自由を求める団体は離れ離れになっちゃうんです。

それでもね。
大切な友人ができて、自分の生きる道をはっきりと知って、
愛する人の隣を歩んでいこうって決めて、
それから、受けた大きな恩に、最後はちゃんと報いようって思うんです、みんな。

次の年のゲイ・パレードには信じられないくらいたくさんの人が参加するんです。
支援に心から感謝した炭鉱夫たちがやってきて、
彼らの権利を認めようって一緒になって歩いて、それでおわり。

これ、実話なんですよね。
人のために生きるっていうのは、なかなか難しいことだと思います。
相手がどのくらい喜んでくれるかわからないし、
自分を犠牲にしてでもって、そう思えるもんじゃないですから。

でも彼らは見知らぬ誰かのために走り回って、
それに救われた人が大勢いたんです。
とてもいい話で、でも全然説教くさくなくて、悲観的でもなくて、さわやかでね。

イギリスはこういう映画よく作りますね。
リトル・ダンサーも同じ時代の話。
フル・モンティとかも不況に苦しむ中ではじける話ですね。
でも一番思い出したのはキンキー・ブーツだな。

なかなかいい映画でございました。
ゲイのみなさんもレズビアンのみなさんもステキで。
ついつい深夜まで見てしまって寝不足になりましたが、良かったです。
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2016-06-26(Sun)

逆転裁判6

逆転裁判6をクリアしたので感想をメモ。

逆転裁判は1~3でひとつのシリーズであり、
4は人気あるしもっと作ろうとして失敗して、
5でそれを挽回しようとしたんだと感じてました。

4で壊してしまったなるほど君を5で復活させて、
で、4からうまく使えていなかったおどろき君を
6でもっときれいに昇華させようとしているんだなって
そういう風に感じてしまう出来なのはとりあえず頂けなかったw

キャラクターはみんなよくできていてそれぞれに魅力はあるものの
シリーズを重ねてきた宿命を負わされており、
初期から出ている人物よりも濃く、ありえない設定をされてます。
仕方ないんだよね、キャラ被りをしないように、
インパクト出さなきゃっていう縛りがあるから
今更普通のキャラなんて出せないとは思うんです。

で、結論からいうと、よくできたゲームなんですよね。
逆転裁判はシステムがしっかりしているからやっててストレスが少ないし、
新しく出てきた霊媒系の仕掛けも面白いと思った。


おどろき君関連の総まとめを今回はしているんだけど、
ちょっと壮大にしすぎたんじゃないかというのが気になる点その1。
彼は声が大きくて一見元気系なのに、内心は結構ネガティブで
ちょっと虚ろな印象なんだよね。元気が長続きしなさそう。
なるほど君との差をつけたのかなと不思議だったんだけど、
今回彼のバックボーンが全部出てきて、これについては納得。
とはいえ、あまりにも不幸すぎやしないかと気になる。
4で見せたみぬきちゃんとの関わりが希薄で、これもすごく気になったんだけど
どうやらエンディングを見る限り次作へ引っ張るつもりらしい。

2人の関係性がスッキリしないので、みぬきちゃんが薄情に思えてしまうのも悲しい。
というかみぬきちゃんは飄々とし過ぎていて、好きになるポイントが見た目しかないような気が。

真宵ちゃんは満を持しての登場だったけど、大人になりすぎててちょっと違う感じ。
これなら一途になるほど君一筋のはみちゃんの方がいいんじゃないかと思える。

とはいえ、みんな見た目も良くてキャラはそれぞれ立ってる。
ナユタ検事もいいし、レイファは文句なくかわいい。

で、6を完全なおどろき君物語にしたせいで、希月ちゃんが完全に持て余されてしまった。
第4話の「逆転寄席」は正直なんなのかなって引きました。
ほかのエピソードにちっとも絡んでないし、導入もすげえヘタで。
ユガミ検事とココちゃんを出したかっただけ感がありすぎるし、
カウンセリングは唐突だし、それに推理部分がお粗末すぎる。
逆転シリーズはある部分で飛躍した推理をすることで真犯人にいきつくというスタイルなのはわかっているんだけど、それにしてもこの4話に関しては乱暴すぎてただのいいがかりに見える。
ただのいいがかりをそのままあっさり真実にしちゃってるように感じて、
えーって感じ。プレイしてて「えー?」って言っちゃった。

そもそも被告人のことを知らない、事前の準備が本当にゼロっていうのは
シリーズ通して初めてだったんじゃないかな。
こんなのダメでしょとしか思えなくて、プレイしてて悲しい気分になるっていう。

この超推理ぶりはほかのエピソードもそう。5話以外は結構トビすぎ。

あとはナユタ検事がいつでもどこでも法廷にいすぎて違和感。
いくら架空の裁判ショーとはいえ、タイトすぎる。
そういう部分を上手に見せる方法がなかったのかなあ。
巧さんなら上手にやれたんじゃないかなあ……って思っちゃうんです。

逆転裁判は1~3が良すぎた、って話なのかな。
あの頃のキャラクターが続投しているせいで遊んじゃうんだけど
それが悔しいと思えるあたりに悲しみがございます。

よくできてるんですよ。水準以上っていうのは確実なんだけど。
だけどちょっと、ものすごく頑丈な土台の上に、
ちっちゃいちっちゃい家を建てたみたいな物足りなさがある。
6をプレイするには5をやってないとワケわかんないし、
5をやるなら4を、4を遊ぶなら1~3やってないと難しいと思うんだけど
そうなると確実に物足りなさを覚えるというジレンマ。

もうちょっと頑張ってほしいな!
もうちょっと納得いく感じにしてほしいの。
人気のキャラクター・シリーズにあぐらをかいてないつくりにしてほしい。

正直、大逆転の2の方が期待できると思ってます。
あっちの方が断然ワクワクしたし遊んでて楽しかった。
6は、どういう理由でこんな話になったのかという部分は気になったけど
オチまで無駄に引っ張られているなあと感じたので。

それでも7が出たら遊んじゃうと思うけどね……。
文句ばっかり書いてるけど、こまかいこと気にしない人なら間違いなく楽しいと思うんだな。

回顧厨ってやつですかね。自分でもちょっぴり悲しいな。

2016-06-25(Sat)

「キャノンレース」

「キャノンレース」

2014年 ノルウェーの作品。

予告編の映像はこちら

たまたま出会った走り屋がお互いの車を並ばせるところからスタート。
主人公のロイは臨月の妻を乗せているというのに悪友TTの挑発に乗って
レースをスタートさせるも、向かいから走って来たトラックを避けるのに失敗。
車はひっくり返り、二人は無事だけど奥さんは破水。
赤ちゃんはちゃんと生まれたものの、こんな危ないヤツはお断り、と
妻の両親から離婚を突き付けられてしまう。

以降12年、離婚2回、スピード違反は120回。
いまだに愛車マスタングで走り続けるロイのもとに、
娘ニーナが預けられる。
離婚した元妻が育てているものの、旅行には連れていけないらしい。
(どうやら新しい夫との間に生まれた子は連れていくようで複雑そう)

家族旅行よりも車の方がいいとニーナはいうものの
新しい彼女とよろしくやりたいし、レースもあるし、
更にはまたTTに勝負を挑まれて、ロイは北限の岬、
ノールカップまで2200㎞の旅にでることに。
置いてきたはずのニーナはロイの親友たちの車に乗り込んでいて、
そこから父と娘の二人旅兼走り屋の意地をかけたレースが始まる!

というお話。面白かったです。
これが北欧流かって感じの笑いも新鮮だし結構スパイシーで。

キャノンレースという邦題と、出てくる車をみると
激しいレースなのかなと思うんですが、
どっちかというと美しく走る車たちを眺めることもできる
車好きのための環境ビデオになりそうな映像なんですよ。
背景になっている北欧の景色もダイナミックで美しいし、
車の美しさ、デザインの良さ、制動の様子なんかが
かなりいい感じに撮られてる気がするんですよね。
自分的にはあんまり興味のないことだったんですが
車って面白い、ハマるのも理解できると思える映画でした。

クラッシュもあるし、親子旅ならではのハプニングもある。
ダイナミックなアクションも随時入ってくるし、
最後はとんでもないハプニングで締め。

走り屋たちを取り締まるのに命をかけてる警察官も間に入ってきて
無駄のないピリっとした出来の楽しい90分でしたよ。

景色の雰囲気は日本では出せなさそうなものでして、
道のワイルドさも含めてとても良かったです。
北欧の景色みたい人にも勧めたいかも。

2016-06-21(Tue)

「アリスのままで」

アリスのままで

2014年の作品。
主演はジュリアン・ムーアで、これでアカデミー主演女優賞をとりました。
大学の教授として働く50歳。夫は医療関係者で、こどもは3人。
長女は結婚して子供を授かろうとしており、長男はまだ学生、次女は演劇の道を目指している。
そんな彼女は最近体調が少し悪い。
よく知った道で迷い、言葉が出てこない、約束を忘れる……。

医者にかかってよく調べてもらうと、若年性のアルツハイマーであることがわかる。
主人公のアリスがゆっくりと自分を失っていく中で、
家族はそれぞれ、妻であり母である彼女と向き合っていく。
そういうお話です。

大切な妻、お母さんを家族の愛でもって支えていこう、なんて単純な話じゃないですよね。
もっと年を取っていればきっと諦めがついたであろう病なんです。
邦画でも、「明日の記憶」という作品がありまして、
渡辺謙が主演を務めました。
働き盛りの男性が突然アルツハイマーを患い、
毎日毎日少しずつできることがなくなっていくお話でした。


病でもちろん弱っていってしまうんだけど、
単純に命が削られる病気ではないんです。
簡単にできるはずのことができなくなり、
家族だっていうのに名前を忘れてしまう。
寒いか暑いかもわからず、さっき聞いたばかりのこともわからない。
なのに遠い過去の記憶は鮮明で、妄想にもとりつかれ、
時間に構わず気になったことへまっしぐら。

なにも知らない人ならば、この人は一体なんなのか、と思ってしまうであろう病状です。
アリスもハッキリとそう認識しており、ガンだったら良かった、
ガンだったら恥ずかしくなかったのに、なんて言い出すほどなんです。

しかもこのアルツハイマーは「家族性」というタイプのもので、
子供にも50%の確率で遺伝し、受け継いでいれば100%発症してしまうというもの。
アリスは子供たちに説明した後、強く自分を責めます。

大学の教授としての職を失い(学生たちからの最低の評価を受けてやめることになる)
生きがいであった学問の道が閉ざされ、アリスは重大な決意をします。
ところがこれも、病のせいでうまくいかない。
このシーンはものすごく見ていて辛かった。
迫真の演技でね。ああ、なんてことなんだ……と愕然とします。

アリスが少しずつ自分を失い、からっぽになっていく様と
家族の向き合い方の変化も描かれていきます。

夫は当初病気を認められず、でも頑張って向き合おうと考え、
かいがいしく世話をしますが、結局最後は逃げてしまうという流れ。
まだまだキャリアを積んでいける年齢だから、
妻の介護だけにすべてを割くわけにはいかなかった。わかる。わかるけど、切ない。

長女のアナは、自分の家庭があり、こどもが欲しい。
不妊治療もしているんだけど、そこに母の病を告げられ、
しかも自分にも遺伝していると知ってしまうんです。
たぶん、将来自分もこうなってしまうんだとすごく身構えていて、
母には優しくしたいけど、病人として扱う気持ちが強い。
自分の家族を守り、子供を育てていきたいのに、
未来の姿をまざまざと見せつけられて辛くて、
心が引き裂かれそうなんじゃないかと思いました。
彼女の態度は少し悲しいものなんだけど、うちに秘めた葛藤を思えば仕方ない。


長男のトムは、末っ子なのかな、まだ学生でふわっとしていて、
いい部分の母しか見ていない感じがしました。
たまにしか出てこないのは、男の子ゆえかな……。
アリスが認知症患者のための集まりでスピーチをするんですが、
その時に同行していて、お母さんの言葉はとても良かった。
あの言葉を信じたい。まだ大丈夫、いい状態のままでいられる……って
夢を見ているような印象でね。頼りないんです。
この子は遺伝子検査で陰性が出たので、姉よりも楽観的になれる立場でして、
多分、このあとも積極的に介護をすることはないだろうなと感じます。


そして次女のリディア。
母からは演劇の道を反対され、もっといい未来をとくどくど言われており
それをとても疎ましく思っています。すごく正直で、自分がある。
ところが母の病がわかってからは、一番寄り添ってくれる存在になります。
リディアは姉と違って遺伝子検査を受けておらず、
未来のことはわからないまま伏せた状態にしていて
姉とのキャラクターの対比がよくできているなと思いました。
たくさん母親とぶつかってきたから、
病気になってからのたくさんの変化に気づき、
母の「素」を真っ正面から見つめて、受け入れようと決めたのかなって。
そんな風に見えました。


認知症は悲しい病だと思います。
記憶や思考、思想はその人を形づくる大切な要素なのに、
それが失われ、別人に変わっていってしまう。
誰もが最後までやわらかな善人のままでいられる方法があればいいのに、
残念ながらそんな都合のいい話はまだこの世界にはないんですよね。


こうしたらいい、こうすべきだという主張は、この物語にはありません。
アリスの計画もとても責められない。自分でも同じようにしようと考えるかもしれない。

人間はたくさんの病気を克服し、命を長持ちさせられるようになりましたが、
いまだに不治の病も、心を折られる不幸は残っている。

いつまでも元気で、聡明で、優しいばかりの世界は
この世にはまだないし、これからも現れないのかなあ。


命って不思議です。一体誰に試されているのかな、と思わせる
辛いけど見ごたえのある映画でした。

2016-06-18(Sat)

「ザスーラ」

「ザスーラ」

2005年、ハリウッドの作品。
ちょっと前に「ジュマンジ」を見て楽しかったのでこちらも。
すごろくゲームをプレイしていると、
コマについた時になにが起きたか説明するイベントカードが出てくるんだけど
本当にその通りになっちゃう超常ボードゲームをプレイした兄弟の話。

なにせこのボードゲームの舞台が宇宙なんだよね。
だから、コールドスリープをさせられたり、
トカゲ星人がせめてきたりともう大変!

ジュマンジはジャングルが舞台だったうえ、
街を巻き込んでの大騒動になるという展開でした。
最後は全部もとにもどって大団円、だったけど、
今回はどんなふうに〆るかな~とワクワク。


兄弟は母が出ていっておりまして、お父さんと暮らしてます。
気ままな姉さんもいるけど、兄弟よりもちょっと大人で対応はクール。
お父さんはちょっと頼りない弟をかわいがっていて、
兄ちゃんはそれがあんまり気に入らない……という関係性。

兄と弟は時々けんかをしたりしながらも、
ザスーラという名のゲームを進めていきます。
途中で壊れかけたロボットが暴れたり、
肉を求めて襲ってくるトカゲ型星人に襲われたり、
宇宙空間でさまよっていたお兄さんを仲間に加えたりしながら、
途中で強い絆を手に入れ、協力しながら「あがり」を目指します。

いや、結構いい話だよね、これね。
お兄さんの正体もなかなかいい感じ。
こんなとんでもないゲームならば、
分岐の別れた先の未来が混在していても気にならないというか。

宇宙っていってもエセ宇宙だから、
外に出たって息はできるし、勢いよく飛び出して行っても戻ってこられるという。

子供が見たら大興奮なんじゃないかな。
結構いい話だしね。

お父さんを演じているのがティム・ロビンスで、
あいかわらずデカいなあwなんて思いました。