忍者ブログ

2017-11-16(Thu)

映画見た記録

南米編


「トゥー・ラビッツ」

2011年ブラジルの映画。
須田剛一好きとかに向いている作品。
主人公はクズ系のニート、ポルノ、ゲーム、ポルノ、ゲームの暮らしをしている。
そんな彼が仕掛けた、二兎を得る大作戦とは……!みたいな話。
話自体は結構単純なんだけど、複雑な構成にしてある。
ビビッドでポップな演出がちょいちょい入るので、好きな人はぐっとくるはず。
街のチンピラのヘッドと、悪徳弁護士、そして過去の贖罪が入り乱れて
最後は「マジか」って終わり方をするんだけど、
鮮やかに見えるんだけど、本人たちの意思は…… みたいな気分になるかも。

あと、ジュリアは本当に検事なのかがめっちゃ気になるし、
ブラジルの裁判制度は怖いなって思った。


「エル・クラン」

2015年アルゼンチンの映画。
実話ってことで愕然とする。

主人公アレハンドロのおやじの仕事は誘拐犯。
息子の知り合いだろうがさらうし、都合が悪くなるとすぐに殺す。
そのくせ身代金はしっかり頂くという悪徳ぶり。
暴君である父親に逆らえず、アレハンドロは自分の手を悪に染めるんだけど、
恋人ができ、結婚したいし、弟や妹は自分の家の異様さに気が付いて逃げ出したりする。
時代が大きく変わる中、アレハンドロも変わろうとするんだけど、
父アルキメデスはまだ、誘拐で金を稼ごうとして…… という話。怖い。

最後は一家がどうなったのかわかるんですが、
なんというか、そこでまた愕然とします。なんだそりゃ…って。
なんにしてもバイタリティのある人間は強いんだなあって、
それがいい方向に向けばいいんだけどね。
アレハンドロがかわいそうでなりませんでした。


PR

2017-10-10(Tue)

「ストリート・オーケストラ」

ストリート・オーケストラ

2015年ブラジルの映画。
実話がもとになっている作品。

かつては神童と称えられた一人のバイオリニストが、
楽団のオーディションに落ち、失意の中、しかたなく就いたNGOの仕事。
スラム街にある学校で、子供たちに教えることになったんだけど、
彼らの日常は、せわしなく、暴力と貧困に圧迫されていて……。

みたいな感じ。
「天使にラブソングを……」の2作目みたいな?
って思っていたんですけどね、途中までは。
だけどやっぱり、同じように貧しい場所で暮らすガラの悪い子供ったって、
アメリカとブラジルじゃあ違うんですよ!って話でした。


大人たちにこき使われ、実入りのいい仕事をしたいなら犯罪に手を染めるしかない、
バイクは盗難車、女の子は、望んだものかそうではないかわからないけど妊娠中。
ちょっとしたことで諍いを起こし、希望も安心も、静寂もない暮らしの中にいる子供たちに
本当の音楽を教えるのは大変なことなんです。
だってお金にならないからね。
大人が「豊かな心をはぐくむために音楽をやらせよう」なんて考える世界じゃないんですよ。

才能豊かなサムエルの演奏と熱意に心を動かされ、
主人公ラエルチは一生懸命指導をします。
それでやっと少しずつこどもたちも、音楽を楽しむようになるのに……。

もうねえ。
悲しいったらないんです。

誰もが健康で、清潔な家があって、ご飯が食べられて、毎日学校へ行って、友達がいて。
そりゃ日本のこどもたちにも、悩み深いことはいろいろあるとは思いますが、
それって、安全・安心、守られている立場が当たり前だから、なんですよね。


その後に彼らにあるのは、ただ音楽だけ。
それだけでいいと、彼らは思ったんだと思います。
暴力や恫喝、貧困、争い、不信は彼らにとって当たり前でね。
それに文句を言うのではなく、音楽を愛する者として毅然として立つという。

あまり多くを語る作品ではないんですけども、
最後じゃあじゃあ涙が出ちゃったのは、
彼らの覚悟のようなものを感じ取ったからだと思います。

当たり前の平穏に感謝しようと思える映画でした。見て良かった。




2016-03-30(Wed)

「BIUTIFUL」

「BIUTIFUL」

2012年、メキシコの作品。
舞台はスペイン、主演はハビエル・バルデムで
監督はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。
「バードマン あるいは」の関連作として
WOWOWでやっていたのでみてみることに。

映画の筋書きそのものよりも、
その背景にある事情がものすごく多くて複雑な作品でした。

ハビエル・バルデムはうまいね!
ノー・カントリーの時はこんな人類が存在していいのか
と思うほどヤバかったのに。


映画の舞台になっているのはスペインのバルセロナなんですが
その中でも貧しい人々、不法移民なんかが暮らしている
スラムのような地域での話でした。

主人公ウスバルの見ている、夢のような景色から物語はスタート。
ウスバルと話している男の正体は、途中でわかります。

ウスバルは二人のこどもを育てているシングルファーザーなんですが
どうも最近体調がよろしくない。
それで病院に行ってみたら、前立腺のガンに侵されていて、
しかももうあっちこっちに転移していて
化学療法をしながらだったらあと二か月、と余命を宣告されてしまうんです。

まだ幼い二人のこどもをどうするのか、ウスバルは苦悩します。
こどもたちの母親であるマランブラは、
双極性障害(いわゆる躁うつ病)を患っていて
子供に愛情はあるんだけど育てるのは難しい状態。

ウスバルの仕事は、いわゆる裏社会絡みで、
不法移民に仕事をあげたり守ったりしつつ、
そのアガリで暮らしているような状態なんですよね。
彼の生い立ちはあまり豊かなものではなくて、
父親の顔も知らず、母親も幼いころに失っていて、
兄はいるけどやっぱりあやしげなクラブでヤクを売りさばいていたり、
ほめられたもんじゃありません。

とはいえ、ウスバルは情に厚い男で、
移民から搾取はしているけれど、
いろいろ気にかけたり、仲よくしたりもしているんです。

移民に対する警察の取り締まりが厳しくなり、
友人である警官におめこぼしを頼んだけどダメだったり、
寒い地下室で雑魚寝している中国人たちのためにストーブを買うけど
粗悪品だったせいで全員ガス中毒で死んでしまったり、
その始末がうまくいかなかったり
子供を託したくてマランブラとよりを戻そうとしたのに
病状が悪化して結局病院に戻らなきゃならなかったり。

死にたくないと望んでいるのに、ウスバルはどんどん弱っていくわけです。
頑張っているのに裏目裏目に出てしまって、
愛する子供たちを守る手立てがどうしても見つからない。

自分の、社会の片隅の暗いところで生きてきたから
周囲も、社会の片隅の暗いところで生きてきた人間ばっかりなんだよね。
だからうまくいかなくて、
だけどどうにかちゃんとしたくて、
自分のせいで死んだひとびとに申し訳なくて。


こういった状況に陥った話なんだけど、
ウスバルにはある力があるんです。
それは、死者の声を聴くというもの。
死んだ人間が見えるし、彼らの声を聴いて伝える仕事もしている。

この映画にこの設定があるのはすごく不思議なことに思える。
なぜなら、そんなにしょっちゅう生かされていないから。
時々仕事をして、時々死者を見るくらいなんです。

だけど、この力があったからこそ、
ウスバルは道を踏み外さなかったんだろうなとも思うんだよね。
彼らは死者の声を聴いて、たくさんの後悔や感謝、恨み言を聞いただろうから。
幼い子供の告白や、愛する妻への伝言なんかをね。
それに、死者がずっとそばにいる暮らしをしていたからこそ、
自身の死というものに対する思いが人とは違うというか。


こっから下はネタバレ全開になっちゃったから、
見たい人は読まないほうがいい。



で、ウルバルの人生は最後の最後で本当にうまくいかないわけです。
仲よくしていたセネガルからの移民エクウェメを守れず
彼は送還されてしまうんですが、
その妻イヘはスペインに残っていて、
ウスバルはせめてもの償いに、自分の家に招くわけです。

イヘと、彼女の赤ちゃんはウスバルにとって最後の希望というか
チャンスだったのかなって。
ウスバルの仕事は決してほめられたもんじゃないんだけど、
やさしさとか思いやりがちゃんとあって、
ただの労働力としか思っていないような非道な奴じゃない。

なんとか助けてあげたいとか、力になりたいとか。
だから、自分の力になってほしいとも願うんだよね。

なに書いてるかわかんなくなってきたけど、
とにかくウスバルを取り巻く世界の脆さに
見ていて涙が止まらなくって。

明るくて、清潔で、豊かな暮らしとは無縁なんだよね。
社会は彼らを守ってくれない。どんなに苦しくてもダメ。

だから自分たちでなんとかしなきゃいけないのに、
みんな苦しいから。だから、絶対的な信頼が存在しないの。


最後の最後、子供たちを頼むとイヘは大金を渡されます。
家賃は先払いしておくから、自分の子供たちもなんとか頼むと。
だけど彼女は愛する夫のもとに帰りたい。
お金がたまればセネガルに帰るとはっきり言っています。

なぜスペインに残っているかというと、
子供はスペイン国籍を持っているから。
貧しい祖国では仕事もないし、満足な教育も受けられない。
エクウェメは、息子に明るい未来を用意してあげたいんです。
だけどイヘは、異国の地に自分たちの居場所がないと感じている。

この辺の、貧しさに関する問題も深刻に描かれていて
ずーんと重たいんだよね。
エクウェメの願いも、イヘの望みもよくわかる。
彼らの思いを、ウスバルもよくわかっていたと思うんだけど、
それでもほかに頼れる人がいなくて、
お金を託した……。

彼女は荷物をまとめて駅に向かう。
裏切られるのかと思ったら、最後には戻ってきてくれて。


それで、ウスバルは目を閉じるんです。
永遠の安泰じゃないんだけど。
それでも安心して、目を閉じたんじゃないかな。
自分のしてきたことにようやく意味があったと感じて
世の中捨てたもんじゃないと思いながら
静かに目を閉じ、亡き父と森の中で話すんです。



世界は公平じゃないんですよ。
日本では最近貧困って言葉が流行ってるけど
国に守ってもらえるいいところだと思うんすよね。
本当の貧しさや不平等さっていうものを見て、
人のために生き、愛情を注ぐ尊さについて
よく考えたらいいんじゃないかなって。

そんな風に思いました。はい。

2014-08-12(Tue)

「フアンオブザデッド」

ゾンビ革命 フアンオブザデッド

公式サイトを見ると、
ラテンのノリでゾンビやっつけちゃうぞ!
みたいな軽いキャッチコピーがついていて、
確かにアホみたいなノリはあるんだけど、
実は結構重たい出来のゾンビ映画。

キューバという国の特殊さがビシビシ伝わって来る感じ。

ゾンビについて「思想の問題」とアナウンスしたり、
なによりも主人公たちの冷静さが物語っている。

警察に頼ろうとか、国の方針を見極めようとか
そういう考えが皆無なのは、頼れないから。
警察は来たけど、すごくアレな展開になる。

もちろん、悪ふざけしすぎなシーンは多々あって、
最初のエロイ人妻の部屋を覗くところとか、
アメリカから来た牧師をうっかり、とか、
ラサロと朝日を見るシーンとかね。
宿屋の女主人も可哀想だった。
意味もなく人が死んで、とくに悼まない。

日本とは感覚が違う世界なのだとわかる。

アクションはちょっと緩めで、
自主制作映画かとつっこみたくなるシーンもあるけれど、
そのばかばかしさがあって、この映画は成り立っているように思った。

ラストシーンはカッコよくて、
その後のイラストで描かれるエンドロールの部分はとても良かった。
舟で去ったはずの3人が現れたのは、フアンの心の中のことなんだろうな。

2014-06-05(Thu)

「ミラージュ」

衝動的に前のブログを消してしまったものの、
やっぱり日記的なものがあると色々いいかなと思い直して
イチから作りなおしてみた。
前のブログは全部データとっておいたけど、
インポートするにはサイズが大きすぎてここでは無理なので諦め。

昨日見た映画 0604

ミラージュ

理由;オススメされたので

先月みた「愛と復讐のマンドリル」と同じチリ映画。
マルコ・サロールカッコイイ。
あの哀愁漂う様子が良い。
体を鍛えた一般市民が発作的に人助け→覆面ヒーローになる話。

キック・アス」とベースは同じで、
先月観た時に本当に素晴らしくて衝撃を受けて
「キック・アス」は思わずDVD買っちゃったんだけど、
どっちが好きかって言ったら断然こっち。ミラージュの圧勝。
人に薦めるのは多分キック・アスの方だけど。

主人公超強いのに、ところどころ間抜けかつリアルなのも良い。
憧れの女性に裏切られた哀しみだとか、
弟への思いだとか、
心を病んだ弟の描いた絵の使い方だとか、
ビジュアル的な演出面もとても良かった。
強いのに決めポーズはカッコ悪い。
コスチュームも、カッコ悪い。
なにかっていうとイチイチ手作りする主人公がいとおしい。

そしてなにより映像の色合いが良い。
センス良すぎて倒れそうだった。

最後は悲しいけれど、これはこれで良し。
パッケージがとてもアレだけど、買いです。