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2016-05-02(Mon)

「ショート・ターム」

「ショート・ターム」

いい映画だった……。
Amazonへリンク貼っておきますね。

公式サイトはこちら

2013年アメリカの作品。短いけどぐっとくるいい映画。
主演のブリー・ラーソン、名前をどこでみたんだっけと思ったら
一番最近のアカデミー賞取った人でした。納得納得。

原題は「Short Term 12」で、これは主人公たちの働く施設の名前。
問題を抱えて家庭にいられない18歳未満の子供たちを預かる
短期入所施設で、主人公はそこのケアマネージャーであるグレイス。
グレイスと、同僚のメイソン、新入りのネイトが話しているところからスタート。

メイソンは自身の失敗について話して、ネイトを安心させている。
ところが突然、建物から男の子が奇声をあげながら飛び出してきて、
3人はその子を捕まえ、落ち着かせ、部屋へと戻していく。
これで、この施設がどんな場所か理解ができる。

グレイスはどうやら妊娠初期の模様で。
病院で確定診断を受けてすぐに、中絶手術の予約を入れてしまう。

彼女は同僚のメイソンと恋仲で同棲中であり
なかなか仕事のできる熱心なケアマネージャーであり、
施設には問題を抱えている精神的に不安定な子が大勢いるのが
ゆっくりとわかっていく。

18歳になるため、施設を出なければならないマーカス。
所長のつてで新しく入ってくる、感じの悪い女の子のジェイデン。
子供たちはそれぞれに傷と問題を抱えて、
安心できる施設で暮らしてはいるものの、
それは愛に包まれた家庭とはまったく別なもので。

グレイスたちは頑張っているけれど、彼らの心を完全には満たせないのです。
それをわかった上で、それでもきっちり支えていこうと頑張っていく。
そういう話なんですが、とにかく、過不足ない描写と
この難しいテーマへの答えの示し方が素晴らしかったなと思います。


施設のスタッフも、同じ問題に向かい合っていながら様々で、
長年やってきたんだから俺に間違いはないんだという所長、
意識高い系学生で、おそらくは恵まれた環境で育った新入りのネイト、
悲しい過去を持っているものの、養父母のおかげで愛を知ったメイソン、
そして、施設に身を寄せる子供たちに最も近い魂を持ったグレイス。

自分の経験から導き出せる想像や共感には限りがあって、
つらい思いをし、今でも心の奥底に悲しみを封じ込めているグレイスからすると
安易な決断を下す所長も、子供の心を理解しようとしないカウンセラーも
いらだちの対象になってしまうんだよね。

グレイスはなかなか自分の心のうちのすべてを外に出せません。
恋人からとうとうプロポーズされても、
妊娠については打ち明けられず、結婚する決意も出来ない。
自分を傷つけた父親がまだ生きていて、刑務所にいるけど、
だけど出てくるかもしれなくて、出てきたらまた傷つくかもしれなくて……。

グレイスは自身の苦しみをそっと打ち明け、
自分とよく似た少女、ジェイデンに寄り添おうとします。
だけどジェイデンもまた、他人を安易に信じられない。
自分を傷つける存在について話せず、呪縛から抜け出せずに苦しむのです。


世の中のすべての大人が、メイソンの養父母のように
子供を優しく包み込める存在であればいいのに、と思ってやみません。

子供がいらないのなら、いっそ手放してもらいたい。
子供を積極的に育てる気はなくて、
だけど使い道があるから、手放す気はない。
そんな悪い、暗い思いを抱えた親と、その親から生まれ育てられた子供。
やさしさのない絆が生み出す悲しみをよく描いた映画でした。

グレイスはもがき苦しみ、かなり思い切った行動に出ようとします。
だけど一線を踏み越えず、やさしさを注いだジェイデンに思いが伝わって
最後はやっと、二人で一歩を踏み出せるようになるのです。

説教じみた話はなくて、
世の中捨てたもんじゃないから、
だからなんとか、自分の力で歩いていこう。
そんな思いを感じる映画でした。
途中、泣いちゃったよ。

結局心の豊かさが大事って話だよね。
この映画のことは、忘れないでいたいと思いました。はい。

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2016-04-29(Fri)

容量不足

使っているスマートフォンが、
やっぱりキャンペーンで配っていたようなものなせいか
容量がとにかく少ない。

ずっと遊び続けているアプリがすごくデータを食っていて、
アップデートの度に足りない足りないといわれ続けていた。

毎回あんまり使ってないアプリを消してごまかしてきたんだけど
一番最新のアップデートではもうどうしようもなくて
ツイッターを消してしまったっていう。

このままではどうしようもないぞということで、
そのアプリはキンドルに移すことに。
Kindle Fire、4980円だったのにいい仕事する!
プライム会員はなかなかいいプログラムだと思います。
毎月一冊、無料で本がダウンロードできるしね。
そこまで解像度が高すぎず、
選べるアプリがAndroidほど多くないところもいい。
無駄な時間を使わずに済むので。


ということやら体の不調やら、新年度の忙しさの合間に
感想を書いていないものの映画はちょいちょい見てて
記録のためにここに書いておく。

見たのは
「マジック・イン・ムーンライト」
コリン・ファースがかっこよかった。
「さらば冬のかもめ」
ジャック・ニコルソンがいい。こういう大人にいてもらえると幸せかも。
「レベル15」
全体的にしょっぱい。学生が作ったみたいなわきの甘さ。
「縫い裁つ人」
THE・邦画って感じの静かな作品。ムードはいい。
「メイズ・ランナー」
思ってたのと違ってた。続編前提。世界は非情である。
「しあわせはどこにある」
サイモン・ペッグ主演。ジャン・レノも出る。
割とディープな自分探しの世界旅行。最後ほっこり。
「俺たちに明日はない」
撃ちすぎ。
「靴職人と魔法のミシン」
アダム・サンドラーが枯れてた。
靴を履くとその人になってしまうのは面白いけど、
ファンタジックな物語に対して現実が結構ハード。
「Vフォー・ヴェンデッタ」
仮面が不気味であった。

あと、「ステップ・アップ5」
そういうタイトルかと思ったらシリーズの5作目だったw
ダンスバトルもので、ダンスの見ごたえがあって良かったよ。

時間をたっぷり使って、じっくり見たわけではなくて
割とさらーっと流してしまったような感覚なので一言メモだけ。

ぐっとつかまれて、じいっと見ちゃう作品はあんまりないのかも。
流したものはあんまり書かないんだよね。
だけど見た記録のためにブログ書いてるはずなので、一応。

2016-04-28(Thu)

「ゾンビーバー」など

4月になって忙しかった上、ちょいちょい体調不良が重なり
それがようやく落ち着いたところでノートPCのキーボードが壊れるっていう。

特定のキーだけ入らなくなるってイヤなもんですね!
それも、メールアドレス、ID、パスワードなんかに使っている
決定的な一文字だったためにイライラがすさまじかった。
もともと家族が買い替えて余ったPCで、高機能すぎたので
もういいやと自分の分も買い替えることに。
前のにもどるにはちょっとオンボロすぎるし。
では次はどうしようかと思って、
一体型デスクトップが良いかなあなんて見てみたら
どれもこれもディスプレイのサイズがめちゃめちゃデカい!
タブレットだと小さすぎ、デスクだと大きすぎ。
じゃあやっぱり同じようなノートがいいかなあと思ったら
面白いデザインのものが少なくて、どれもこれも真っ黒ばっか。

あとは、すぐに故障が出ないメーカーがいいなあと悩んで
だけど結局初めてのASUSにしたという謎の結論。
かわいいんだよね、ミントグリーンのノート。
今日届いて、まずはお試しにブログを書いてみるしだい。
だけどキーボードの配置が前のとやっぱりちょいと違うので
打ちミスがさっきからちょいちょいと……。
慣れていかなきゃですな。データも移さないと、続きが書けない。



というわけで、本日の映画は「ゾンビーバー」。
なにそのタイトルと思うところだけど、そのまんま。
ゾンビになったビーバーに若い男女が襲われる話。
これでもかっていうくらいベタで、ちゃんとおっぱいも出てきて、
アホでエロい若い男女が襲われますが……。


いや、なんかね。
この時代にここまでクオリティが低いっていうのは
もしかしたら狙ってのことなのかな? みたいな感じでした。
笑いが漏れるほどのひどい出来のビーバー。
ぬいぐるみを人が手で動かしている感がすごい。
水の中で若者が襲われたとき、血がにじんでくるんだけど
それが明らかにCGの合成すぎて噴き出してしまった。

最初は女子3人の旅が、男子3人が加わって
男女のゴタゴタもあったのでひょっとして思いがけない展開が!?
って思ったらおもわせぶりなだけで最後は盛大な肩透かし!

ただ、一番にやられるであろうビッチキャラの女子が
意外に最後まで残るし、もめるし。
その辺は良かった。
あまりにもひどいビジュアルなんだけど、
ひどすぎるゆえに逆に愛おしくなるこズルい出来。
B級でもなくC級でもなく、E級くらいなのかな。
エンディングの曲もいい意味で酷い。

ただ、2回は見られないし、人には勧められない。そんな雰囲気。

2016-04-14(Thu)

「サンドラの週末」「凶悪」

サンドラの週末

マリオン・コティヤール主演、2014年の
フランス・イタリア・ベルギー合同制作作品。

マリオン・コティヤールが好きなんだよね。
陰のある美人で、雰囲気がいいです。

この映画の物語はとてもシンプルで、凝ったものではありません。
主人公であるサンドラが病気を患い、回復して復職しようとしたら
突然解雇を申し入れられてしまう。
職場で、サンドラの復職をするか、従業員にボーナスを出すか
どっちかを選べっていう投票がなされたからなんですが、
サンドラの同僚が伝えにくるんです。
主任が圧力をかけて、ボーナスを選べって言われてるんだと。

サンドラが患っていたのはうつ病でして、
これでまた落ち込んで、薬をいっぱい飲んじゃうんですよね。
だけど夫がいて、子供がいて、サンドラが働かないと
家賃にも困ってしまうような経済状態だし、
大体一方的に解雇するなんておかしいよと、
夫は戦うよう促してきます。
まずは会社に行って社長に訴え、
じゃあもう一度投票しなおそうという話に。
過半数が復職に賛成してくれたら戻れるけど、
そのためにはみんな、ボーナスをあきらめてもらわねばならないっていう。
月曜に行われる投票のために、サンドラは週末、同僚たちの家を回ります。


それだけの話なんだけど、重たくってねえー。

働き方について欧米に学べ、なんてよく言いますけど
解雇なんかはあちらの方が厳しいよねって思っちゃう。

自分の復職とボーナス、みんなが求めているものがなにか、
サンドラはよくわかっていて、
自分同様みんなも苦しいはずだと思いながら、
ひとりひとりの家をまわっていきます。

彼女に味方してくれる人もいれば、
もうしわけないと言いつつ、イヤだという気持ちを隠そうともしない
そんな人もいます。

もちろん、ボーナスがいいよね……とサンドラは相手を責めません。
それでもどうか、復職させてほしい。
相手に良心、同情、仲間意識に訴えていくんですけど
これ実際にやれと言われたら辛いだろうなあって。

最後は割といい結果に終わるんですけど、
サンドラはスッキリした顔で去っていきます。
失っていた自信を取り戻し、やれるだけやったという気持ちが
彼女を強くしたんだろうなって。

人生という厳しい戦いの連続の中でどう生きていくべきか。
そんなテーマを感じる映画でした。見てよかった。


もう一本
「凶悪」

2013年、山田孝之主演の邦画。
実話を基にしたというこの世の地獄のような話です。
もとになった話はこちら(Amazonへリンク)

主演は山田孝之ですが、こちらは事件の取材をする記者の役。
この映画で輝いているのは、
「凶悪」というタイトルのもとになった二人の人物を演じている
ピエール瀧と、リリー・フランキーでしょうね。
山田くんもすごくいいですけども、
ピエール瀧とリリー・フランキーがもうヤバい。

話の始まりは、新潮45に届いた一通の手紙で、
死刑の判決を出されながらただいま上告中の服役囚、
ヤクザの組長であった須藤から送られてきたもの。

まだ警察に話していない3件の余罪について話すから、
自分と組んでいた「先生」を追い詰めるために
記事にしてもらえないか、と持ち掛けられます。

人を殺し、騙し、金を巻き上げるという同じ罪を犯したのに
自分だけが死刑を申し渡され、
先生はのうのうと外の世界で暮らしているのは許せない。
そういう理由で、事件について話すから
取材をして世間に公表してほしいと。

須藤は非常に良心にかけた男で、暴力的なんです。
気に入った人間にはすごく目をかけるんだけど
そうじゃない相手には容赦がない。すぐに殺しちゃう。

先生は悪知恵の働く男で、
身寄りがなかったり、疎んじられている老人に目をつけ
彼らの持っている財産を奪い取ろうと考えている。

先生の方は実行力がない。
須藤は考えが足りないけど、なんでもできる。
二人が出会うと恐ろしい化学反応が起きて、
邪魔な人間は全員ひどい目にあって葬り去られていくわけです。

二人が起こした事件の残虐さが存分に描かれていて、
もう目をそむけたくなるような内容です。
この二人の演技が非常に怖い。
ピエール瀧は迫力があり、リリー・フランキーは不気味な恐ろしさで
暴力を思う存分楽しんでる感がすごい。

何件もの事件について告白され、
記者である主人公藤井は取りつかれたように調査していきます。
家庭も顧みず、良心のかけらもない行いについて
裏付けをとり、真実に迫り、最後は記事にして発表するわけです。
それで「先生」も逮捕され、裁かれる……わけなんですが。


二人の行いの恐ろしさ、良心をもたない人間の無慈悲さなんかとともに
そういった暗い穴を覗き込んでいるうちに
うっかりひきつけられたり、取り込まれたりしそうになる
人の心の危うさについても描かれているのかなと思います。

世の中には本当に凶悪な事件、人間が存在しますが
些細なところから始まって、ブレーキがきかずに
どんどんエスカレートしていってしまうっていう
そういう心のありようがわかるというかね。

牧師に出会って改心したという言葉ですら白々しく感じられる
憎しみの深さと、その強烈さに圧倒され、心がゆがむ感じ。

世の中で一番不思議なのはやっぱり、人の心なんじゃないかなと
思いました。はい。月並みだけど。

2016-04-12(Tue)

「タンゴ・リブレ 君を想う」

「タンゴ・リブレ 君を想う」

2012年、どこの映画かなこれ。ベルギー?
舞台がどこなのかもちょっと把握しづらい、
不思議な恋愛というか、遅れてきた青春映画のような空気でした。

主人公は刑務所の看守をやっているJ.C.
とても静かでまじめそうな男なんですが
彼の唯一の趣味がタンゴ。
教室にいって静かに踊っていると、とある女性が入ってくるんです。
それが、アリス。
40手前くらいの色気のあるアリスにJ.C.は惹かれるんですが、
ある日、刑務所で仕事中に気がついちゃうんですよね。
夫がいて、自分の働く刑務所で服役しているって。

そこから少しずつ変わり始める、
硬いばっかりのJ.C.の人生……みたいな話。
恋愛は成就しません。だからこれは恋愛映画というよりは、
恋愛をとおして人生を変えた男の話、です。

看守としては、受刑者の近親者と交流をもったらダメなんですが
どうしてもアリスが気になって、J.C.はそっと
アリスと教室で踊ったり、来なくなってしまったアリスを気にかけ
電話をかけてみたりするんですが
どーにもこうにもこの男は純情すぎて、
見ていてキューンと切なくなってしまうっていう。

ところでヒロインのアリスなんですが、
15歳の息子がいて、受刑者の夫フェルナンがいるんですが
もう一人、受刑者のドミニクって男とも親しいのです。
親しいを通り越して、もう一人の夫みたいなの。
この辺が最初理解できなくて、あれ、お父さんなのかな?
っておもったら愛人っていうね……。
愛人というか、なんというか、ちょっと奔放なのかな……みたいな。

そんな複雑な男女が刑務所で入り乱れて、
夫には「看守とタンゴを踊るなんて」と嫉妬され、
ドミニクには「あと20年もこの中なんて耐えられねえ」と自殺未遂をはかり、
自分が実は父親ではなく、仲良しのオッサンの子供だったと知った息子が
ちょっとグレかかったりなどなど

アリスとその周辺の奔放さに振り回されて、
それでも彼女がいとおしくて、
J.C.は最後に、アリスとその息子の力になりたいあまり、
思いっきり大きな一線を踏み越える。いや、飛び越える、かな。

嫉妬しながらも、アルゼンチン人にタンゴを習うフェルナンとか、
ムショ内で教えてくれるアルゼンチン人たちの
タンゴの見事さとかね。

女を落とすための踊りだと言いながら、
まずは男同士で練習するんだとか、
刑務所の中なんで、基本的には殺伐としながら
時には踊り、時には笑い、人間は生きていくんだなあ……みたいな。

ちょっと不思議な映画なんですよね。
J.C.の変化は非常に大きいんだけど、
見た目的にはすごく控えめにしか変わってなくて。

最後のシーンのあと、どうなるのかなあ、彼らはって
心配になっちゃうような終わり方なんですけどね。

だけど、さわやかな風が吹いてきたような
すがすがしさの漂うラストで、
なんか、ちょっといいもの見たなって気分になれる映画でした。

囚人のタンゴが見事で、
ついでに囚人のタンゴって響きで「シカゴ」が見たくなりました。