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2017-09-30(Sat)

「怒り」

怒り

2016年の邦画。
ヘヴィな映画でした。名作だけど、心がとても重たくなる内容。
原作小説は未読です。


ある夏の日に、閑静な住宅街で起きた夫婦殺害事件。
そのあまりにも異様な現場から物語はスタート。
捜査の結果、犯人は「山神一也」だとわかります。
未解決事件の犯人を捜す番組にとりあげられ、
もしかしたらこいつがその犯人なのでは……と
疑われる三人の男の周囲が描かれていきます。


千葉の漁港に現れた正体不明の男を、松山ケンイチが。
東京でとある男とゲイのカップルになったのは、綾野剛。
沖縄の小さな島に現れた自由人を、森山未來。
それぞれが正体のよくわからない、過去のわからない男でして、
周囲の人間は「彼を信じたい」と思いつつ、
でも疑念の目を向けてしまって、という構成。


知られたくない過去や事情を持っていると
こんなにも生きていきにくいのか……っていうのが主題かと思います。
最終的には犯人もわかるんですけども、
そんなことよりも、そうじゃなかった二人とその周囲、
犯人だった男の周囲にあふれた悲しみがもーやるせない。

指名手配写真が、この三人の俳優の顔をうまーくミックスしたのかなあって
誰にも見えるし、誰にも見えないといういい感じの出来でして、
なるほど言われてみればこの3人似てるかも、みたいな。

犯人の周囲でやるせない思いを抱える面々も、みなさんよかった。
渡辺謙と宮崎あおいの親娘も良かったし、
濃厚なシーン満載の妻夫木聡も良かった、
そして沖縄編の広瀬すずですよ。
全然わかんなかったw とても上手。迫真の演技で、でもその分みてて辛かった……!

世の中には理不尽なことがいっぱいで、
努力とか、意識改革なんかでは解決できないものも結構あるんですよね。
なんかね、そういうものに対してどんな心をもって生きていけばいいのかなって
そんなことを考えてしまう映画でした。

いやでも、ヘヴィです。本当。心が藍色に染まったような感じです。
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2017-09-26(Tue)

「ベイビー・ドライバー」

ベイビー・ドライバー

8月から公開中の映画。
エドガー・ライト監督作品ということでどうしても見たかったけど
近いところだと全然やってない→公開終了……
かと思いきや、じわじわ上映するところが増えてきて
ちょうどいい距離のところでちょうど公開スタートしたので劇場へ。

いやーもう、思っていた以上にファンタスティックな映画でした。
エドガー・ライトといえば映像と音のシンクロと、
並ぶ者がいないであろう疾走感!って印象でしたけれども、
今まで見た中で一番だったんじゃないかなあ。
画と音に一切無駄がなくて、目を休めるシーンは一秒たりともなかった、
しかもそれが心地良くてたまらんかった、っていうのが感想です。

主人公は「ベイビー」と呼ばれている若者。
強盗なんかをするチームの一員で、そのテクニックからドライバーを任されている。
実行犯を回収して、警察の追跡を振り切る係なんですが、
うっとりするほどの激しいカーチェイスをこれでもかってほど魅せられまして。
でも、ただただ画がいいというわけではなく、
キャラクターたちも物語もいいんです。
公式サイトには「カーチェイス版ララランド」なんて書かれてますが
割とその通りじゃないかなと思います。

幼い頃の事故で、両親を失い、聴力に問題を抱えてしまったベイビー。
やまない耳鳴りを止めてくれるのは音楽で、
常にヘッドホンにサングラス、
その態度を「仲間」にはたびたび見とがめられますが、
彼は計画を誰よりも理解し、パトカーが何台来ようと
すさまじいドライビングテクニックで振りきり、
その場の判断で乗り捨て、乗り換えて仲間を無事に逃がすんです。

しかしこのベイビー、過去にうっかりやってしまった窃盗のせいで
犯罪を取り仕切る「ドク」という男に協力させられているだけ、という立場。
本当なら悪いことはしたくない。
失った両親のかわりに自分を育ててくれた養父の世話をしながら、
彼の教えを守ろう、正しく生きようと思いつつ暮らしているんです。


ようやくこの仕事で借りを返し終わる、という頃に、
彼は昔母親が働いていたダイナーで運命の出会いを果たします。
自分の名を呼ぶように歌う彼女の名前はデボラ。
彼女のために足を洗いたい、まっとうに生きたい……。
けれど過去の実績のせいで、ドクはベイビーを離さないわけでして。


という話。
犯罪の元締め役のドク、ケヴィン・スペイシーを久々に見たんですけど
やー、やっぱ上手!すごく味わい深いキャラクターでした。
悪いやつではあるんですけど、ロマンも笑いもわかる男というか。
ベイビーをとても気に入っていたんだろうなあって最後はしみじみ。

そして、運命の仕事をする仲間たち。
他人を簡単には信用しないバッツ、
二人でいちゃつきまくるバディとダーリンも、
誰もかれも良かったです。はい。本当に。

役者もいい、キャラクターもいい、画もいい、音もいい、最後の展開もいい。
安易にただただ幸せなだけの物語ではないところもいい。
ほれぼれするような、完成度の高い作品だったなあって
本当に見て良かった、いい映画でした。大満足。

パンフレットがなかったのだけが超残念!


2017-09-24(Sun)

「シング・ストリート」

シング・ストリート

2016年、アイルランド・イギリス・アメリカ制作の映画。
いやーもう、ひさびさに心に超ヒットしましたよ。
満足度は100%で間違いないです。


時代は1985年のダブリン。
不況に見舞われ、父は失業、母も仕事が減り、夫婦の仲は破綻寸前。
兄は大学中退、姉は勉強中、末っ子の主人公コナーは
生活費確保のために公立の高校へ転校を余儀なくされてしまう。

新しい学校は「シングストリート高校」。
一歩入るなり不穏な空気が渦巻くところで、
いじめっこにからまれ、校長から靴の色が校則違反だと言われ靴下で歩く羽目に。
最悪な日々の中、また暴れん坊にからまれて、
うんざりのコナーに声がかかる。
なんだか抜け目のなさそうなダーレンは「コンサルタント」で、
なんかあったら俺が話をつけてやるよ、なんて話に。
そしていつもいつも学校に着くと、向かいの家の前にミステリアスな美少女がいる。
自称モデルの少女ラフィーナの美しさにすっかりノックアウトされたコナーは
彼女の気を引くために「バンドのMV撮影をするから出てよ」と声をかける。
そこから本当にバンドを組んで、音楽を始めて、MVを作っていくんだけど……

というお話。
高校生という半端な身分で、生活がギュウギュウに苦しいという
人生で一番「苦しいことを苦しい」と感じてしまう世代が頑張る話でした。
コナーはダーレンの人脈をフル活用して、
楽器ならなんでもできるエイモンと出会う。
ダーレンをマネージャーに据えて、エイモンと一緒にバンドメンバーを探す。
学校で唯一の黒人だからとンギグをドラムに、
メンバー募集の張り紙のひどいいたずら書きに負けずに応募してきてくれた
ギャリーとラリーも加え、5人組のバンドが出来上がり。
最初はあこがれのデュラン・デュランのコピーをしていたものの、
録音したテープを聞いた音楽オタクの兄、ブレンダンは「コピーはやめろ」。
他人の曲で女が口説けるか、と叱咤され、コナーはエイモンと一緒に曲作りを始める。


この、兄貴がいいんです。ブレンダンは夢破れて、家でただただレコードを聴く日々。
弟の中に光を見たのか、逐一アドバイスをしてくれるという立ち位置でね。
そして見た目はもっさい冴えないエイモンが、かなりの万能キャラクター。
いつ何時に行こうと、一緒に曲つくりをしてくれるんです。
そしてとうとう一曲目ができて、本当にラフィーナを呼んでMVを作る。
素人の高校生がひどい格好で集合していたのに、
ラフィーナは少し呆れつつも、撮影につきあってくれます。
見た目をよくしなきゃとメンバーにもメイクをして、
彼らの作った音楽の良さに真摯に目を向けて、
コナーたちの作品に大きな花を添えてくれるのです。


その後も、次々に現れるその時代のスターたちの影響を受けながら、
音楽活動を充実させていくコナーたち。
学校にも逆らい、家庭はますます冷え切っていくけれど、
逆にそのせいなのかもしれないけれど、音楽の道をひたむきに走っていきます。

コナーも、ラフィーナも、そして兄貴のブレンダンも、
みんな自分の夢や人生について考え、悩んでいるんですけどね。
もちろん、うまくいかないこともある。
キラキラしたかけらはいくつも拾えるけれど、
それで人生がすべて輝き始めるはずもない。
長い長いこれからの道を、自分はどんな風に歩んでいけばいいのか、
その願いが叶うのか……
若いうちは未来が見えなさ過ぎて、苦しいものだよなあって。
そんな中でコナーは、悲しみの時があっても、それでも前に進んでいまして。


劇中のクライマックスともいえる、ラフィーナのいないMV撮影の日。
あのシーンはとても華やかなんだけど、
その分切なくてなんかしらないけどめっちゃめちゃ泣いてしまいました。
兄貴のギターがうなり、校長が飛び回る。
あんな世界が本当にあったらいいのに、現実ってそうじゃないんだよね……。


だけど最後には、コナーの放つ強い光にみんなが救われた、みたいな感じで
とても希望に満ちた、力強い終わり方をします。
女の子の気を引くために始めたバンド活動だけど、
音楽への思いも本物だったから、だからあんな風に強くなったのだなあって。

コナーの歌がとても素敵なんです。歌詞もとてもいい。
時代の輝きを取り入れながら、すごくいい音楽がずっと流れていて
とにかく見ていて気持ち良すぎる名作でした。






2017-09-20(Wed)

「ゴシカ」「ヴィジット」

ちょっと前に任天堂公式チャンネルで動画を公開していた
「よゐこのマイクラでサバイバル生活」を楽しんでおりまして、
その結果ゲームセンターCXを見たくなる→契約する→
ちょっと前の放送を見る→有野課長がゼルダ楽しい発言連発
で、ああそうだな、ゼルダ楽しいよな……

2週目を途中でほったらかしていたんだけど、
なんとなく気が向いてマスターモードでスタート。
キツイだろうなあ、すぐにあきらめるだろうな……
って思っていたら、これがめちゃめちゃ楽しいっていう。
まずはじまりの台地で敵が倒せないので、
ステルス行動するしかない。
ゲーム性ががらっと変わっちゃってるわけです。

これが面白くて面白くて、ついつい遊んでいました。
やー、ゼルダって本当にいいゲームですね。

でもそれも落ち着いたので(金色のライネルに歯が立たない)
生活も元に戻りつつあり、久々に映画を見る暮らしに。

で、まずは「ゴシカ」。
2003年の映画、ハル・ベリーが主演。

女子刑務所の精神科病棟に勤めている主人公ミランダ。
なんだか様子のおかしい受刑者、クロエのことを気にかけつつ
激しい雨の夜車で帰宅しようとしたところ、
ずぶぬれで立っている金髪の少女をはねそうになってしまう。
どうしたの、大丈夫?私は医師よ……
なんて話しかけながら助けようとすると、そこで意識が途切れる。

目を覚ますと自分が働いていた病棟に収容されていた。
夫を殺した罪で逮捕されたけれど、そんな記憶はないわけで。

そこから次々と起こる不可解な事件。
はたしてミランダはすべての謎を解明できるのか…!?というお話。

正直、ミランダはめっちゃかわいそうなんですけど、
最終的にはなんだかんだで不問になってよかったね、みたいな感じ。
事情が事情だけに、そりゃ精神的におかしくなるよね、って判断されたのかな?



そして「ヴィジット」。
こちらは2015年の作品。
シックスセンスでおなじみのシャマラン監督作品。

シングルマザーに育てられている姉と弟が、
長い間音信不通になっていた(母が連絡をとらずにいた)祖父母から
一度会いに来てほしいといわれ、
家族の仲を取り持ちたいという願いを持ちつつ行ってみるという話。
姉はこの旅行を記録映画にしたいと思っており、弟と手分けして
2台のカメラで一部始終を撮影している。
初めて会う祖父母はいい人なんだけど、なんだかおかしなところもあり。
まあ、年寄りだしそんなもんかな?と思いつつ暮らしていくうちに
段々その「おかしなところ」が耐えられないレベルにグレードアップしていく。

これ、実際にこんな事件あったら超怖えよ!って話でした。
超常現象なんかは起きないんですけど、
その分、現実に起きるかもしんない、と思わされるわけでして。
ヤバかったですね。
同じ人間なのに本当に理解できない、っていうのは
普通に生きている、特に子供にとってはおそろしい出来事なんじゃないでしょうか。
お姉ちゃんはしなくてよかった経験ができたし、
弟に最後に起きた悲劇を思うとなんかもうね。

最終的に弟のビミョーなラップに救われること間違いない。
人間ってこうやって乗り越えていくのね、
みたいな気持ちでエンド。なかなか面白かったです。

2017-08-24(Thu)

「ゾンビランド」

2009年アメリカのゾンビ映画。
ホラーではなく、ほっこりドラマ寄りのコメディでした。

変異したウイルスが牛から人に感染して爆発的に広がり、
ゾンビだらけになってしまった世界。
ひきこもり気味の大学生「コロンバス」は自分でルールを決めて、
ゾンビからひたすらに身を守って過ごしていた。
街にゾンビがあふれて、さてどうするか。
あてもないし、故郷へ向かってみようか……と考え、
オハイオ州コロンバスへ向かうことに。
その旅の途中で、ゾンビ狩りの得意な男、タラハシーに出会う。
二人旅をしているうちに、ウイルスに侵された妹とその姉に出会い、
だけどその二人は詐欺師で、車と銃をとられてしまい、
だけどまた進んでいるうちに再会して、
なんだかんだで四人でロサンゼルス郊外にある
「パシフィック・ランド」という遊園地を目指すことに。
そこはゾンビのいない楽園なんだと姉妹は話す。

他人を信じない詐欺師姉妹と、
ちょっぴり怒りっぽいマッチョなゾンビハンター、
そしてゲームオタクでひきこもり気味の青年。
警戒しあいながらも、旅をしていくうちにちょっとずつ打ち解けてきて……

みたいなお話。
面白かったです。
ゾンビものなのに警戒、で、珍しく救いのある明るさに満ちているという
とても不思議な一本(もちろんゾンビはめっちゃ出る)。




四人が四人とも自分の名を名乗らず、
出身地などで呼び合うさまが世紀末らしくて良い。
詐欺師姉妹は実にかわいらしくて、
ゾンビハンターと化したウディ・ハレルソンもかわいい。
気が弱く争いを好まない主人公「コロンバス」が緩衝材になって
四人はなんとなくまとまっていく。

ゾンビまみれの世界に救いはやっぱりなくって、
ロサンゼルスに入った時の景色の悲しさは抜群。
希望をもって入り込んだ楽しい遊園地は、
電源をつけたらキラキラと輝きだすんだけど、
それでゾンビがワラワラと集まってきてしまうという恐ろしさ。

で、ネタバレになっちゃうんですけどね。
正直、ゾンビ映画なんで、だれか死んじゃうと思ったんです。
最後はかなり絶望的な展開になるので。

この映画の登場人物、とりあえず一人は死んじゃうんですけどね。
だけどまあ、そこなの?そういう理由なの?って感じでして、
いわゆる王道的な展開にはならなかった……ような
別な意味で王道なのかな。

ゾンビまみれになってしまった世界の話って、
最後の最後に「ちゃんと人類が保護されている場所」とかにたどり着かないと
正直デッドエンド一直線に思えて安心できないまま終わるじゃないですか。
なのに、これは結構、妙な安堵感に包まれたまま終わるんですよね。
それが不思議にさわやかに感じられるという
ゾンビ界ではなかなか珍しい作品なんじゃないでしょうか。

エマ・ストーンが出演していますが、
にこーってしてもらえないとあんまりエマ・ストーンってわからないという。
チャーミングなんですけどね。化粧のせいかなあ。

とりあえず、とても面白いゾンビ映画でした。よかった。