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2017-10-07(Sat)

「ニュースの真相」

ニュースの真相

オーストラリア・アメリカの合同制作。
2015年の作品。

2004年当時、現職であったブッシュ大統領が
ベトナム戦争のころの軍歴に詐称があったのでは?
というニュースを流すも、
その証拠とされる文書が実は偽造されたもので、
真実を追求して発表すべし!と息巻いていたジャーナリストたちが
テレビ局を追われる話、です。簡単にいうと。

主演はケイト・ブランシェットでして、
実在する元CBSの報道部門プロデューサー
メアリー・メイプスという女性役を演じております。
うまいよね、やっぱ。見ちゃう。


このブッシュ元大統領の軍歴詐称について、
メアリー女史はこれよりも過去に追及していたこともあったんですが
いろいろあって断念。
ところが新しい証拠をつかめそう!ってことで
再び調査を開始するんです。
信頼のおける仲間と、番組のアンカーマン、ダン・ラザーと一緒に
インタビューをし、裏を取って、とうとう放送にこぎつける。

ところが、証拠として出された文書が「偽造ではないか」と
ひとりのブロガーに指摘されるやいなや、
他のテレビ局から猛攻撃が始まる。
その信ぴょう性について確認をしていくうちに、
重要な証人の言葉が実は虚偽であることもわかり、
大統領選にも結局は大きな影響を及ぼしてしまい……ともうさんざん。

最終的には、メアリー・メイプス自身に矛先が向いて、
彼女の人間性やらなにやら、盛大な「叩き」が始まって。

実際がどうだったか、というのはこの映画のテーマではないんです。
ブッシュ元大統領の軍歴については、
どうにもこうにも濃いグレーだったのかな、という感じ。

問題は、報道する側の、ネタを扱う際に必要な覚悟と、
誰かが失敗したときの「世界からの叩かれ方」について。

調査委員会と対峙したメアリー・メイプスの最後の言葉は
今の日本の世の中にも言えることでした。
誰かが失敗をしたときに、完膚なきまでに叩きのめそうとするのは
話が違うんじゃないの?っていう。


確たる証拠、がないとダメなのはわかるんですけども、
じゃあそれがない状態で、本当に悪事が目の前にあると知った時、
声をあげないでいるのかどうか……?
ジャーナリストに求められるものは大きくて、重いものです。
誤報、虚偽だった場合、名誉を傷つけられる人もいるわけですし。


そういうテーマについて、丁寧に描かれた映画だと思いました。面白かった。


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2017-10-01(Sun)

最近みた映画メモ

ちょいちょい映画を見ているものの、
雑事に追われて、力を入れた感想が書けないので
簡単にまとめてメモを残しておきます。
だいぶ前に見たものもついでにメモメモ。


「ドント・ブリーズ」

タイトル通り、息もできないホラー映画。
ホラーって言うか、サイコの領域ですよね、って感じ。
怖いは怖い、めちゃ怖いんですけども、
心の壊れた人間が怖い、って内容でした。
特に女性は閲覧注意。生理的に無理なシーンあり。


「神のゆらぎ」

エホバの証人の女性が主人公。
主人公は看護師なんですけれども、
職場に飛行機事故でひとり生き残った男性が担ぎ込まれてきます。
その飛行機事故にあってしまった面々と、
余命いくばくもないのに宗教上の理由で手術を受けない恋人、
彼らの辿った人生と対峙していくうちに
信仰心が揺れる……という話。
信仰って、人生の支えにする大きな柱になるものだとは思うのですが
信仰のために人生を棒にふるのは違うんじゃないかなって、
神様にすがらずに生きていると思っちゃうものですけど。
でも、信仰がないと心が保てない人もいるんだろうな。
宗教と人間の関係について、考えたいときにはオススメ。


「シャドウ・チェイサー」

ロシアのホラー映画。
夫に殺され、バラバラにされて遺棄された奥様の死体が
積み込まれていた車がなぜか中古市場に流出。
それを買った夫婦を襲う、殺された妻の怨念がー!!
って映画だったと思うのですが、
最終的にはあれって全部奥さんの妄想だったのでは……という気持ちに。
すっきり解決させてくれる解説はないんですけども、
(こどもが連れ去られたりしているし)
もしそうだったらすげえ怖いな、って印象。

「ミラーズ 呪怨鏡」

こちらもロシアのホラー映画。
鏡にいろいろすると、中からおっかなり怨霊が出てきちゃう、
みたいな遊びをしたばっかりに子供たちが襲われ、
父ちゃんが(離婚して別居している)助けようと奮闘する話。
ロシアのホラー、雰囲気がとても邦画っぽくて
なんともいえない既視感があります。


「ひつじ村の兄弟」

フランスの映画。
タイトルだけ聞くとほのぼのした話かな、と思うでしょう。
辺境の村でひつじを飼っている老いた兄弟がいるんですけど、
この二人は完全に決裂している仲でもう何十年もきていて、
だけどそこに、羊を全処分しなきゃならない感染症が発生するんです。
これからどうするんだよ、俺たち……と沈む村の人々。
ところが主人公は従順なふりをして羊を隠しているのです!
それがバレて、羊と逃亡。
助けてくれるのはずっと仲違いしていた兄で……。

衝撃のエンディング作品でした。
仲違いはしていても、お互いを誰よりも理解しあえるのはやっぱり、みたいな。
とても物悲しい話なので、見るなら秋がおすすめ。


「バーチャル・レボリューション」

アメリカ・フランス合作。
2047年、みんなバーチャル世界が心地いいからって
人類の7割がゲーム世界にいきっぱなしの世の中が舞台。
仮想世界がテロリストに狙われ死者が出ているってことで
バーチャル探偵が操作するぜ!という話。
あと30年でこんな世界になるかよっていうのが最初に思ったことで
うまく世界観に乗り切れず。
あと、背景とかはいいんだけど、それ以外がどうにもしょっぱい感じ。
もっと予算がいっぱいついたら楽しい映画になりそうかもしれない。



「SCOOP!」

福山雅治主演の邦画。
ゴシップ誌のカメラマンと、見習の女の子がスクープ連発していくも……
という話。リリー・フランキーのヤバさはやっぱりピカ一なんだけど
最後の展開は正直、これ以上の衝撃ってないからという理由だけでああなった感。
うわー、よりは、えー?の方が強かった。
全体的に悪くはないんだけど、ちょっときれいにまとめすぎたように思える。


「ダイ・ファイテイング」

とある武術集団が名を挙げたせいで、一人の妻がさらわれまして、
犯人からの要求で、シナリオ通りに動いてあれこれ悪事を働くように指示され……
って体をした、監督の自作自演……というなんともいえない話。
アクションはキレてていいんだけど、どうにもこじんまりとしていてもったいない。



こんな感じ。

2017-09-30(Sat)

「怒り」

怒り

2016年の邦画。
ヘヴィな映画でした。名作だけど、心がとても重たくなる内容。
原作小説は未読です。


ある夏の日に、閑静な住宅街で起きた夫婦殺害事件。
そのあまりにも異様な現場から物語はスタート。
捜査の結果、犯人は「山神一也」だとわかります。
未解決事件の犯人を捜す番組にとりあげられ、
もしかしたらこいつがその犯人なのでは……と
疑われる三人の男の周囲が描かれていきます。


千葉の漁港に現れた正体不明の男を、松山ケンイチが。
東京でとある男とゲイのカップルになったのは、綾野剛。
沖縄の小さな島に現れた自由人を、森山未來。
それぞれが正体のよくわからない、過去のわからない男でして、
周囲の人間は「彼を信じたい」と思いつつ、
でも疑念の目を向けてしまって、という構成。


知られたくない過去や事情を持っていると
こんなにも生きていきにくいのか……っていうのが主題かと思います。
最終的には犯人もわかるんですけども、
そんなことよりも、そうじゃなかった二人とその周囲、
犯人だった男の周囲にあふれた悲しみがもーやるせない。

指名手配写真が、この三人の俳優の顔をうまーくミックスしたのかなあって
誰にも見えるし、誰にも見えないといういい感じの出来でして、
なるほど言われてみればこの3人似てるかも、みたいな。

犯人の周囲でやるせない思いを抱える面々も、みなさんよかった。
渡辺謙と宮崎あおいの親娘も良かったし、
濃厚なシーン満載の妻夫木聡も良かった、
そして沖縄編の広瀬すずですよ。
全然わかんなかったw とても上手。迫真の演技で、でもその分みてて辛かった……!

世の中には理不尽なことがいっぱいで、
努力とか、意識改革なんかでは解決できないものも結構あるんですよね。
なんかね、そういうものに対してどんな心をもって生きていけばいいのかなって
そんなことを考えてしまう映画でした。

いやでも、ヘヴィです。本当。心が藍色に染まったような感じです。

2017-09-26(Tue)

「ベイビー・ドライバー」

ベイビー・ドライバー

8月から公開中の映画。
エドガー・ライト監督作品ということでどうしても見たかったけど
近いところだと全然やってない→公開終了……
かと思いきや、じわじわ上映するところが増えてきて
ちょうどいい距離のところでちょうど公開スタートしたので劇場へ。

いやーもう、思っていた以上にファンタスティックな映画でした。
エドガー・ライトといえば映像と音のシンクロと、
並ぶ者がいないであろう疾走感!って印象でしたけれども、
今まで見た中で一番だったんじゃないかなあ。
画と音に一切無駄がなくて、目を休めるシーンは一秒たりともなかった、
しかもそれが心地良くてたまらんかった、っていうのが感想です。

主人公は「ベイビー」と呼ばれている若者。
強盗なんかをするチームの一員で、そのテクニックからドライバーを任されている。
実行犯を回収して、警察の追跡を振り切る係なんですが、
うっとりするほどの激しいカーチェイスをこれでもかってほど魅せられまして。
でも、ただただ画がいいというわけではなく、
キャラクターたちも物語もいいんです。
公式サイトには「カーチェイス版ララランド」なんて書かれてますが
割とその通りじゃないかなと思います。

幼い頃の事故で、両親を失い、聴力に問題を抱えてしまったベイビー。
やまない耳鳴りを止めてくれるのは音楽で、
常にヘッドホンにサングラス、
その態度を「仲間」にはたびたび見とがめられますが、
彼は計画を誰よりも理解し、パトカーが何台来ようと
すさまじいドライビングテクニックで振りきり、
その場の判断で乗り捨て、乗り換えて仲間を無事に逃がすんです。

しかしこのベイビー、過去にうっかりやってしまった窃盗のせいで
犯罪を取り仕切る「ドク」という男に協力させられているだけ、という立場。
本当なら悪いことはしたくない。
失った両親のかわりに自分を育ててくれた養父の世話をしながら、
彼の教えを守ろう、正しく生きようと思いつつ暮らしているんです。


ようやくこの仕事で借りを返し終わる、という頃に、
彼は昔母親が働いていたダイナーで運命の出会いを果たします。
自分の名を呼ぶように歌う彼女の名前はデボラ。
彼女のために足を洗いたい、まっとうに生きたい……。
けれど過去の実績のせいで、ドクはベイビーを離さないわけでして。


という話。
犯罪の元締め役のドク、ケヴィン・スペイシーを久々に見たんですけど
やー、やっぱ上手!すごく味わい深いキャラクターでした。
悪いやつではあるんですけど、ロマンも笑いもわかる男というか。
ベイビーをとても気に入っていたんだろうなあって最後はしみじみ。

そして、運命の仕事をする仲間たち。
他人を簡単には信用しないバッツ、
二人でいちゃつきまくるバディとダーリンも、
誰もかれも良かったです。はい。本当に。

役者もいい、キャラクターもいい、画もいい、音もいい、最後の展開もいい。
安易にただただ幸せなだけの物語ではないところもいい。
ほれぼれするような、完成度の高い作品だったなあって
本当に見て良かった、いい映画でした。大満足。

パンフレットがなかったのだけが超残念!


2017-09-24(Sun)

「シング・ストリート」

シング・ストリート

2016年、アイルランド・イギリス・アメリカ制作の映画。
いやーもう、ひさびさに心に超ヒットしましたよ。
満足度は100%で間違いないです。


時代は1985年のダブリン。
不況に見舞われ、父は失業、母も仕事が減り、夫婦の仲は破綻寸前。
兄は大学中退、姉は勉強中、末っ子の主人公コナーは
生活費確保のために公立の高校へ転校を余儀なくされてしまう。

新しい学校は「シングストリート高校」。
一歩入るなり不穏な空気が渦巻くところで、
いじめっこにからまれ、校長から靴の色が校則違反だと言われ靴下で歩く羽目に。
最悪な日々の中、また暴れん坊にからまれて、
うんざりのコナーに声がかかる。
なんだか抜け目のなさそうなダーレンは「コンサルタント」で、
なんかあったら俺が話をつけてやるよ、なんて話に。
そしていつもいつも学校に着くと、向かいの家の前にミステリアスな美少女がいる。
自称モデルの少女ラフィーナの美しさにすっかりノックアウトされたコナーは
彼女の気を引くために「バンドのMV撮影をするから出てよ」と声をかける。
そこから本当にバンドを組んで、音楽を始めて、MVを作っていくんだけど……

というお話。
高校生という半端な身分で、生活がギュウギュウに苦しいという
人生で一番「苦しいことを苦しい」と感じてしまう世代が頑張る話でした。
コナーはダーレンの人脈をフル活用して、
楽器ならなんでもできるエイモンと出会う。
ダーレンをマネージャーに据えて、エイモンと一緒にバンドメンバーを探す。
学校で唯一の黒人だからとンギグをドラムに、
メンバー募集の張り紙のひどいいたずら書きに負けずに応募してきてくれた
ギャリーとラリーも加え、5人組のバンドが出来上がり。
最初はあこがれのデュラン・デュランのコピーをしていたものの、
録音したテープを聞いた音楽オタクの兄、ブレンダンは「コピーはやめろ」。
他人の曲で女が口説けるか、と叱咤され、コナーはエイモンと一緒に曲作りを始める。


この、兄貴がいいんです。ブレンダンは夢破れて、家でただただレコードを聴く日々。
弟の中に光を見たのか、逐一アドバイスをしてくれるという立ち位置でね。
そして見た目はもっさい冴えないエイモンが、かなりの万能キャラクター。
いつ何時に行こうと、一緒に曲つくりをしてくれるんです。
そしてとうとう一曲目ができて、本当にラフィーナを呼んでMVを作る。
素人の高校生がひどい格好で集合していたのに、
ラフィーナは少し呆れつつも、撮影につきあってくれます。
見た目をよくしなきゃとメンバーにもメイクをして、
彼らの作った音楽の良さに真摯に目を向けて、
コナーたちの作品に大きな花を添えてくれるのです。


その後も、次々に現れるその時代のスターたちの影響を受けながら、
音楽活動を充実させていくコナーたち。
学校にも逆らい、家庭はますます冷え切っていくけれど、
逆にそのせいなのかもしれないけれど、音楽の道をひたむきに走っていきます。

コナーも、ラフィーナも、そして兄貴のブレンダンも、
みんな自分の夢や人生について考え、悩んでいるんですけどね。
もちろん、うまくいかないこともある。
キラキラしたかけらはいくつも拾えるけれど、
それで人生がすべて輝き始めるはずもない。
長い長いこれからの道を、自分はどんな風に歩んでいけばいいのか、
その願いが叶うのか……
若いうちは未来が見えなさ過ぎて、苦しいものだよなあって。
そんな中でコナーは、悲しみの時があっても、それでも前に進んでいまして。


劇中のクライマックスともいえる、ラフィーナのいないMV撮影の日。
あのシーンはとても華やかなんだけど、
その分切なくてなんかしらないけどめっちゃめちゃ泣いてしまいました。
兄貴のギターがうなり、校長が飛び回る。
あんな世界が本当にあったらいいのに、現実ってそうじゃないんだよね……。


だけど最後には、コナーの放つ強い光にみんなが救われた、みたいな感じで
とても希望に満ちた、力強い終わり方をします。
女の子の気を引くために始めたバンド活動だけど、
音楽への思いも本物だったから、だからあんな風に強くなったのだなあって。

コナーの歌がとても素敵なんです。歌詞もとてもいい。
時代の輝きを取り入れながら、すごくいい音楽がずっと流れていて
とにかく見ていて気持ち良すぎる名作でした。